納屋物(読み)ナヤモノ

デジタル大辞泉 「納屋物」の意味・読み・例文・類語

なや‐もの【納屋物】

江戸時代、各藩の蔵屋敷などを経て販売された蔵物に対して、民間商人によって直接売買された米その他の商品生産者から、荷積問屋荷受問屋仲買小売を経て消費者に渡った。

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精選版 日本国語大辞典 「納屋物」の意味・読み・例文・類語

なや‐もの【納屋物】

〘名〙 江戸時代、領主の売米や専売商品を蔵物というのに対する語で、荷積問屋・荷受問屋・仲買・小売などの民間商人により直接売買される米その他の商品。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「納屋物」の意味・わかりやすい解説

納屋物
なやもの

江戸時代において民間の業者の手を経て流通する物資のことをいい、年貢米・藩専売物資など蔵屋敷を経て流通する蔵物(くらもの)に対する語である。貢租物資や藩専売品がつねに蔵物とは限らず、それらが民間の流通機構を経るときには納屋物とよばれた。米の場合、蔵屋敷を経るものを蔵米、納屋物雑穀問屋などの民間ルートを経由するものを納屋米といい、大坂では流通量の比率は蔵米四対納屋米一程度だったといわれる。納屋物の配給組織は一般的には、荷主―船持―荷積問屋―荷受問屋―問屋―仲買―小売のルートとなっていたが、商品によっては、荷主と問屋との間に仲買が介在することや、問屋と仲買の区別が判然としない場合もあった。近世後期になると農村での商品生産が盛んとなって、納屋物の取引量は漸次増大した。

[宮本又郎]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「納屋物」の意味・わかりやすい解説

納屋物
なやもの

江戸時代,諸藩の年貢米,専売品など蔵屋敷を経由し取引された蔵物に対し,直接民間商人によって集散された問屋商品の総称。納屋物として取扱われたものは,米,油,塩,木材,紙,野菜など。また蔵屋敷をもたぬ旗本寺社などの領米,納屋米など各種にわたる。その取引は荷主が問屋に送るもの,また注文を受けて問屋に送るもの,問屋が原産地におもむき買入れるものとがあった。

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山川 日本史小辞典 改訂新版 「納屋物」の解説

納屋物
なやもの

江戸時代,生産者から直接に商人の手で流通した商品。蔵屋敷を通じて商品化される蔵物に対する語。そのうち米穀を納屋米という。ほかにも油・塩・木材・紙・肥料など多くの商品があった。江戸中期までは蔵物取引が盛んだったが,しだいに納屋物取引がふえる。そのため,宝暦~天明頃に大坂商人らが再三にわたり納屋物会所や問屋株設定を出願し,1835年(天保6)に納屋物雑穀問屋が認められた。納屋物のなかには問屋・仲買・小売という区別なく流通するものもあり,この販売経路は不定で,仲買を欠くこともあった。

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旺文社日本史事典 三訂版 「納屋物」の解説

納屋物
なやもの

江戸時代,一般商人によって集荷・売買された商品
蔵物・舶来物に対する語。生産地から荷積問屋に集められ,主として大坂の荷受問屋を経て市場に出まわったが,商品生産の発展で増大。その取引には,(1)荷主の独自の発送,(2)問屋の注文に応ずる荷主の発送,(3)問屋の生産地出張による仕入れ,の三つの場合があった。

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百科事典マイペディア 「納屋物」の意味・わかりやすい解説

納屋物【なやもの】

江戸時代,百姓・町人など民間商人の手を経ておもに大坂などに回送された諸品。領主が扱う蔵物に対する。米・油・塩・木材・肥料・醤油などが生産地の荷主から荷受問屋,仲買,小売などを経て消費市場に出た。

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世界大百科事典(旧版)内の納屋物の言及

【納屋】より

…江戸時代でも河岸(かし)に建てられた商業用倉庫を納屋といった。ここから転じて,商品のうち,大名らの荷物で蔵屋敷を経由して取引きされる商品を蔵物というのに対して,商人が生産者や生産地商人との取引きで流通させる商品を納屋物とよんだ。(3)高級倉庫に対し,簡単で小さな倉庫をいう。…

※「納屋物」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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