六訂版 家庭医学大全科 「糖尿病白内障」の解説
糖尿病白内障
とうにょうびょうはくないしょう
Cataract diabetic
(代謝異常で起こる病気)
どんな病気か
糖尿病白内障は糖尿病による眼の合併症のひとつで、眼のなかの凸レンズの役目をしている
原因は何か
糖尿病が原因で糖尿病白内障が発症するわけですが、高血糖そのものが原因で比較的若年者から急激に進行する
症状の現れ方
白内障の初期症状は“まぶしい”や“かすむ”などで、進行すると視力の低下を自覚するようになります。真性糖尿病白内障ではそれらの症状が急激に進行しますが、大多数を占める仮性糖尿病白内障では徐々にそれらの症状が現れてきます。視力の低下を自覚し日常生活に支障を来すようになれば、白内障手術が必要になってきます。
また糖尿病網膜症が合併している場合には、その管理(眼底検査、
検査と診断
糖尿病白内障の診断には、
治療の方法
糖尿病白内障の発症・進行には、血糖コントロールの良否、
現在の標準的な白内障の手術は、超音波水晶体乳化吸引術+眼内レンズ移植術です。通常は局所麻酔で行われます。手術は、①水晶体
しかし、血糖コントロールが不良であれば手術合併症の危険性が高くなり、やはり良好にコントロールした状態で手術にのぞむほうがよいと一般的に考えられています。
一方、急激なコントロールは網膜症の悪化などを来すことがあり、また糖尿病網膜症が進行している眼では、網膜レーザー光凝固治療や硝子体手術の必要性から血糖コントロールを待たずに早急に白内障手術が必要な場合があります。また、糖尿病網膜症の病期が進行しているほど手術合併症が高くなると考えられています。したがって手術のタイミングは、内科的な状態と眼科的な状態を十分に考慮したうえで判断されるべきです。
病気に気づいたらどうする
糖尿病白内障に対する有効な薬剤が開発されていない現在では、白内障の発症予防には、まず糖尿病初期からの血糖コントロールが大切です。また不幸にして白内障が発症、進行した段階では、手術結果に影響すると考えられている血糖コントロールや網膜症の程度を適切に考慮したうえで、より適切な時期に手術が行われることが大切です。
このためには内科と眼科をあわせて定期的な通院治療が不可欠です。したがって内科医と眼科医との連携、さらに患者さん自身の自己管理が重要です。
梯 彰弘
出典 法研「六訂版 家庭医学大全科」六訂版 家庭医学大全科について 情報