蔵物(読み)クラモノ

デジタル大辞泉 「蔵物」の意味・読み・例文・類語

くら‐もの【蔵物】

江戸時代諸藩蔵屋敷から払い出された年貢米各地特産物。→納屋物なやもの

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精選版 日本国語大辞典 「蔵物」の意味・読み・例文・類語

くら‐もの【蔵物】

  1. 〘 名詞 〙 江戸時代、諸藩の蔵屋敷へ積み送られた年貢米、国産物の総称民間で売買される商品納屋物(なやもの)と称したが、中期以降藩財政の窮迫するにつれて蔵物は納屋物を圧迫した。
    1. [初出の実例]「同所より為御蔵物諸国え売捌来候」(出典:陶器抜荷取締願書(美濃多治見村)‐嘉永三年(1850)八月)

ぞう‐もつザウ‥【蔵物】

  1. 〘 名詞 〙 所蔵している物品。蔵品。ぞうぶつ。
    1. [初出の実例]「蔵物(ザウモツ)・財宝を上下へ持運ぶ」(出典太平記(14C後)一四)

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「蔵物」の意味・わかりやすい解説

蔵物
くらもの

江戸時代、蔵屋敷から販売される諸藩国産物をいう。貢租米がもっとも多く、蔵米とよばれたが、米以外にも阿波(あわ)の藍玉(あいだま)、備後(びんご)の畳表(たたみおもて)、讃岐(さぬき)の砂糖土佐と長州の紙、筑後(ちくご)の蝋(ろう)、播州(ばんしゅう)の木綿(もめん)、杵築(きつき)(大分県)の青莚(あおむしろ)、広島の鉄などがあった。江戸中期以降、多くの藩は領内特産物の領外移出独占を行う(専売制)ようになったが、その際、特産物は蔵物として登せられることが多かった。蔵物の販売は、一般の取引が相対(あいたい)取引であったのに対して、入札制で行われることが多かった。入札によって販売された蔵物に対しては蔵預り切手が発行されたが、そのうちもっとも一般的なのは米切手である。なお蔵物に対して、民間の問屋で取引されるものを納屋物(なやもの)とよんだ。

[宮本又郎]

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百科事典マイペディア 「蔵物」の意味・わかりやすい解説

蔵物【くらもの】

江戸時代に幕府・大名・旗本が売却のため蔵屋敷へ回送した諸品の総称。貢租や専売制などで領民から収奪した物資。納屋物(なやもの)に対する語。中心は米で,ほかに砂糖,紙,畳表など諸国の特産物も含み,領主の貨幣収入の最大部分を占めた。
→関連項目掛屋蔵元

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山川 日本史小辞典 改訂新版 「蔵物」の解説

蔵物
くらもの

全国の藩などから大坂・江戸などの蔵屋敷に集まった年貢米をはじめとする諸物資の総称。商人・農民が直接江戸・大坂などの問屋に廻送した物資である納屋物に対する語。米のほか砂糖・紙・畳表などがよく知られる。諸藩は蔵物売却の代銀で財政をまかなったが,江戸中期に財政難が顕在化すると,藩は納屋物取引を圧迫して蔵物取引を盛んにしようとした。たとえば,従来納屋物として扱われていた商品を強制的に買いあげ,蔵物として蔵屋敷に送ることも行った。

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「蔵物」の意味・わかりやすい解説

蔵物
くらもの

江戸時代,諸藩が蔵屋敷に積み送った年貢米その他物産の総称。藩士,庶民,蔵屋敷をもたない大名が大坂に回送した物品を納屋物 (なやもの) というのに対する語。蔵物の第1位は諸国の年貢米で,ほかに諸藩の専売制により強制的に買上げ,移出された諸国特産物が多かった。

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旺文社日本史事典 三訂版 「蔵物」の解説

蔵物
くらもの

江戸時代,蔵屋敷に収納された諸品の総称
その中心は米であるが,砂糖・紙・畳表などの特産物もあった。蔵元を通じて入札によって売却され,流通網にのった。

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世界大百科事典(旧版)内の蔵物の言及

【蔵屋敷】より

…江戸時代,大名(藩),旗本などの諸領主が,貢租米や領内の特産品を販売するために,大坂,大津,堺,敦賀,江戸,長崎などの諸都市に設置した倉庫兼販売機関のことをいう。蔵屋敷を通じて販売される諸品を総称して蔵物(くらもの)と呼ぶが,その中心は貢租米であり,特産品としては砂糖,藍玉,紙,畳表などがあった。通常,蔵屋敷には蔵役人,名代(みようだい),蔵元掛屋,用聞(ようきき),用達(ようたし)と呼ばれる構成員がいた。…

【納屋】より

…江戸時代でも河岸(かし)に建てられた商業用倉庫を納屋といった。ここから転じて,商品のうち,大名らの荷物で蔵屋敷を経由して取引きされる商品を蔵物というのに対して,商人が生産者や生産地商人との取引きで流通させる商品を納屋物とよんだ。(3)高級倉庫に対し,簡単で小さな倉庫をいう。…

※「蔵物」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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