翻訳|buffer state
大国の間に位置し,そこで大国勢力が拮抗し,その大国の直接的対立を回避・緩和させる地位にある小国・中立国のこと。したがって,緩衝国は小国の地理的位置から生まれるものであるが,拮抗が破れると大国に侵入されたり(第1次・第2次大戦時のベネルクス三国),衛星国になってしまう(エストニア,ラトビア,リトアニア)ことがある。一方,強国がこのような国の独立に利益を認め,勢力均衡を維持するために相互に小国の独立や領土不可侵を,大国間協定やより広い国際的協定で保障することがある。その戦略的価値が高いとき,その協定は地域の平和を著しく強化する。この種の代表例が永世中立国である。緩衝国は大国間の対立のなかで小国が生き残るための一つの方策であるが,より積極的に一国もしくは周辺諸国と協定して緩衝地帯を設置しようとする動きもある(北欧非核地帯構想など)。
執筆者:磯村 早苗
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
大国あるいは大国の勢力圏の間に位置し、大国相互の衝突を回避するため、明示(協定や条約)あるいは暗黙の合意の下に独立を保障される小国をさす。たとえば、19世紀末のタイおよびエチオピアは英仏間の、またアフガニスタンは英露間の暗黙の合意の下に緩衝国とみなされ、独立を保つことができた。第二次世界大戦後のヨーロッパでも、東西二大陣営の接点に位置するフィンランドやオーストリアが緩衝国と同じ扱いを受け、等距離・中立外交をとった。またスイスが1815年のパリ条約で、ベルギーが1831年のロンドン条約で、列強により永世中立国とされたのも、緩衝国と同じケースとみなされる。
[藤村瞬一]
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
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