総合保養地域整備法(読み)そうごうほようちいきせいびほう

日本大百科全書(ニッポニカ) 「総合保養地域整備法」の意味・わかりやすい解説

総合保養地域整備法
そうごうほようちいきせいびほう

リゾート法ともよばれる。この法律は、1987年(昭和62)に成立、同法に基づいて各都道府県が整備地域や計画施設を示した基本構想を策定し、国がこれを承認すると税制や金融面等の優遇措置が得られる。第1次指定は三重サンベルト、宮崎日南海岸、福島会津の3か所が受けた。99年(平成11)4月現在、41道府県の42構想が国の承認を受けている。ここでいうリゾートとは、「良好な自然条件を有する土地を含む相当規模」の非日常的空間で、「国民余暇等を利用して滞在しつつ行うスポーツ、レクリエーション教養文化活動、休養集会等の多様な活動に資するための総合的な機能を備えた地域」のことである。

 リゾート法による民間支援措置として、特別償却、固定資産税、不動産取得税、特別土地保有税の減免等の税制措置、政府系金融機関による低利融資、地方公共団体による助成国有林野の有効利用、農地法等の許認可手続の迅速化などがある。なお、リゾート施設の整備にあたっては、企画・経営等のノウハウを民間事業者に期待されている。民間事業者の側としては、財政金融面での支援措置もさることながら、開発プロジェクトにまつわる規制が緩和され、許認可手続が簡素化されたことを大きなメリットとして評価している。

 リゾート法が登場した背景としては、国民の自由時間の増大生産様式の多様化に伴って、自然との触れ合いや健康の維持・増進、地域・世代を超えた交流に対するニーズの高まりがあり、また一方で、人生80年時代にふさわしい、ゆとりのある国民生活の実現を図ろうとする動きがある。つまり、人生を豊かにするためにリゾート開発が必要だという考え方がその基本にある。そのほかの理由として、貿易摩擦を緩和するために内需拡大を図ろうとするねらい、さらに、国内の地域格差を是正するために、地域の資源を活用して新たな地域振興を図ろうとする動きなどがある。

 しかしリゾート開発は、長期構想によって行うべきものであり、目先の内需拡大効果や地域振興効果に過度の期待を寄せるのは危険である。そしてまた、リゾートサービスの供給があれば、需要が自動的に起こると楽観的に考えるものが多いのも問題である。その後の動きをみると、自然環境の保全や地域振興の観点よりも、短期的な事業の成果が重視されたため、環境破壊、バブル経済の崩壊等の問題が生じ、真のリゾート整備についてのノウハウ、技術、人材が不足していたことが反省され、開発の見直しが始まっている。

 しかしながら、自然環境の保全に留意し、良質のリゾートを建設しているところもある。逆にバブル経済がはじけて、大規模リゾート開発から撤退した企業もあり、人々の関心はあまり負担のかからない手軽に利用できるレクリエーション施設にむけられてきている。リゾート開発が定着するまでには、もうすこし時間が必要である。

[伊藤善市]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「総合保養地域整備法」の意味・わかりやすい解説

総合保養地域整備法
そうごうほようちいきせいびほう

昭和 62年法律 71号。一般にリゾート法と呼ばれる。良好な自然条件を有する土地を含む相当規模の地域であるなどの要件をそなえた地域について,国民が余暇などを利用して滞在しながら行うスポーツ,レクリエーション,教養,文化活動,休養,集会などの多様な活動に資するための総合的な機能の整備を民間事業者の能力の活用に重点をおきつつ促進する措置を講ずるための法律。ゆとりのある国民生活のための利便の増進およびその地域と周辺地域の振興をはかることを目的とするが,その後リゾート開発による環境破壊が問題化したうえ,バブル経済の崩壊も相まって,中止となった計画も多い。

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