翻訳|cell cycle
細胞分裂の周期にもとづく細胞の活動周期。通常次の四つの区分に分けられる。すなわちDNA合成の行われるS期,細胞分裂が進行中のM期,この両者の間にあって細胞分裂装置の準備などの行われるG2期,そして分裂終了から次のDNA合成開始までの間を占めるG1期である。これらの区分の中でS,G2,Mの各期は細胞のタイプによってだいたい一定しているが,G1期は細胞の状態によって大幅に変化する。たとえば消化管の粘膜上皮細胞の1世代は,食道では181時間,回腸では17時間であるが,そのS,G2,M期の長さの和はどちらの場合も約10時間であり,両者の大幅な時間の差はG1期の長さの差によるのである。
細胞のこのような活動周期は,主として細胞質的な要因によって支配されるものであることが,核移植や細胞融合の実験から明らかにされている。カエル成体の脳細胞は大多数がG1期にあり,活発にRNA合成を行っているが,この細胞から核だけを取り出してカエル卵の細胞質中に移植してやると,この核は1時間以内にRNA合成を停止してS期に入る。そしてその後,卵本来の核と歩調を合わせて,卵割期特有の短い細胞周期に従って分裂をくり返す。またニワトリの赤血球は,その細胞質の大部分をヘモグロビンが占め,核は凝集してほとんど活動していないが,ある種のウイルスを用いて,この赤血球をヒト由来の培養細胞と融合させることができる。すると赤血球の核では染色体がゆるみ,核小体も出現して,この核はやがて培養細胞の周期に従って行動するようになる。
S,G2,Mの各期が細胞の分裂に深くかかわっているのに対し,G1期は細胞本来の機能の発現にかかわる時期であり,G1期の長さが細胞のおかれた状態によって大きく左右されるのはこのためである。このことは,培養条件下における骨格筋細胞の分化の過程によく示されている。産卵後11~12日目のニワトリ胚から,将来骨格筋を作る予定筋原細胞を取り出して培養してやると,しばらくは約10時間の周期で分裂をくり返した後,互いに融合して横紋をもった多核の筋原細胞に分化する。この過程をさらに詳細に見てみると,ある程度分裂をくり返した予定筋原細胞の中から,G1期に入って3~6時間の後に収縮性タンパク質を合成するものが出現しはじめ,こうなったものはもはやS期に移行することはない。これらの細胞は,その後融合し,分化を完成し,筋肉としての機能をはたし続けるわけであるが,このすべての時間を通じて,ふたたびG1期をはずれることはないのである。
→細胞分裂
執筆者:団 まりな
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
…これが細胞質分裂である。
[細胞周期cell cycle]
分裂増殖している細胞には細胞周期がある。すなわちDNA合成期のS期と分裂期のM期,それにM期からS期までのG1期,S期とM期の間のG2期である。…
…これが細胞質分裂である。
[細胞周期cell cycle]
分裂増殖している細胞には細胞周期がある。すなわちDNA合成期のS期と分裂期のM期,それにM期からS期までのG1期,S期とM期の間のG2期である。…
※「細胞周期」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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