羽化登仙(読み)ウカトウセン

デジタル大辞泉 「羽化登仙」の意味・読み・例文・類語

うか‐とうせん〔ウクワ‐〕【羽化登仙】

蘇軾「前赤壁賦」から》中国古代の信仰で、からだに羽が生え仙人となって天へのぼること。また、酒に酔ってよい気持ちになったときのたとえにいう。羽化

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精選版 日本国語大辞典 「羽化登仙」の意味・読み・例文・類語

うか‐とうせんウクヮ‥【羽化登仙】

  1. 〘 名詞 〙 ( 「蘇軾‐前赤壁賦」の「飄飄乎如世独立、羽化而登仙」などから ) 中国の神仙思想で、仙人となって羽が生え、仙界に登ること。また、酒に酔って良い気分になることなどにたとえていう。
    1. [初出の実例]「結局何処で消滅したか判然しない。多分茯苓が利いて羽化登仙(ウクヮトセン)したものであらう」(出典江戸から東京へ(1921)〈矢田挿雲〉七)

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四字熟語を知る辞典 「羽化登仙」の解説

羽化登仙

(山に移り住んで仙人となり)羽が生えて、天にのぼること。また、酒に酔うなどして、この世ならぬよい気分になることのたとえ。

[使用例] 飛行機に乗って本当に羽化登仙の感興をほしいままにするには、大きな飛行機の窓から覗いているのでは駄目です[内田百閒*百鬼園随筆|1933]

[使用例] まるで筋肉のないみたいに軟かくって、骨格が感じられないんだよ。これもまた不思議でね。この人と一晩寝たら、羽化登仙の境に入るのではないかと思ったのさ[円地文子彩霧|1976]

[解説] 「羽化」はふつう昆虫について、さなぎから成虫になり、羽が生えることをいいますが、ここでは人が天仙といって天にのぼる力のある仙人となり、そのための羽が生えること。「登仙」はその天仙になり天にのぼることで、中国の神仙思想にもとづいています。現在ではそうした思想の背景なしに、「天にのぼるような気分」の意味に用います。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「羽化登仙」の意味・わかりやすい解説

羽化登仙
うかとうせん

人間の身体に羽が生えて、天上の仙人世界へ登っていくこと。羽をもって空中を飛行することは、古来、中国人の一つの理想であり、仙人となって、世俗のいっさいの煩わしさを逃れるのも、これまたその理想の一つであった。宋(そう)の詩人蘇軾(そしょく)の『前赤壁の賦(せきへきのふ)』に「瓢瓢乎(ひょうひょうこ)として世を遺(わす)れて独立し、羽化して登仙するが如(ごと)し」とあり、この世の憂さを忘れてなんとも楽しい気持ちになっている状態や、転じて、酒に酔って陶然としているさまを例えることばとなっている。

[田所義行]

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世界大百科事典(旧版)内の羽化登仙の言及

【鳥】より

…しかし,大きな翼をはばたかせる形式の飛行術は現実には成功せず,結局飛行の夢が果たされるのはグライダーやプロペラ推進などの考案によってであった。なお,中国の神仙道には〈羽化登仙(うかとうせん)〉の思想があり,仙人は鳥のように飛べると信じられた。J.バルトルシャイティスの《幻想の中世》(1955)によれば,キリスト教における飛びまわる悪魔像は,これら中国の仙人や翼を持つ魔物に影響されて13世紀ころに成立したという。…

※「羽化登仙」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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