糺森(読み)ただすのもり

日本歴史地名大系 「糺森」の解説

糺森
ただすのもり

[現在地名]左京区下鴨泉川町・宮河町〉

下鴨しもがも村の南、賀茂川高野たかの川とが合流する河合の地で、糺は只洲ただすより生じた名という。樹木が生茂る鬱然とした森で、河合森ともよばれ、その北辺に鎮座する下鴨社への参道が中央に通じる。

平安時代以来、潔斎の場として知られ、

<資料は省略されています>

のように詠われる。また「糺」の字義通り、偽りを正す神の座す森としての信仰も集めた。

出典 平凡社「日本歴史地名大系」日本歴史地名大系について 情報

改訂新版 世界大百科事典 「糺森」の意味・わかりやすい解説

糺森 (ただすのもり)

歌枕。京都市左京区下鴨にある,高野川と賀茂川の合流点の2川に挟まれた三角形の森。森の北辺に下鴨神社賀茂御祖(みおや)神社)があり,中央に摂社の河合神社(式内社小社宅(おこそべ)神社,祭神は多々須玉依比売(ただすたまよりひめ)命)がある。偽りを正す神として朝野の信仰が厚く,《源氏物語》では光源氏須磨退去に際し,参詣し〈憂き世をば今ぞ別るるとどまらむ名をば糺の神にまかせて〉と詠んでいる。また鴨長明はこの社の禰宜(ねぎ)に補せられることを願って果たさず,世をはかなんで遁世した。中世には森のはずれの糺河原で,勧進猿楽その他の芸能が盛んに興行された。
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