主権国家として独立はしていながらも,軍事・外交政策から経済政策,さらに政治体制の基本的性格に至るまで,国外の大国がとる政策に拘束され,常に追随した行動をとる国家のことを,批判的に形容した用語。語源は王朝時代のフランスにさかのぼるが,政治体制の間のイデオロギー的対立が激しくなった第1次大戦後に,相手の陣営に参画した諸国を非難する政治目的から用いられるようになった。第2次大戦前・大戦中には,枢軸側諸国に加わった中欧・東欧諸国がナチス・ドイツの衛星国と呼ばれ,また事実上の日本支配下におかれた満州国と南洋諸国も日本の衛星国と呼ばれることがあった。大戦後には,何よりも冷戦期において,ソ連の影響下におかれた諸国,中でも東欧諸国がソ連の衛星国と呼ばれ,まれにはアメリカの影響下におかれた中南米諸国を指す例もあった。もとより冷戦期に政治的目的から用いられた用語だけに,冷戦終結以後にも大国の影響下におかれた諸国は少なくないとはいえ,衛星国と称する事例は少なくなっている。
執筆者:竹中 千春
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
国際政治において、一つの大国を中心に同一陣営を形成し、共同行動をとる中小国家のことをいう。多くの場合、大国とイデオロギーが共通で政治体制が類似しているか、または地理的にも大国と接近していて、有形無形の圧力を受けているなどの理由で、独立国家でありながら自主的な外交をとらない国々をけなしてこういった。第二次世界大戦前ではナチス・ドイツを中心に共同行動をとったハンガリー、ブルガリア、ルーマニアなど、また第二次世界大戦後では、ソ連の影響下にあったポーランド、ブルガリア、チェコスロバキア、統一前の東ドイツなど、いわゆる東欧共産圏諸国がそれにあたる。
[藤村瞬一]
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