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老化にともなう循環器の病気と症状 ろうかにともなうじゅんかんきのびょうきとしょうじょう

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家庭医学館の解説

ろうかにともなうじゅんかんきのびょうきとしょうじょう【老化にともなう循環器の病気と症状】

◎心臓の加齢変化(かれいへんか)
◎高血圧
◎虚血性心疾患(きょけつせいしんしっかん)
◎心臓弁膜疾患(しんぞうべんまくしっかん)
◎不整脈(ふせいみゃく)
◎心不全
◎高齢者の動脈硬化(どうみゃくこうか)の予防

◎心臓の加齢変化(かれいへんか)
 年をとれば髪が白くなり、骨がもろくなるように、正常な心臓にも年とともにさまざまな変化がおこります(「加齢による心臓の変化」)。高齢者は、一般的に、全身の動脈硬化(どうみゃくこうか)が進んでいることが多く、それにともなって血圧(おもに収縮期血圧(しゅうしゅくきけつあつ)=最高血圧)が上昇しています。
 こうなると、心臓は高い血圧にうちかって全身に血液を送らなければならないため、心肥大(しんひだい)になります。これは、心臓の壁が厚くなり、全体として心臓が大きくなるものです。心臓の壁が厚くなると心臓は血液の流入に対して広がりにくくなります(拡張機能の低下)。そのため、運動などの負荷がかかると肺や下肢(かし)に血液のうっ滞(たい)(流れにくくなる状態)がおこりやすく、うっ血性心不全(けつせいしんふぜん)をおこしやすくなります。
 また、心臓の弁にカルシウムが沈着して、弁がかたく開きにくくなったりします。さらに、心肥大にともない、弁輪(べんりん)(弁のまわりの組織)が拡張して、うまく弁が閉じなくなるなどの弁機能不全(べんきのうふぜん)も多くみられるようになります。
 心臓は1分間に60~80回程度の速さの規則正しいリズムで収縮しています。このリズムは心臓の洞結節(どうけっせつ)といわれる部分にあるペースメーカー細胞によってつくられ、刺激伝導系を通って心臓のすみずみまで伝えられます。ところが、高齢になると、ペースメーカー細胞の数が減少したり、そのはたらきが悪くなって不整脈(ふせいみゃく)がおこりやすくなり、ときには人工ペースメーカーの挿入が必要となることもあります。
 このように、加齢による変化を受けた心臓をもつ高齢者は、高血圧(こうけつあつ)、虚血性心疾患(きょけつせいしんしっかん)、大動脈弁狭窄症(だいどうみゃくべんきょうさくしょう)、心不全(しんふぜん)、不整脈などの疾患にかかることが多くなります。ところが、高齢者の病気の特徴的な症状は、若い人のように、目だって現われないという特徴があります。また、食欲低下や意識障害など、心臓に関係ない症状を訴えることもあります。
 さらに、同時にいくつもの病気にかかっている例も多いため、若い人のように、この症状ならこの病気、と特定できないこともしばしばみられます。
 このような特徴をふまえ、高齢者に多い循環器疾患とその症状をつぎにみてみましょう。

◎高血圧(こうけつあつ)
 年齢とともに動脈硬化が進み、血管の弾性が低下すると、それにともなって血圧が高くなります。WHO(世界保健機関)の診断基準は、収縮期血圧(しゅうしゅくきけつあつ)が140mmHg以上、あるいは拡張期血圧(かくちょうきけつあつ)が90mmHg以上を高血圧と定義しています。この基準に従うと、70歳以上の高齢者の約半数が高血圧であるともいわれます。
 しかし、収縮期血圧は年齢とともに増加するものの、拡張期血圧はほぼ横ばいにとどまり、脈圧(この2つの血圧の差)が増大した高血圧が多い特徴が高齢者にはあります。また、血圧の調節機能が衰えて、血圧の日内変動(にちないへんどう)や季節による変動が大きくなる傾向もあります。そのため、高齢者の血圧を評価するためには、日を変え、少なくとも3回は測定することが必要でしょう。
 若い人と同様、高齢者も初期の高血圧症では自覚症状を訴えることはほとんどありません。しかし、高齢になると心臓のポンプ機能が弱っていることが多く、さらに血圧の自動調節能も衰えているため、立ち上がったときに脳に送られる血液が減少し、めまいやふらつき(起立性低血圧(きりつせいていけつあつ))をおぼえることがしばしばみられます。
 さらに、経過の長い高血圧の患者さんでは、脳や心臓、腎臓(じんぞう)、眼底(がんてい)などの血管に重い障害を合併していることがよくあり、これらの合併症による症状を自覚することも少なくありません。たとえば、脳の血管に障害がおよぶと、頭痛やめまい、手足のしびれ感をおぼえますし、さらに重度の高血圧が続けば脳出血、脳梗塞(のうこうそく)など、生命にかかわる病気に進展することもあります。
 また、心臓への負担が増加する結果、心臓が代償的(だいしょうてき)に肥大しますが、放置しておくと心不全になってしまうこともあります。
 腎臓の血管も、長年高血圧にさらされると、内腔(ないくう)が狭くなり、血液の循環が障害されます。その結果、腎硬化症(じんこうかしょう)(「腎硬化症」)さらには腎不全(じんふぜん)(「腎不全」)になり、人工透析(じんこうとうせき)が必要になることもあります。
 眼底の血管も、高血圧の影響を受けると動脈硬化が進みます。放置しておくと眼底出血(がんていしゅっけつ)をおこすことがあります。
 以上のようなことから、高齢者の高血圧の治療には、まずそれが老化にともなう生理的な血圧の上昇であるのか、さまざまな合併症をともなう寿命を縮める可能性のある高血圧なのかを区別する必要があります。ところが、実際にはこの両者を区別することはなかなかむずかしいのです。もちろん、諸臓器の合併症があればすぐに治療しなければなりませんが、高齢者の場合、血圧を急に下げると臓器への血流量が低下してしまいかねないため、目標とする血圧は若い人よりも高めに設定され、ゆるやかに下げていくようにされます。
 具体的には、60歳代では収縮期血圧が140mmHg、拡張期血圧が90mmHg以上、70歳代では収縮期血圧が160mmHg、拡張期血圧が90mmHg以上で治療を開始し、収縮期血圧が150~160mmHg、拡張期血圧は90mmHgに下げることが目標とされます。
 治療は、食塩制限や運動療法など、できるかぎり薬物を使わない方法が勧められますが、効果が十分でないときは降圧利尿薬(こうあつりにょうやく)やカルシウム拮抗薬(きっこうやく)、アンギオテンシン変換酵素阻害薬(へんかんこうそそがいやく)などによる薬物療法が行なわれます。

◎虚血性心疾患(きょけつせいしんしっかん)
 心臓は全身に血液を送るポンプのはたらきをしており、脳や肝臓、腎臓などの臓器は、送られてくる血液中に含まれる酸素や栄養(エネルギー源)を取り込んで活動しています。心臓も、ほかの臓器と同様、その活動のためには酸素とエネルギーが必要です。その補給路が冠動脈(かんどうみゃく)と呼ばれる、心筋に血を送る血管です。
 この冠動脈が細くなって心臓に十分な血液が送れなくなったり、血流が途中で途絶えてしまう病気を狭心症(きょうしんしょう)や心筋梗塞(しんきんこうそく)といい、この2つを総称して虚血性心疾患(きょけつせいしんしっかん)といいます。
 虚血性心疾患は、その大部分が冠動脈の動脈硬化が原因でおこるものです。動脈硬化を促進させる因子に、高血圧、高脂血症(こうしけっしょう)、糖尿病、喫煙などがありますが、加齢もそのなかに含まれます。高齢者が虚血性心疾患にかかる率が高くなるのはそのためで、虚血性心疾患での死亡数は年々増加しています。
 狭心症や心筋梗塞は、多くの場合、「胸が押さえつけられるような」とか「胸が締めつけられるような」と表現される突然の胸痛を訴えて発症します。ところが高齢者では、呼吸困難や腹痛だけとか、まったく痛みを訴えない無症候性心筋虚血(むしょうこうせいしんきんきょけつ)が多い特徴がみられます。これは、高齢者は痛みの閾値(いきち)(痛みに耐えられる限度)が高いこと、痛みを伝える神経の伝導路に障害があるため、などと考えられています。
 高齢者の急性心筋梗塞による死亡率は、若い人の2~3倍といわれていますが、これは、高齢者では多枝病変(たしびょうへん)(冠動脈の複数の箇所に梗塞がおこること)が多いこと、再発例が多いこと、心不全やショックを合併しやすいこと、脳梗塞など他の病気との合併が多いこと、痛みを訴えることが少なく、受診が遅れること、などによります。
 虚血性心疾患の診断は、まず心電図検査、血液生化学検査、核医学検査などの非侵襲的検査(ひしんしゅうてきけんさ)(からだへの負担の少ない検査)から行なわれ、症状や病態によって選択的冠動脈造影(せんたくてきかんどうみゃくぞうえい)(心カテーテル検査)が行なわれます。
 治療は、薬物療法のほか、冠動脈形成術(PTCA)や冠動脈バイパス術(CABG)などの手術(観血的(かんけつてき)治療)も積極的に行なわれます(狭心症の「狭心症の治療」)。

◎心臓弁膜疾患(しんぞうべんまくしっかん)
 心臓には心房(しんぼう)と心室(しんしつ)という2つの部屋が左右に1組ずつありますが、心房と心室との間、そして心室と動脈との間にそれぞれ1つずつ、合計4つの弁があります。これらの心臓の弁が、いろいろな原因によって変化して、開きにくくなったり閉まらなくなる病気が心臓弁膜症(しんぞうべんまくしょう)です。
 弁膜症をおこした心臓は、血液を送り出す力がよけいに必要となったり、心臓の中で血液が逆流して、ポンプとしての仕事効率が悪化します。放置しておくと、心臓が疲弊(ひへい)して心不全になってしまいます。
 弁膜症の原因には、小児の時期に発見されることが多い先天的な弁の異常や、リウマチ熱にかかった後に弁の破壊がおこるリウマチ性のものがありますが、高齢者の場合は、加齢による弁の変性、つまり、動脈硬化や弁のまわりの組織(弁輪(べんりん)という)の石灰化によるものが多くみられます。
 動脈硬化の影響をもっとも受けやすいのは大動脈弁で、この弁がかたくなって開きにくくなる大動脈弁狭窄症(だいどうみゃくべんきょうさくしょう)という病気が高齢者によくみられます。この病気になると、狭くなった弁を通して血液を全身に送らなくてはならないため、心臓に大きな負荷がかかります。はじめのうちは、この負荷に対応するため、心臓は代償的(だいしょうてき)に肥大することでしのごうとします。しばらくは自覚症状もなく経過しますが、長い年月のうちに代償性心肥大も限界に達し、労作時(ろうさじ)の息切れや胸痛(きょうつう)、または失神(しっしん)などの症状を自覚することになります。
 ところが、高齢者は、若い人と異なる症状を訴えることもあります。場合によっては、いきなり心不全を発症することがあります。冠動脈の動脈硬化が進んでいる場合も多く、虚血性心疾患の合併が約3割の人にあります。
 弁膜症は、特徴のある心臓の雑音や頸動脈(けいどうみゃく)の狭窄音(きょうさくおん)が聴取されること、心電図検査や胸部X線検査で心肥大がみられることで診断がつきます。さらに、心臓超音波検査を行なうと、弁の狭窄の程度(弁口面積(べんこうめんせき))や狭窄部位前後の血圧の差まで測定できます。
 ひとたび心不全や失神などをおこすと、その後は病気の進行が早くなるため、心カテーテルによる大動脈弁形成術(だいどうみゃくべんけいせいじゅつ)や大動脈弁置換術(だいどうみゃくべんちかんじゅつ)(開胸術(かいきょうじゅつ))が検討されます。最近はからだに負担の少ない方法が開発され、高齢者でも弁置換術を受けられるようになりました。

◎不整脈(ふせいみゃく)
 心臓は、生涯を通して、規則正しいリズムで収縮し続けます。このリズムを生み出すのが洞結節(どうけっせつ)といわれる部分です。洞結節でつくられたリズム(電気信号)が、刺激伝導系という経路を通って心臓のすみずみにまで伝えられることで、心臓が全体として規則的に収縮するのです。
 洞結節や刺激伝導系も加齢による影響を受けます。しばしば洞結節がうまくはたらかず脈拍が異常に遅くなってしまう洞不全症候群(どうふぜんしょうこうぐん)という不整脈や、刺激伝導系の障害により洞結節のリズムが心室に伝わらず、心室が自分のリズムで収縮してしまう完全房室(かんぜんぼうしつ)ブロックという不整脈がよくみられます。
 洞不全症候群や完全房室ブロックの場合、脈拍が遅くなること(徐脈(じょみゃく))が問題で、ときに数秒間にわたって脈拍が停止するため、脳への血流が減少し、めまいや失神発作をおこしたりします。徐脈のために心不全症状を訴える場合もあり、心臓ペースメーカーによる治療が必要になります。
 また、動脈硬化をはじめ、高血圧や弁膜疾患、心不全などの循環器の病気をもっている高齢者では、病気による心房細動(しんぼうさいどう)や期外収縮(きがいしゅうしゅく)という不整脈がしばしばみられます(心臓の病気の「不整脈」参照)。
 心房細動は、絶対性不整脈(ぜったいせいふせいみゃく)ともいわれ、脈拍がバラバラになってしまうもので、速いことも遅いこともあります。心房細動をおこすと、心房の中で血液の流れがよどむため、血栓(けっせん)という小さな血のかたまりができやすくなります。この血栓が脳や腸管の血管につまると、脳梗塞(のうこうそく)や虚血性大腸炎(きょけつせいだいちょうえん)など、致命的な病気をひきおこしかねません。
 予防として、抗凝固薬(こうぎょうこやく)や抗血小板薬(こうけっしょうばんやく)などの薬剤の内服が行なわれますが、出血しやすくなったり、血が止まりにくくなるため、注意が必要です。
 期外収縮は心臓が予定よりも早めに収縮してしまう不整脈で、「脈がとんだ」とか「心臓がドキッとした」と表現されるものです。一過性であることが多く、治療の対象とならないことも多いのですが、持続しておこる場合、また失神などの症状をともなう場合には厳重な管理が必要になります。
 不整脈の診断は、心電図検査によって行なわれますが、受診したときにはおさまっていることがあります。そういう場合は、携帯型のホルター心電図を装着し、24時間連続して心電図を記録して診断します。

◎心不全(しんふぜん)
 これまであげたようなさまざまな心臓の病気によって心臓のポンプ機能が低下し、全身に送られる血液が不足し、肺や肝臓、下肢(かし)にむくみが生じる状態を心不全(しんふぜん)といいます。高齢になればなるほど心臓の予備力は低下しますから、かぜをひいたり、塩分をとりすぎたり、動きすぎるなど、わずかな負荷がかかっても心不全になりやすくなります。
 心不全になると、最初は階段や坂道で息切れや動悸(どうき)がしたり、足のすねや甲の部分がむくむなどの症状が現われ、重症になると、安静にしていても息苦しさをおぼえたり、夜間に突然苦しくなって起き上がったりするようになります。

◎高齢者の動脈硬化(どうみゃくこうか)の予防
 循環器の病気の原因はさまざまですが、高齢者の場合は、動脈硬化が病気の発症に大きくかかわっています。
 動脈の内腔(ないくう)は内皮細胞(ないひさいぼう)という細胞におおわれており、血液がスムーズに流れるようになっていますが、この内皮細胞がなんらかの理由で障害を受けると、コレステロールが沈着したり、血小板が集まって血栓(けっせん)をつくるなど、その内腔が狭くなってつまるようになります。このような病気を総称して動脈硬化というのですが、加齢による血管の老化が動脈硬化をおこすもっとも大きな要因と考えられています。
 動脈硬化は、程度の差こそあれ、年をとってくれば誰にでもおこりますが、その進展を早めるいくつかの危険因子(きけんいんし)があります。その代表的なものが高血圧、糖尿病、高脂血症、喫煙、肥満、高尿酸血症(こうにょうさんけつしょう)などです。
 欧米を中心に、数多くの疫学調査(えきがくちょうさ)や介入試験(かいにゅうしけん)(治療をかねて行なう試験)がこれまでに行なわれ、その結果から、前述した危険因子を若いうちからきちんと治療・予防すれば、動脈硬化の進展を遅くすることが明らかにされました。しかし、このような疫学調査は60歳以下の人を対象に実施されることが多いため、すでに動脈硬化が進んだ高齢者でも、危険因子を管理することで、その進行を抑えられるかどうかは議論の分かれるところでした。
 ところが、最近ヨーロッパで行なわれたWOS、4Sという大規模な介入試験の結果、高齢者でも薬によって高コレステロール血症を治療したほうが心血管系の動脈硬化を抑制でき、死亡率も減らせることが証明されました。
 つまり、高齢者の動脈硬化の予防には、危険因子のコントロール、とくに高血圧や糖尿病をきちんと治療し続けること、また健康な人でも、区や市町村が行なう健康診断を定期的に受け、コレステロールや尿酸値などをチェックすることがたいせつであることが確認されたわけです。

出典|小学館
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