現行「精神保健福祉法」の改正前の法律。「精神衛生法」(昭和25年法律第123号)は、第二次世界大戦終結後5年を経た1950年(昭和25)に、精神障害者を私宅監置する根拠となった「精神病者監護法」(明治33年法律38号)と「精神病院法」(大正8年法律第25号)を廃して制定されたものである。この法の目的は、精神障害者の医療および保護を行い、精神障害の発生予防に努めることによって国民の精神的健康の保持向上を図ることとされた。精神衛生法は、その後、1965年(昭和40)に大改正され精神障害者の医療と保護の充実が図られることとなった。
具体的には、
(1)精神障害者の定義の明確化
(2)地域精神医療の中核となるべき都道府県立精神病院(精神科病院)の設置
(3)地域精神衛生の向上を図るための精神衛生センター(現精神保健福祉センター)の設置
(4)地域の精神保健行政上の重要事項を調査審議するための地方精神保健審議会の設置
(5)患者の保護義務者となりうる者とその順位の明確化
(6)第三者的立場で入院患者の診察を行う精神衛生鑑定医(業務内容は変更されたが、現精神保健指定医)の指定
(7)都道府県知事の行政権限に基づく措置入院、保護義務者の同意に基づく同意入院(現医療保護入院)などの手続き
(8)都道府県知事による入院患者の実地審査
(9)医療と保護に欠くことのできない限度で許される患者の行動制限
(10)措置入院、通院医療における公費負担、などの条項から成り立っている。
1965年(昭和40)の改正以降、精神衛生法は大きな改正も行われなかったが、84年に一連の精神科病院の不祥事件が起こり、精神障害者の人権擁護が社会的な問題となり、87年に精神保健法となった。法制定に際して、施行5年後見直しが付則にうたわれたので、1993年(平成5)に見直し改正が行われ、さらに同年に改正された障害者基本法との絡みから、95年にも改正され、「精神保健及び精神障害者福祉に関する法律(精神保健福祉法)」となった。
[野村瞭・吉川武彦]
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
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… 従来,精神障害者の医療と保護に関しては,1900年の精神病者監護法および19年の精神病院法が存在したが,前者は障害者の治療保護に関する規定をほとんど含まず,いわゆる座敷牢制度を一定の要件の下に合法化するもので,後者も精神病院を治療の場というより保安施設としてとらえるものであった。そこで公衆衛生の向上増進を国の責務とする日本国憲法(25条2項)の制定を契機とし,戦後における欧米の最新の精神衛生に関する知識の導入,およびそれに伴う精神衛生行政の理念の転換をふまえ,1950年に上記2法を廃止し精神衛生法が制定され,入院中心の精神科医療体制が確立した。その後,施設内医療から社会復帰を中心とした地域医療への転換,さらに精神障害者の人権と福祉の観点からの法改正が主張され,また1984年の宇都宮病院事件(看護職員の暴行により入院患者が死亡)やその後の日本の精神科医療に対する国際的批判を契機として,88年から精神衛生法に代わり精神保健法が施行された。…
※「精神衛生法」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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