改訂新版 世界大百科事典 「繊維機械」の意味・わかりやすい解説
繊維機械 (せんいきかい)
繊維および繊維製品を作る機械の総称。(1)化学繊維機械 昔はレーヨンを製造する機械のことであったが,最近では合成繊維を製造する機械のほうが多い。液状にした原料を小さな穴から押し出して繊維を作る紡糸機械,さらに繊維を引き伸ばして強くする延伸・熱処理機,羊毛のような巻縮を作るための巻縮加工機(仮撚(かねん)加工機その他)などがある。長繊維を切断して短繊維を作り,天然繊維と同様な機械で紡績糸が作られるが,化繊独特のトウ紡績機械もある。(2)紡績機械 短繊維から糸を作る一連の機械のことで,繊維機械の中心ともいえる。綿糸,毛糸(梳毛(そもう),紡毛),麻糸,絹糸など,原料の状態,長さに適した各種の紡績機械が使用される。綿糸紡績では,原綿を解きほぐし,不純物を除くための混打綿機,さらに繊維をくしけずってスライバー(繊維束)を作るためのカード,このスライバーから短い繊維,不純物を除くためのコーマー(高級糸用),スライバーの繊維を平行にし,かつ太さを均一にするための練条機,スライバーを細くし,軽く撚り(より)をかけて粗糸を作るための粗紡機,さらに引き伸ばし,撚りをかけて糸を作る精紡機などがある。最近では工程の自動化,連続化,短縮化などが行われている。(3)製糸機械 繭から繊維を引き出し,何本かいっしょにして生糸を作る一連の機械で,煮繭機,繰糸機などがある。(4)織布機械 織物を作るための一連の機械で,準備機械,織機などが含まれる。各種の糸を緯糸(よこいと)用,経糸(たていと)用に巻き返すワインダー,経糸を一定の幅で平行に並べてビームに巻き取る整経機,後の工程でのトラブルを少なくするためののり付機,綜絖(そうこう),筬(おさ)などに経糸を通すための経(へ)通し機(リーチングインまたはドローイングマシン),あるいは織機に仕掛けられている経糸を1本1本つなぐための経継ぎ機(タイイングマシン)などを織布準備機械という。織機には手足で操作する手織機,動力で運転する力織機,自動織機(有杼(ゆうひ)および無杼織機)などがあり,紬(つむぎ),絣(かすり),綴織(つづれおり)などの伝統織物,手芸品以外は,ほとんど自動織機が用いられている。(5)編組機械 ニット,組物,レースなどを作る機械の総称で,編機(手編機,メリヤス編機),組紐(くみひも)機(平打組機,丸打組機),レース用機械(ししゅうレース機が多い)などのほか,製網機も含まれる。(6)染色機・仕上(整理)機 羊毛では,ばら毛あるいはトップの状態で染める機械もあるが,普通は糸または布を染色する。布では浸染機,捺染(なつせん)(プリント)機械などがある。仕上(整理)機は布の特性を発揮させて,商品価値を高めるためのもので,毛焼機,精練・漂白機(染色の前),縮充(絨)機,起毛機,シアリング機,風合調整機(煮絨機など),つや出し・幅出し機,検反機などがある。(7)その他 繊維を平面状に並べ,接着して布を作る不織布機械,樹脂加工その他の加工機械,製綱機,衣服用の裁断機,縫製およびししゅう用ミシン,プレス,繊維・糸・布などの性能を試験するための各種繊維試験機がある。
→織機 →紡績機械
執筆者:近田 淳雄
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報