翻訳|roughage
濃厚飼料に比べて容積が大きく,粗繊維含量が高く,可消化養分の少ない飼料である。ただし,良質のマメ科牧草の乾燥粉末のように,養分含量からは濃厚飼料とみなせるものでも,原料が牧草のため,慣行的に粗飼料に分類されるなど区別は必ずしも明確でない。一般に粗飼料は粗繊維含量が乾物中18%をこえるものが多い。粗飼料には自給粗飼料と流通粗飼料があるが,前者がはるかに多く,後者は乾草として少量流通しているにすぎない。水分含量の少ない粗飼料は乾草,わら,殻類などであり,多いものは生草,青刈飼料作物,根菜,副産茎葉などと,そのサイレージで,多汁質飼料と呼ばれる。このうち生草は刈り取って家畜に給与することもあるし,放牧利用されることもある。粗飼料の栄養価値は,草種によって大きく異なるのみでなく,生育段階や刈取り後家畜に給与するまでの調製の過程で変動する。したがって同一牧草でもつねにその栄養価を調べて,適切に家畜に給与しなければならない。粗飼料は可消化エネルギーが濃厚飼料にくらべて少ないけれども,粗タンパク質,各種のビタミン類,ミネラルを豊富に含み,しかも泌乳や発育を促進する未知因子,配糖体,ホルモン様物質なども含有し,家畜の健康状態を良好に保つのに役だつ。そのため良質の粗飼料を草食動物に給与すれば発育,繁殖に十分な栄養素を供給できる。しかしとくに生産能力の高い肥育牛や搾乳牛の場合,粗飼料だけでは養分不足となるので,粗飼料と濃厚飼料を併用して給与することが多い。また粗飼料の中で成分の異なる数種を併用して給与することも好ましい。反芻(はんすう)家畜は消化器の構造と機能からみて一定量の粗飼料を採食していなければ代謝異常を起こし,生産性が著しく低下する。乳牛の場合,全体の飼料中30%以上の粗飼料が必要とされている。乾燥地や急傾斜地など耕地化できない土地でも粗飼料は生産できるので,畜産業は世界中広い地域で成立している。
→飼料
執筆者:宮崎 昭
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
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