ニュートンの運動の法則は慣性系という座標系でのみ成り立つが、このように基本法則が成り立つ不変、無限、等質な空間のことを絶対空間という。太陽に固定された(静止した)座標系は近似的には慣性系であるが厳密にはそうでない。ニュートンは「仮説をつくらず」という自らの主張に反して、特定の物体によらない絶対的な空間を設定してこの空間で運動の法則が成り立つとした。マクスウェルの電磁場の方程式が電磁波の存在を予見したことはよく知られているが、電磁波の媒体として導入されたエーテルが電磁法則の絶対空間と考えられたことがあった。一般相対性理論によれば運動法則には広い相対性が成り立ち、任意の加速度をもつ座標系からみても運動法則は同じ形式をもつ。この立場からすれば、力学において絶対空間の概念は必要とされない。空間に絶対的に静止していると考える絶対静止系が考えられないのもいうまでもない。
[田中 一]
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
… さて,近代初期に,ガリレイ,デカルト,ニュートンらの手で,運動の問題について,新しい理論体系が誕生するに伴って,その運動の生起する空間そのものに関しても,新しい展開が生じた。とりわけ空間解釈で重要なのはニュートンの〈絶対空間absolute space〉であろう。ただしニュートンの空間概念についてはやや誤解があって,絶対空間は完全に物理的な概念ではなく,むしろ,それ自体,神の〈感覚体sensorium〉のごときものだと理解されている(《光学》第2版)。…
※「絶対空間」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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