室町時代から江戸時代にかけて行われた数学遊戯。「立てる」は、碁石を並べて継子を後継ぎにする遊びであることからこの名が出た。当時継子いじめは人気のある主題だったのである。話はこうである。ある所に先妻の子15人、実子15人合計30人の子をもった母があった。後継ぎを選ぶのに先妻の子には白衣、実子には黒衣を着せて全部を輪になって並ばせ、あるところから数えて10人ごとに除外していき、残った1人を相続人としようと定めた。そして、 のように並べた。数えていくと(図の白い着物の子は先妻の子、すなわち継子、黒い着物は実子)、白い着物の子は14人まで除かれてしまったので、残った継子が「これでは一方ばかり抜けてしまうので、これからあとは自分から数えてください」といったので、やむをえずその1人から数えていくと、今度は実子15人が全部除かれてしまい、最後に先妻の子1人だけが残って後を継いだという話。継子立てが有名になったのは『塵劫記(じんごうき)』の五巻本に図とともに載せられたからである。これは西洋ではヨセフスの問題として有名である。
この継子立ては兼好法師の『徒然草(つれづれぐさ)』に人生の寿命の不定なたとえとして引いているのでよく知られている。継子立てはこのように文章で書かれたりしているが、同時代の『二中歴』『簾中(れんちゅう)抄』のように二一三五二二四一一三一二二一と数字で表しているものもある。これは『塵劫記』と同じ配列である。
[大矢真一]
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
…このように,17世紀ころから本格化してきた数学パズルはその後に急速な発展をなし,20世紀の今日では成書や雑誌,パズル具などがたいへんなはんらんぶりを見せている。しかも,初期のころは油分け算や継子立てのような算術パズル,碁石拾いや図形の裁ち合せのような幾何パズルが主だったが,現在では電卓やマイコンを指向したものまで,さまざまな数学パズルが考えられている。 それゆえ,ひと口に数学パズルといっても,そこで扱う題材と内容は千差万別であり,これを体系的に分類するのは困難である。…
※「継子立て」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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