統合教育(読み)とうごうきょういく(その他表記)integrated education

日本大百科全書(ニッポニカ) 「統合教育」の意味・わかりやすい解説

統合教育
とうごうきょういく
integrated education

障害児が健常児のなかでともに教育されることをいう。障害児(者)教育は、歴史的にみると、健常児との関係で、隔離分離統合の三つの形態があった。今日、隔離ということはまったくの論外であるが、あと二者に関しては非常にむずかしい問題をもつ。統合教育が理念的には理想形態といえるが、障害の重度化、多様化、重複化と、教育態勢にみる人的・物的条件の不備もあって、理想とはほど遠い現実がある。

 また障害児(者)教育では、特殊学級など特別な配慮のもとで、きめ細かな教育を受ける効果と必要性も認められるところであるし、障害をもたない児童・生徒とともに活動することを通じての、人間形成や社会適応における効果も認められている。

 1978年(昭和53)の教育課程審議会答申は、「小学校中学校及び高等学校の児童・生徒と共に活動できる機会をできるだけ多く設けるなど、交流を一層促進し、人間的な触れあいを深めるように配慮する必要がある」とし、このような活動が学校の教育全体を通じて可能な限り行われることを強調している。この「交流教育」は部分的な統合教育としてとらえられるが、教育態勢の整備を進め、その拡大に努めなければならない。

 1999年(平成11)の教育課程の基準改善において、障害児(者)がそうでない者と人間として同等に生活し、活動する社会を目ざすというノーマライゼーションnormalizationの進展に向けた改善の方向性が示された。それと同時に、幼稚園教育要領および小学校、中学校、高等学校の各学習指導要領の総則には、「盲学校、聾(ろう)学校及び養護学校などとの連携や交流を図る」「障害のある幼児児童生徒との交流の機会を設ける」ことが明示された。また、障害のある幼児・児童・生徒の自立を特別に支援する教育のさまざまな方策が考えられている。

[岡東壽隆]

『小笠毅著『学校から拒否される子どもたち――就学児健診と就学指導』(1990・岩波書店)』『文部省編『交流教育の意義と実際』(1995・大蔵省印刷局)』

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

知恵蔵 「統合教育」の解説

統合教育

心身に障害をもつ児童生徒を、障害のない児童生徒(健常児)と一緒に教育すること。英語のintegrationの訳語として使われてきた。障害のない子供を教育する学校の主たる流れに、障害のある子供を入れるという意味で、mainstreaming、normalizationなどともいう。盲・聾・養護学校(知的障害、肢体不自由、病弱が対象)や特殊学級(障害の状態が比較的軽度の児童生徒を対象として、小・中学校に設けられている学級。このうち入院療養中の子供のために病院内に設けられているものを院内学級という)の児童生徒が通常の小・中学校の子供と活動を共にする交流教育も、広い意味での統合教育。文部科学省では、1997年度から交流教育地域推進事業の実施を全都道府県に依頼、地域や学校の実情に応じた多様で継続的な交流教育を推進している。国連総会は、93年12月に、「障害者の機会均等化に関する標準規則」を採択し、統合教育の原則を示した。

(新井郁男 上越教育大学名誉教授 / 2007年)

出典 (株)朝日新聞出版発行「知恵蔵」知恵蔵について 情報

世界大百科事典(旧版)内の統合教育の言及

【障害者教育】より

…本来はその障害の程度からして上記の諸学校,学級において教育することが望ましいにもかかわらず通常の学級に在籍している例もあるが,若干の補助手段を講じれば通常の学級で教育可能な者についてはこれを積極的に推進することが必要である。こうした考え方と教育の形態を統合教育と呼ぶ。 なお文部省は1993年度から〈通級による指導〉という新しい形態をとり入れた。…

※「統合教育」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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