地震に対する建築の構造の一つ。対比して剛構造がある。建物に十分に、しなやかな変形能力を与えたうえで、建物の揺れの固有周期(建物が1回揺れて戻ってくるまでの時間)を長くして、作用する地震力を全体として小さくしようとする構造をいう。これに反して地震力に抵抗する耐震壁やブレース(筋かい)を設け建物を強剛につくって、地震時の建物の変形をできるだけ少なくしようとするのが剛構造であり、低層ビルには一般にこの剛構造の手法がとられるが、超高層ビルではそれは適切ではない。低層の強剛な建物は変形が少なく、それなりに大きな破壊力が作用するが、前述の耐震壁やブレースで十分に抵抗させられる。一方、周期の長い柔軟な建物には、地震を「柳に風と受け流し」全体として小さな破壊力しか作用しないが、それなりの変形は生ずる。こうした地震応答の性質がわかってきたことが背景にあって、堅い地盤立地を前提に、日本にも変形能力の大きい超高層ビルを合理的に建設することが可能となった。このような科学的裏づけがみいだされる以前に、古くから日本にある五重塔が地震で倒れたことがないのは、前記の高層ビルの構造に似通った性質が備わっていたためと解釈されていて、まことに興味深い。
[小堀鐸二・金山弘雄]
剛構造rigid structureに対する用語で,1927年ごろから31年ごろにかけて,真島健三郎と佐野利器の間で交わされた柔・剛構造論争によって,建築家だけでなく一般社会の人々にもよく知られるようになった。真島は煉瓦や鉄筋コンクリートの壁体建築は大地震による巨大な力には耐えられず,鉄骨架構の柔軟性をもった建築だけが理論的に地震動に耐えられるものだと主張し,佐野は真島理論は複雑な地震現象を単純化しすぎていて非現実的であり,実務上は静的な設計震度(1924年から市街地建築物法に規定された)を用いて建物をできるだけ剛強に設計すべきだと主張した。日本の建築構造はその後剛構造を中心に発達したが,現在ではこの両論は動的耐震設計の発展の中に吸収されてしまっており,どちらが有利か不利かといった議論も今では意味がない。しかし今日でも,壁や筋かいを多くもち剛性の高い建物を剛構造,柱とはりだけで構成される剛性の低い建物を柔構造と呼ぶことがある。
→耐震構造
執筆者:青山 博之
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…59年,東京駅改造計画が発表されたのを契機に,超高層建築の可能性についての技術的研究が行われるようになり,60年のアナログ型コンピューターの登場によって,建物に対する地震波の影響について検討する応答解析が可能となってきた。その結果,固有周期の長い柔に接合された建物ほど,建物に入力される地震力が小さいことがわかり,こうした動的解析の結果,日本でもねばり強い高張力鋼を採用したじん性に富む柔構造であれば,超高層建築も地震に対して安全であるという耐震理論の確立がなされた。一方,急速な経済成長をむかえ,それに対応すべき都市環境にあって,当時の建物の絶対高さの制限の31mそのものが時代の要請に合わなくなってきていた。…
※「柔構造」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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