ヨセフス(読み)よせふす(英語表記)Flavius Josephus

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ヨセフス」の意味・わかりやすい解説

ヨセフス
Josephus, Flavius

[生]37/38. エルサレム
[没]100頃.ローマ
ユダヤの祭司,歴史家。ユダヤ名 Joseph Ben Matthias。 16歳から3年間荒野で修行したのち,エルサレムに帰り,親ローマ的なパリサイ派に属した。 64年使節としてローマにおもむき,ネロ帝の第2夫人の知遇を得,ローマの軍事力に感銘した。ユダヤ戦争 (66~70) 前夜に帰国,ガリラヤ方面の司令官に任じられて拠点を死守したが敗れて,のちの皇帝ウェスパシアヌスの捕虜となった。 69年ウェスパシアヌスが即位すると,これを予言したヨセフスは解放され,以後皇帝の姓フラウィウスを名のって彼に仕え,70年のエルサレム攻囲には皇帝の子チツスの軍に従って参加,両軍の仲介に努力したが成功せず,エルサレム陥落後は,ローマに滞在して皇帝の庇護のもと著作に専念した。主著は,『ユダヤ戦記』 Bellum Judaicum (7巻,75~79) ,『ユダヤ古代史』 Antiquitates Judaicae (20巻,93) 。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「ヨセフス」の意味・わかりやすい解説

ヨセフス
よせふす
Flavius Josephus
(37/38―100ころ)

ユダヤの歴史家。祭司の家系に生まれ、第一ユダヤ戦争(66~73)ではユダヤ軍のガリラヤ地区の指揮官として戦ったが、彼の立てこもったヨタパタの陥落とともに、ローマ軍総司令官で後の皇帝ウェパシアヌスに投降した。その後ローマ軍の案内人となり、70年、エルサレムの陥落後、ローマに赴き、ローマ市民権、土地、年金を与えられ、著作活動に専念した。『ユダヤ戦記』(七巻)、『ユダヤ古代誌』(20巻)、『自伝』(一巻)、『アピオン反論』(二巻)がその著作として伝えられ、いずれもギリシア語で記されている。彼は戦争では民族を裏切った立場に置かれたが、この戦争を扇動した熱心党を糾弾し、異民族に対してはユダヤ人を弁護した。彼の史書は、ユダヤ史はもちろん、ローマ史、原始キリスト教史にも貴重な史料を提供している。

秀村欣二

『新見宏・秦剛平訳『ヨセフス全集』全16巻(1975~85・山本書店)』

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