ふ‐ちょう ‥チャウ【符帳・符丁・符牒テフ・符徴】
〘名〙
※俳諧・西鶴大句数(1677)四「えり数や封帳を付て
麻衣 胸算用は夜の
寝覚も」 〔新唐書‐叛臣伝・李錡賛〕
② その仲間だけに通じることば。あいことば。
隠語。
※談義本・世間万病回春(1771)三「素人の耳へはひらぬはやはり商人の符帳(フテウ)にして」
※
洒落本・面美多勤身(1790‐91頃)「間夫の事をけんしといふふてうサ」
③ (━する)
金品を分配すること。利益を配分すること。
※
浄瑠璃・歌枕棣棠花合戦(1746)三「手んでに取り出す
小判の数、ふてふを分る其折から」
出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報
符帳
ふちょう
符丁、符牒とも書く。一般には仲間同士で用いる隠語や暗号をいうが、商業用語としては、店舗内もしくは市場内で商品の値段などを示す数字の隠語をいう。店舗内で使用するものを「お店(たな)符帳」といい、問屋仲間・同業者間が市場などで使用するものを「通(とお)り符帳」という。旧式の商業では正札(しょうふだ)(価格札)は用いず、掛け値をいうことが多かったから、符帳は不可欠であった。符帳の中心は口唱符帳または文字符帳であるが、鮮魚や青物の市場では手ぶり符帳が用いられ、後者は現在でも取引所などに残っている。口唱・文字符帳は正札による価格表示によって廃れた。
[森本三男]
出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例
符帳
ふちょう
商品につける値段の陰語で,符丁,符牒とも書く。旧来の商業では,実際よりもかなり高くつけた値段,つまり掛値を用いる場合が多かったが,商人たちは符帳を用いて値決めをし取引した。公開の市場で用いられるものとそうでないものがあり,また商業の種類によってもさまざまであった。さらにその態様からは,口唱符帳,文字符帳,手ぶり符帳に分れる。しかし,現在では青物市場や取引所などの限られた分野で用いられている程度で,商品価格の明確化,定価主義の浸透とともにほとんど姿を消した。
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報