アルギン酸(読み)アルギンサン(英語表記)alginic acid

翻訳|alginic acid

デジタル大辞泉 「アルギン酸」の意味・読み・例文・類語

アルギン‐さん【アルギン酸】

alginic acid》乾燥させた海藻からとれる粘性の強い酸。接着剤・のり・フィルム製造や食品添加剤などに使用。

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精選版 日本国語大辞典 「アルギン酸」の意味・読み・例文・類語

アルギン‐さん【アルギン酸】

  1. 〘 名詞 〙 ( [ドイツ語] Alginsäure の訳語 ) 多糖類の一種。乾燥した海藻からとり、粘性が強い。粘りけのある食品の安定剤、接着剤、フィルム・繊維の製造などに用いる。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「アルギン酸」の意味・わかりやすい解説

アルギン酸
あるぎんさん
alginic acid

藻類の細胞間にある粘液多糖類。構造上はポリウロン酸の一種。ポリウロン酸とは、ウロン酸が多数結合したものをいい、ウロン酸はアルドースアルデヒド基をもつ糖)のアルデヒド基とは反対の末端の炭素がカルボキシ基カルボキシル基)-COOHとなった構造をしたものの総称である。D-マンノース(アルドースの一種)の6位の炭素がカルボキシ基になったものをD-マンヌロン酸といい、L-グロース(アルドースの一種)の6位の炭素がカルボキシ基になったものをL-グルロン酸という。ウロン酸もアルドースと同じように、α(アルファ)-ピラノース構造とβ(ベータ)-ピラノース構造の異性体がある(マンナンの項参照)。

 アルギン酸はβ-ピラノース型のD-マンヌロン酸とα-ピラノース型のL-グルロン酸が、1番目の炭素のヒドロキシ基-OHと4番目の炭素のヒドロキシ基で脱水結合(脱水縮合)してできたポリウロン酸である。β-1,4-D-マンヌロノ-α-1,4-L-グルロノグリカンと表記する。D-マンヌロン酸(M)とL-グルロン酸(G)の混合比率は起源や藻体部分によって異なるが、いずれも、Mブロック(平均10~15のMが結合)、Gブロック(平均25~30のGが結合)、混合ブロックから構成されている。

 アルギン酸はカルシウム、マグネシウムその他の塩の形で褐藻(コンブ、ワカメなど)その他藻類に細胞壁粘質多糖として存在している。ある種の細菌は部分的に酢酸エステル化されたアルギン酸を分泌する。遊離のアルギン酸は水に不溶、アルカリに可溶。褐色藻の細胞壁のカルシウムやマグネシウム塩を希アルカリで抽出して調製する。

 アルギン酸のナトリウム塩、カリウム塩、プロピレングリコールエステルは水溶性でアルギンとよばれる(狭義のアルギンはナトリウム塩をさす)。これらは水に溶けて粘稠(ねんちゅう)なコロイド溶液になるので多方面に利用される。ナトリウム塩は食品添加物としてアイスクリームドレッシングの安定剤、ソフトドリンクの乳化剤、ジャムやマヨネーズの増粘剤などに、また医薬品として止血剤、軟膏(なんこう)などに、その他繊維加工剤、水性塗料にも使われる。アルギン酸ナトリウムにカルシウムイオンを作用させるとゲル化するので、アルギン酸繊維、人造イクラの製造などに、また、固定化酵素(不溶性の担体や高分子ゲルなどに固定した酵素のこと。酵素反応を連続的に行うことができ、反応後に酵素を回収することができる)の担体として利用される。

[徳久幸子]

『能登谷正浩編著『海藻利用への基礎研究――その課題と展望』(2003・成山堂書店)』

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改訂新版 世界大百科事典 「アルギン酸」の意味・わかりやすい解説

アルギン酸 (アルギンさん)
alginic acid

褐藻類の細胞膜の主要構成成分。algae(藻類)が語源。コンブ,アラメ,カジメなどに乾物の15~30%含まれる炭水化物(多糖類)で,D-マンヌロン酸とL-グルロン酸の共重合体であるが,その比率や重合度は海藻の種類,藻体の部位によって異なる。それに従って性状も多少異なるが,一般には,冷水,有機溶剤に不溶で,アルカリ溶液にはよく溶け,酸で沈殿する。市販のアルギン酸製品の多くは,水に溶解しやすいナトリウム塩か,酸性下でも安定なプロピレングリコールエステルである。これらのアルギン酸類は水を吸収して膨潤し,非常に粘度の高い水溶液を与え,しかも分解・腐敗しにくいので,いろいろな用途がある。織物用のり,練炭やセメント・モルタルの粘結剤,水性塗料,電気絶縁剤として用いられるほか,食品工業面では乳化剤,増粘剤としてアイスクリーム,ゼリー,ジャム,マヨネーズ,練乳,スープ,ケチャップ,ドレッシングなどに多量に用いられている。また,水中懸濁物の凝集剤として排水処理に使用されるほか,ストロンチウム,カドミウムなど有害重金属の体外排出や血中コレステロール低下などの作用や難消化性などの性質をもつことから,医薬品やダイエット・フードの基材としても注目されている。
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化学辞典 第2版 「アルギン酸」の解説

アルギン酸
アルギンサン
alginic acid

levan gum.(C6H8O6)n.褐藻類の細胞間を充填する粘質多糖で,β-D-マンヌロン酸とα-L-グルロン酸の2種類のピラノース型ウロン酸が,おもに交互に(1→4)結合した直鎖状ポリウロン酸.細胞壁にカルシウムまたはマグネシウム塩として存在する.コンブ(マコンブ)Laminaria japonica Areshでは乾物量の60% がアルギン酸塩で,褐藻類から希アルカリで抽出し,HClまたはCaCl2でゲル状に沈殿させて精製する.分子量は2~24万,融点約300 ℃.-120~-150°.酸性加水分解にははげしい条件を必要とする.繊維原料,食品添加剤,アイスクリームやシロップなどの粘度増加,乳化組織の安定剤,医薬品,化粧品などの乳化剤,粘滑剤,紙のにじみ止めなどに用いられる.また,アルギン酸繊維は手術糸など医療用に用いられる.[CAS 9005-32-7]

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百科事典マイペディア 「アルギン酸」の意味・わかりやすい解説

アルギン酸【アルギンさん】

多糖類の一種。褐藻類の粘液に含まれる。マンヌロン酸,L-グルロン酸の重合体。そのナトリウム塩は水溶性で粘性が高いため,アイスクリーム等食品の粘度付与剤,織物糊(のり),水性塗料,乳化剤等用途が広い。
→関連項目再生繊維食物繊維

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「アルギン酸」の意味・わかりやすい解説

アルギン酸
アルギンさん
alginic acid

褐藻類,特にマコンブなどから抽出精製した多糖類で,乳化安定剤として食品,医薬,化粧品として用途が多い。海藻類から炭酸ナトリウムで抽出後,酸で沈殿させる方法で工業生産がなされている。酸性物質で,水には溶けない。ナトリウム塩は水に溶けると糊状の液となり,乳化安定剤として練り歯磨きや軟膏剤に用いられる。プロピレングリコールエステルは,食品衛生法で許可されている範囲内でドレッシング,アイスクリーム,マヨネーズなどの安定剤として用いられる。

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栄養・生化学辞典 「アルギン酸」の解説

アルギン酸

 コンブ,アラメ,カジメなど褐藻類の細胞間粘質多糖で,β-D-マンヌロン酸とα-L-グルクロン酸が主としてβ1→4結合した化合物.水に不溶だが,アルカリ塩は可溶.粘性を利用して,増粘剤として諸種の食品に加えられるほか,人造イクラの製造,香料を閉じこめるカプセルなどのように,膜状にしても用いられる.

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農林水産関係用語集 「アルギン酸」の解説

アルギン酸

あらめ、こんぶ等の褐藻類に多く含まれる粘液多糖で、粘性増強作用を活かして食品添加物、製材用基材、医療用材料等広く使用されているほか、海藻由来の食物繊維として血中コレステロール低下作用や抗癌作用も期待されている。

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世界大百科事典(旧版)内のアルギン酸の言及

【ウロン酸】より

…たとえば,高等動物の各種の組織にはヒアルロン酸,コンドロイチン硫酸,ヘパリンなどの酸性多糖があって,組織の構築に関与しているが,グルクロン酸はこれらの多糖の重要な構成成分である。また,植物の細胞壁構成成分であるペクチンにはガラクツロン酸が,褐藻の粘質物であるアルギン酸には多量のマンヌロン酸が含まれる。言い換えれば,通常の食生活によってウロン酸を含む多糖が摂取されるのである。…

【多糖】より

…この中でゲルを形成する成分はガラクトースとL‐アンヒドロガラクトースからなる多糖で,アガロースと名付けられている。また褐藻にはD‐マンヌロン酸とL‐グルロン酸と呼ばれる2種のウロン酸からなる酸性多糖のアルギン酸が存在する。アガロースやアルギン酸は食品添加物としても用いる。…

※「アルギン酸」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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