糸賀一雄(読み)イトガ カズオ

20世紀日本人名事典 「糸賀一雄」の解説

糸賀 一雄
イトガ カズオ

昭和期の児童福祉活動家 近江学園創立者。



生年
大正3(1914)年3月29日

没年
昭和43(1968)年9月18日

出生地
鳥取県鳥取市

別名
筆名=因幡 一碧

学歴〔年〕
京都帝国大学文学部哲学科〔昭和13年〕卒

主な受賞名〔年〕
朝日賞(昭41年度)

経歴
昭和13年滋賀県庁に入り、各課長を歴任後、21年大津市に知的障害児施設・近江学園設立。続いて信楽学園、あざみ寮、一麦寮、日向弘済学園、38年には重症心身障害児施設・びわこ学園を創設戦後の混乱期に戦災孤児浮浪児を見て、拱手傍観できず、この子らを世の光にと訴え続け、精神薄弱児福祉のパイオニアとして献身した。41年度朝日賞を受賞。著書に「福祉の思想」「この子等を世の光に」「精神薄弱児の職業教育」など。平成8年糸賀一雄記念財団が設立され、国内、アジア・太平洋地域で障害者福祉に携わる活動家を表彰する“糸賀一雄記念賞”が創設された。

出典 日外アソシエーツ「20世紀日本人名事典」(2004年刊)20世紀日本人名事典について 情報

改訂新版 世界大百科事典 「糸賀一雄」の意味・わかりやすい解説

糸賀一雄 (いとがかずお)
生没年:1914-68(大正3-昭和43)

発達保障〉の理念に基づく障害者福祉・教育の首唱者。第2次大戦後の日本の社会福祉・障害者教育の発展に先駆的役割を果たした。鳥取市に生まれ,松江高校時代にキリスト教入信。京都大学で宗教哲学専攻。1939年から滋賀県庁に勤務,行政家として活躍。46年,大津市に戦災孤児・浮浪児と精神遅滞児の収容施設近江学園を創設,園長となる。以後,54歳で急逝するまで,(1)教育・保護・生産・医療・研究等の諸機能をもつ総合的施設づくりによる発達の総合的追究,(2)園内教育の学校教育法による公教育としての位置づけ,(3)関連成人施設(信楽寮ほか)や重症心身障害児療育施設(びわこ学園)の創出による社会福祉施設体系の開拓,(4)地域の保健・医療機関と提携しての乳幼児健診活動の推進などに力を尽くす。全日本精神薄弱者育成会理事,中央児童福祉審議会委員等を歴任。その〈この子らを世の光に〉の主張には,糸賀の深い人生観と福祉の思想が凝縮している。《糸賀一雄著作集》全3巻(1982-83)がある。
執筆者:

出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

日本大百科全書(ニッポニカ) 「糸賀一雄」の意味・わかりやすい解説

糸賀一雄
いとがかずお
(1914―1968)

知的障害児教育の実践家。鳥取市に生まれる。京都帝国大学文学部哲学科卒業。滋賀県庁に勤める。1946年(昭和21)県立近江(おうみ)学園を設立、1963年にはびわ湖学園の創設に努力、知的障害児の福祉と教育に指導的、開拓者的役割を果たした。きわめてユニークな心身障害児への養護、教育観をもち、「この子らを世の光に」という訴えは、障害児を中心に据える教育観として、またその宗教思想と福祉についての深い造詣(ぞうけい)とあわせて、強い影響力をもった。『福祉の思想』『この子らを世の光に』などの著作があり、著作集も刊行されている。1963年朝日賞受賞。

[小倉襄二]

『『福祉の思想』(1968・NHK出版)』『『糸賀一雄著作集』(1982、1983・NHK出版)』『『この子らを世の光に』(1990・柏樹社/復刊・2003・NHK出版)』

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

百科事典マイペディア 「糸賀一雄」の意味・わかりやすい解説

糸賀一雄【いとがかずお】

第2次世界大戦後の障害者教育,福祉の先駆者。鳥取県出身。クリスチャンで,京都大学文学部哲学科卒。戦前は滋賀県庁勤務。1946年大津市に戦災孤児・浮浪児および精神遅滞児を収容する近江学園,1963年重症心身障害児療育施設のびわこ学園を創設。医療,教育,生産,研究などの機能を備えた総合的施設による発達の追求など,実践に基礎を置いた研究と思想により,障害者の教育と福祉に尽力した。全日本精神薄弱者育成会理事,中央児童福祉審議会委員など。著書は《この子らを世の光に》を含む《糸賀一雄著作集》3巻。

出典 株式会社平凡社百科事典マイペディアについて 情報

デジタル版 日本人名大辞典+Plus 「糸賀一雄」の解説

糸賀一雄 いとが-かずお

1914-1968 昭和時代の社会福祉家。
大正3年3月29日生まれ。滋賀県の厚生課長などをつとめる。昭和21年田村一二らの協力をえて,戦災孤児と知的障害児のための近江(おうみ)学園を創設,他県に先がけて公的教育をおこなう。のち重度心身障害児のためのびわこ学園なども開設。「この子らを世の光に」の主張と実践は,戦後の障害者教育の指針となった。昭和43年9月18日死去。54歳。鳥取県出身。京都帝大卒。著作に「福祉の思想」など。

出典 講談社デジタル版 日本人名大辞典+Plusについて 情報 | 凡例

367日誕生日大事典 「糸賀一雄」の解説

糸賀 一雄 (いとが かずお)

生年月日:1914年3月29日
昭和時代の児童福祉活動家
1968年没

出典 日外アソシエーツ「367日誕生日大事典」367日誕生日大事典について 情報

今日のキーワード

大臣政務官

各省の長である大臣,および内閣官房長官,特命大臣を助け,特定の政策や企画に参画し,政務を処理する国家公務員法上の特別職。政務官ともいう。2001年1月の中央省庁再編により政務次官が廃止されたのに伴い,...

大臣政務官の用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android