老人性高血圧(読み)ろうじんせいこうけつあつ

食の医学館 「老人性高血圧」の解説

ろうじんせいこうけつあつ【老人性高血圧】

《どんな病気か?》


〈老人性高血圧は最高血圧と最低血圧との差が大きい〉
 血液は心臓から動脈を通って全身の組織に送り出されます。その際、動脈の壁に圧力がかかりますが、この圧力が異常に高い状態を高血圧といいます。
 高齢者は、加齢とともに動脈硬化が進行していることが多く、血管が弾性を失って血液が流れにくくなっています。そのため、心臓は拍動を強めて、勢いをつけて血液を送ろうとするため、血圧(おもに最高血圧)が高くなりがちです。ちなみに最低血圧のほうは、年をとってもそれほど変化はないため、最高血圧と最低血圧との差が大きいのが老人性高血圧の特徴といえます。
 高血圧症は初期には目立った自覚症状はありませんが、放置すると脳や心臓、腎臓(じんぞう)、眼底(がんてい)などの血管に障害を起こし、脳梗塞(のうこうそく)や心不全、腎不全(じんふぜん)眼底出血(がんていしゅっけつ)などの重大な病気にかかりやすくなります。

《関連する食品》


〈減塩を心がけ、運動不足、お酒の飲みすぎに注意〉
○栄養成分としての働きから
 高血圧の人が、まず気をつけなければならないのは塩分のとりすぎです。食塩の成分であるナトリウムは、血圧を高める物質の分泌(ぶんぴつ)をうながしてしまいます。また、血液中のナトリウム濃度がふえると、それを調節するため血管壁から水分を吸収しようとします(塩分をとるとのどがかわくのはこのためです)。その結果、全身をめぐる血液量がふえて、血圧を上げてしまいます。
 したがって高血圧の予防には、塩分の多い漬けものや汁ものなどをできるだけ避けます。食塩、味噌、しょうゆなどの調味料もひかえ、食塩の摂取量は1日9g未満に抑えるようにします。すでに高血圧の人は6g未満を目安にしてください。
 日常食品の食塩含有量について、[1食分の量/食塩含有量(食塩相当)]の形で以下に示します。
・即席中華麺=90g/5.7g
・塩ザケ(しろサケ)=50g/0.9g
・たらこ(焼き)=40g/2.1g
・味噌(米赤辛味噌)=20g/2.6g
・コンブつくだ煮=20g/1.5g
・ウメ干し(塩漬け)=10g/2.2g
・すじこ=20g/1.0g
・イカ塩辛=15g/1.0g
・ぬか味噌漬け(ダイコン)=20g/0.8g
・しらす干し(半乾燥)=10g/0.7g
マアジ干もの=20g/0.4g
・ハクサイ塩漬け=50g/1.1g
ウスターソース=10g/0.8g
 脂質の多い食品も肥満をまねき、動脈硬化を促進するのでよくありません。
 また、肥満や運動不足、ストレス、お酒の飲みすぎ、喫煙も高血圧をもたらす誘因となります。
〈マグネシウム、カルシウムで血管・心臓を強化〉
 ふだんから濃い味付けのものが好きだった人は、減塩を心がけるとともにカリウムマグネシウムカルシウムを多くとるようにします。
 トマトサツマイモ、青ノリなどに含まれるカリウムは、体内で余分なナトリウムと結びついて外へ排出する働きがあり、ナトリウムによる血圧の上昇を抑えます。塩分をひかえカリウムを多くとれば、より効果的なことはいうまでもありません。
 マグネシウムには動脈を弛緩(しかん)させる働きがあり、不足すると動脈が収縮して血圧上昇をまねきます。ダイズ、ゴマ、ホウレンソウに多く含まれています。
 このマグネシウムとバランスをとって働いているのがカルシウムです。マグネシウム1に対して、2の割合でカルシウムを摂取するのが理想的です。
 高血圧になると心臓に負担がかかりますが、カルシウムには心臓の働きを高めたり、動脈硬化を予防したり、ストレスを軽減する働きもあります。牛乳やイワシなどの小魚で補給しましょう。
〈ナトリウムやコレステロールの吸収を抑える水溶性食物繊維〉
 食物繊維にも血圧を下げる働きがあります。
 とくにこんにゃく、そば粉、ミカン、トマトなどに含まれる水溶性食物繊維は、ナトリウムを包み込んで体内に吸収されるのを防いでくれます。
 同様にコレステロールの排泄をうながすので、動脈硬化の予防にもつながります。
 ちなみにそば粉やミカンには食物繊維だけでなく、やはり血圧降下作用のあるルチンという成分も含まれているので、血圧が気になる人にはおすすめの食品です。
 水溶性食物繊維の一種であるアルギン酸の働きにも注目です。ワカメなどの海藻類に多く含まれているアルギン酸は、食品中ではカリウムなどのミネラルと結合していますが、体内でカリウムとはなれてナトリウムと結合したまま体外に排出されます。
 一方、カリウムは前述のように血液中のナトリウムを排除する働きがあるので、二重に効果的なのです。
 ほかにタウリン、IPA(イコサペンタエン酸)、DHA(ドコサヘキサエン酸)も、高血圧に有効な成分です。タウリンはサザエやタコ、魚の血合いの部分に多く含まれており、交感神経を鎮めて血管の収縮を抑制します。またIPAやDHAは、血液をサラサラにして血管内を流れやすくします。IPAはハマチやサバに、DHAはマグロやブリに多く含まれています。
 もっとも、味の薄い減塩食では食欲が落ちるかもしれませんが、栄養不足にならないよう、香辛料や香味野菜、酢などをじょうずに使って、おいしく食べるくふうもしてみてください。
 あれもこれも薄味にすると味がぼけてどれもおいしくありません。しっかり味のついた主菜に、酸味や辛みを生かした副菜を組み合わせるなど、味にメリハリをつけるのも、減塩メニューをおいしくするコツです。
○漢方的な働きから
 漢方で高血圧によいとされる食品は、ニンジン、セリ、トマトなどです。ニンジンは200gをしぼってジュースにして、セリは500gを水で煎(せん)じたものに砂糖を加えて、1日2~3回飲むといいでしょう。

出典 小学館食の医学館について 情報

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