生産工程の中心部に設置された大型中心装置の生産能力にあわせて、その前後に必要な処理能力を備えた各種装置が配置され、各装置の自動化(自動制御)と装置間の送りの自動化(ベルトコンベヤー、パイプライン)を通じて、労働者数や輸送費を減らし、生産性向上(合理化)を図っている産業をいう。鉄鋼、アルミ製錬、石油精製、石油・石炭化学、窯業(セメント、ガラス)、合成繊維、紙・パルプ、精糖・製油・製粉など素材型産業で、労働装備率や資本集約度が高く、巨額の資本を必要とするものに多い。一般に、装置の大型化、高速化、稼動率の引上げは、エネルギー効率や製品歩留りを高め、コスト低下の効果(スケール・メリット)を生み、経営の効率性を高める。
日本では、1950年代なかばから70年代初頭の高度成長期に、大企業によって、工場の新設と大型化のための巨額の設備投資が行われ、世界有数の巨大設備をもつ装置産業が発展した。とくに、鉄鋼、石油化学では、連続製鋼や原料の総合利用のため、各種製品の製造工程における技術・生産・立地上の統一性が追求され、「規模の経済性」を実現する場として、一貫製鋼工場や石油化学コンビナートの形成がみられた。
装置産業における装置の大型化は、生産技術水準に応じた最適規模と最大需要にあわせて行われる。そのため、好況時には経営効率が著しく高まる反面、景気後退時には、需給ギャップによる稼動率の低下、減産による固定費負担の増大、ひいては業界全体の過剰設備問題を生み出す。1973年(昭和48)の石油危機以降、低成長経済への移行に伴い、日本の装置産業の多くは、エネルギー・コストの上昇と需要減退から、アルミ、紙・パルプなどを先頭に構造不況産業に陥ったものが多い。このうち、エネルギー多消費型の紙・パルプ工業は合理化・省エネルギー対策と自家発電比率の向上(74.5%、1996年現在)と情報化の進展による高加工度紙等の需要増加により、アメリカに次ぐ世界第2位の位置を維持している。「電気の缶詰」といわれるアルミ新地金の精錬は、電力コストの内外格差と円高のあおりで一事業所を残して全滅し、アメリカに次ぐ世界第2位の新地金消費量の99%(1996年現在)を輸入に依存している。その他の装置産業の生産高は、「重厚長大」型産業の比率低下のなかで、90年代を通じてほぼ横ばいで推移している。
[殿村晋一]
生産工程の中心に大型の装置を採用している,鉄鋼,アルミ製錬,石油精製,石油化学,窯業(セメント,ガラス),合成繊維工業,紙・パルプ工業,製油・製粉などの工業をいう。一般に,装置が大きいほどエネルギー効率や製品の歩留りがよくなり,大型化によるコスト低下の効果(スケール・メリット)が大きい。また鉄鋼業,石油化学工業などでは,原料から製品まで何段階もの装置の組合せによって,一貫した生産体系が完結するから,一貫製鉄所や石油化学コンビナートが形成される。このため生産設備の建設には巨額の資本を必要とし,また工場の生産能力が市場規模に比べても相当程度大きいから,装置産業は少数の企業によって支配される場合が多い。日本では,1950年代半ばから70年代初頭に装置産業で工場の新設が相次ぎ,新設ごとに装置の大型化によるコストダウンが追求され,世界有数の巨大設備が完成した。ところが73年の石油危機以降,日本経済の成長率が鈍化すると,装置産業の多くは設備の過剰状態に陥り,工場の新設はまれにしかみられなくなった。またスケール・メリットが技術的に行き詰まってきたため,設備の大型化も一段落している。
執筆者:下田 雅昭
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
… また,製造業の内分類として,自動車や電機などの産業を加工組立産業,技術進歩の影響度が高い産業を技術集約型産業,ハードウェアよりもソフトウェアが重要なコンピューター産業などを知識集約型産業などという場合もある。また石油化学,石油精製,鉄鋼,非鉄など大型の生産設備を採用している産業を装置産業という。製品1単位当りの資源・エネルギー消費量の多い産業を資源・エネルギー多消費型産業と呼んだりもする。…
※「装置産業」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
各省の長である大臣,および内閣官房長官,特命大臣を助け,特定の政策や企画に参画し,政務を処理する国家公務員法上の特別職。政務官ともいう。2001年1月の中央省庁再編により政務次官が廃止されたのに伴い,...
10/29 小学館の図鑑NEO[新版]動物を追加
10/22 デジタル大辞泉を更新
10/22 デジタル大辞泉プラスを更新
10/1 共同通信ニュース用語解説を追加
9/20 日本大百科全書(ニッポニカ)を更新