筒井筒(読み)つついづつ

精選版 日本国語大辞典 「筒井筒」の意味・読み・例文・類語

つつい‐づつ つつゐ‥【筒井筒】

[1] 〘名〙
六百番歌合(1193頃)恋五・七番「筒井筒井筒にかけしたけよりも過ぎぬや通ふ心深さは〈顕昭〉」
② (「伊勢物語」の「つつゐつの井筒にかけし…」の歌が幼なじみの恋であるところから) 幼なじみ。また、幼い男女の遊びなかま。
謡曲・井筒(1435頃)「君ならずして、たれか上ぐべきと、互に詠みしゆゑなれや、筒井筒の女とも、聞こえしは、有常が娘の古き名なるべし」
山吹(1944)〈室生犀星〉二「そして孰(いづ)れともなく筒井筒(ツツヰヅツ)の友は話し出した」
序詞として「つついづつ」の「いつ」と同音を含む「いつ(何時)か」「いつ(何時)も」などにかかる。
※浄瑠璃・義経千本桜(1747)四「思ひ出るも涙にて袖はかはかぬつつ井筒(イヅツ)。いつか御身(おんみ)も、のびやかに春の柳生の糸長く」
[2] 井戸茶碗。名物。井戸茶碗の最高傑作といわれる。筒井順慶が所持していたので、この名がある。

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デジタル大辞泉 「筒井筒」の意味・読み・例文・類語

つつい‐づつ〔つつゐ‐〕【筒井筒】

筒井をかこむ、わく。
伊勢物語・二三の「筒井つの井筒にかけしまろがたけ過ぎにけらしないも見ざるまに」の歌から》幼ともだち。幼なじみ。
「―の昔しもふるけれど、振わけ髪のおさなだちより馴れて」〈一葉・花ごもり〉

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故事成語を知る辞典 「筒井筒」の解説

筒井筒

幼ともだち。特に、異性の幼なじみ。

[使用例] ひとつ違いの二人は、ふり分け髪の筒井筒といった仲で、ちいさな夫婦めおとよと、長屋じゅうの冗談の的だったのだが……[林不忘丹下左膳|1933]

[由来] 「伊勢物語―二三」の物語から。幼いころ、井戸端で一緒に遊んでいた男女が、大きくなってお互い意識し、結婚したいと思うようになりました。そこで、男は、「筒井つの 井筒にかけし まろがたけ 過ぎにけらしな いも見ざるまに(井戸の筒と高さを比べっこしていた私の背丈は、ずっと大きく立派になりましたよ。しばらくあなたと会っていない間に)」という歌を送ってその気持ちを告げ、思い通りに一緒になれたということです。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「筒井筒」の意味・わかりやすい解説

筒井筒
つついづつ

筒井の筒の意。筒井は円筒状にまっすぐに掘り下げた井戸をいい、筒はその井戸の枠をいい、「筒井つ」とまったく同様に使われる。『伊勢(いせ)物語』23段に、幼なじみの男女が「筒井筒(筒井つの)井筒にかけしまろ(私)がたけ過ぎにけらしな妹見ざるまに」「くらべこし振分髪も肩過ぎぬ君ならずしてたれかあぐべき」の歌を贈答しあう恋物語があるため、幼なじみや幼い男女の恋のたとえとしたりするほか、「いつ」と同音の「いつか」「いつも」にかかる序詞として用いる。

[宇田敏彦]

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