岡山県中北部、真庭郡(まにわぐん)にあった旧町名(久世町(ちょう))。現在は真庭市の中東部を占める地域。吉備(きび)高原の北側の津山―新見(にいみ)の盆地列中央に位置し、旭(あさひ)川とその支流目木(めき)川流域にある。旧久世町は、1896年(明治29)町制施行。1904年(明治37)川南村を編入、1955年(昭和30)美和村と合併。2005年(平成17)北房(ほくぼう)、勝山(かつやま)、落合(おちあい)、湯原(ゆばら)の4町および美甘(みかも)、川上、八束(やつか)、中和(ちゅうか)の4村と合併して市制施行、真庭市となった。『和名抄(わみょうしょう)』の訓世(くぜ)郷、中世の久世保(くせのほ)の地。鎌倉・室町時代は国衙(こくが)領、近世は津山藩領であるが、1727年(享保12)から1817年(文化14)までは幕府領で、久世代官所が置かれた。代官早川正紀(まさのり)は1796年(寛政8)郷校典学館を設立、『久世条教』を著し、農民教化に努めた。出雲(いずも)街道に沿う宿場町でもあり、また物資集散の商業地でもあった。現在はJR姫新(きしん)線、国道181号、313号が走り、米子(よなご)自動車道久世インターチェンジがある。昭和30年代まであった久世牛市(いち)は真庭郡最大であった。養蚕業を背景とした郡是製糸(ぐんぜせいし)(現、グンゼ)久世工場は今日ではアパレル事業(インナーウェア)に転換している。明治に建築された旧遷喬(せんきょう)尋常小学校校舎は国指定重要文化財。トラフダケ自生地は天然記念物。
[由比浜省吾]
『『久世町史』全3巻(1975~2005・久世町)』
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