翼状片(読み)ヨクジョウヘン(その他表記)Pterygium

デジタル大辞泉 「翼状片」の意味・読み・例文・類語

よくじょう‐へん〔ヨクジヤウ‐〕【翼状片】

結膜の下にある組織が増殖して、角膜の上へ入り込む眼の病気目頭側から半透明の膜が三角形状に伸びて、黒目一部を覆うようになる。角膜の中央まで達すると視力が低下するため、手術で切除する。

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六訂版 家庭医学大全科 「翼状片」の解説

翼状片
よくじょうへん
Pterygium
(眼の病気)

どんな病気か

 角膜(かくまく)(黒眼)に結膜(けつまく)(白眼)が伸びて侵入してくる病気です(図16)。

 普通、鼻側から侵入してきますが、耳側と鼻側の両側から侵入してくる場合もあります。ひどい場合は、両側から侵入した組織が橋のようにつながることもあります。

原因は何か

 紫外線が原因のひとつと考えられています。このため屋外労働する人に多い傾向があり、また、緯度の低い地方、日本なら沖縄県に多い傾向があります。

症状の現れ方

 徐々に角膜(黒眼)に結膜(白眼)が伸びて侵入してくるので、鏡を見るとわかります。侵入した結膜は、多少赤みを帯びていることが普通です。

 痛みもなく、ほかには症状はありませんが、放置して大きくなり角膜中央にかかると、視力が低下します。

検査と診断

 細隙灯(さいげきとう)顕微鏡(スリットランプ)による検査で容易に診断できます。

治療の方法

 侵入してきた結膜組織の大きさが、角膜の端から3㎜程度(角膜中心までのおよそ半分)になると、侵入した結膜組織とその根元の結膜自体を切除する手術をしなくてはなりません。この時、角膜自体も表層は混濁しているため、薄くそぎとる必要があります。

 3㎜以上に成長した翼状片では、手術しても不正乱視(ふせいらんし)(角膜表面がいびつな形になること)が残って、多少視力低下が残る場合があります。

 問題は、手術後再発するケースが少なからずあることで、その場合は再手術が必要です。

 再発を少なくするため、一種の抗がん薬(マイトマイシンC)を術後に点眼することもありますが、角膜や強膜(きょうまく)に対する毒性に気をつけなければなりません。

 また、手術方法自体もいろいろ工夫されています。主として結膜を切除した欠損部に、ほかの場所の健常な結膜を移植する方法ですが、残念ながら再発率はゼロには至っていません。

病気に気づいたらどうする

 徐々にしか進行しませんが、専門医の診察を受けてください。

森 秀夫


出典 法研「六訂版 家庭医学大全科」六訂版 家庭医学大全科について 情報

家庭医学館 「翼状片」の解説

よくじょうへん【翼状片 Pterygium】

[どんな病気か]
 鼻側の結膜(けつまく)(白目(しろめ))から角膜(かくまく)(黒目(くろめ))に向かって、三角形の白色の組織がしだいにのびてくる病気です。
 外見上だけで無症状のことが多いのですが、白色組織が充血して赤くなったり、異物感が生じることもあります。進行して角膜の中央にまでのびてくると、瞳孔(どうこう)にかかり、ものが見えにくくなります。
 紫外線やほこりなど、目に刺激を受けやすい環境にいる人におこりやすく、戸外での労働に従事する人に多くみられます。
[治療]
 充血や異物感は、消炎剤、ステロイド(副腎皮質(ふくじんひしつ)ホルモン薬)の点眼で治療します。進行したものでは、瞳孔にかかる前に、早めに手術的に白色の組織を切除します。しかし、再発しやすい疾患です。

出典 小学館家庭医学館について 情報

知恵蔵mini 「翼状片」の解説

翼状片

結膜の慢性炎症性腫瘍のこと。通常、目頭の方から黒目に向かい、血管を共なった三角形状の増殖組織(半透明の膜)が伸びてくるもの。良性の腫瘍であり、紫外線を多く浴びる人や高齢者などに多い。翼状片の部分は常に充血して見え、異物感がある。見た目や異物感が気にならないのであれば、点眼などで進行を抑える治療などを行う。しかし、増殖組織が大きくなると乱視を引き起こすことがあり、さらに進行して黒目を塞ぐまで伸びると全く見えなくなるため、手術が必要となる。再発率は高めで一説には50%ともいわれ、組織が大きい場合や若い人ほど再発する可能性が高い。再発を防ぐ手術方法を正しく行えば、高い確率で治癒する。目の外傷などからの回復過程で翼状片に似た病状が現れた場合、これを偽翼状片(ぎよくじょうへん)と呼ぶ。治療は翼状片と同様に行われる。

(2014-10-14)

出典 朝日新聞出版知恵蔵miniについて 情報

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「翼状片」の意味・わかりやすい解説

翼状片
よくじょうへん
pterygium

角膜の鼻側瞼裂部に結膜が三角形に進入しているもの。屋外で働く者に多い。徐々に進行し,瞳孔領に達すると視力障害を起す。治療は,瞳孔領に達する前に切除手術を行う。術後に再発しやすいので,β線の照射またはマイトマイシン液の点眼を行う。

出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報

世界大百科事典(旧版)内の翼状片の言及

【結膜】より

…これらのほかに,結膜炎の代表的なものとして,かつてはトラコーマがあったが,日本では激減している。(3)その他の病気 外的刺激によっておこる結膜疾患として翼状片pterygiumがある。おもに鼻側,ときに耳側からも結膜が角膜上にまで増殖するもので,海浜の住民や戸外での業務に従事する人などに多いことから,風にさらされるなどの外的要因が原因と推定される。…

※「翼状片」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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