日本大百科全書(ニッポニカ) 「組立て産業」の意味・わかりやすい解説
組立て産業
くみたてさんぎょう
部品や材料を組み立てて完成品を生産する産業のこと。これに対し、生産のための資源や材料を生産するものを素材産業、材料を加工して単品や部品などを生産するものを加工産業とよぶ。生産過程における加工度の違いを基準とした産業区分法で、加工度すなわち付加価値生産の割合は組立て産業がもっとも高くなる。
組立て産業には、原動機・工作機械・農業機械・建設機械・繊維機械・事務機器などの産業機械、重電機・家庭電器・コンピュータ・電子機器・通信機などの電機機械、造船・鉄道車両・自動車・航空機などの輸送用機械、カメラ・時計・光学機器などの精密機械のほか、住宅産業など建設業やファッション衣料産業もこれに含まれる。これらのうち、工作機械、通信機械など組立て度の高い製品を生産するものを高加工度産業とか高度組立て産業とよぶことがあるほか、コンピュータ・航空機などをとくに研究集約型産業とよぶこともある。
わが国の場合、第一次(1973年末)、第二次(1978年末)のオイル・ショックによるエネルギー価格の上昇は、鉄鋼・化学などエネルギー多消費型の素材産業に大きな打撃を与えた(製品価格の上昇、需要減退)が、加工度が高く、エネルギー依存度が相対的に低い組立て産業、とくに一般機械、自動車、精密機械などは影響が少なく、その結果、製造工業内部における高度組立て産業の比重は著しい高まりをみせ、同時に知識集約型産業構造の中核を占めるに至っている。
[殿村晋一]