心肥大(読み)シンヒダイ(その他表記)Cardiac Hypertrophy

デジタル大辞泉 「心肥大」の意味・読み・例文・類語

しん‐ひだい【心肥大】

主に心臓心室筋肉が肥厚している状態弁膜障害などで血液を送るため余分に仕事をする状態が続くと起こりやすい。また、スポーツ選手でもみられる。心臓肥大

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家庭医学館 「心肥大」の解説

しんひだい【心肥大 Cardiac Hypertrophy】

進行すると、心臓の収縮力(馬力)が低下し、突然死も
[どんな病気か]
 医学的な意味での心肥大とは、心臓の筋肉(心筋しんきん))が厚くなることをいいます。心臓の内腔(ないくう)の容積が増えて心臓が大きくなることは心拡大(しんかくだい)と呼ばれ区別されます。心肥大はいろいろの病気で生じた心臓の状態をさし、病名ではありません。
 心臓の筋肉が厚くなるとき、心臓の筋肉の細胞の数が増えるのではなく、一個一個の細胞の大きさが大きくなります。心筋が肥大してくると心臓の縮む力が弱まり、心臓の馬力が低下してくることがあります。また、不整脈(ふせいみゃく)をおこしやすくなり、突然死の原因となる場合もあります。
[原因]
 あらゆる心臓病で心肥大がおこりますが、とくに著しい肥大をおこす病気は、心臓に高い圧力の負荷(圧負荷)がかかる高血圧症(こうけつあつしょう)、肥大型心筋症(ひだいがたしんきんしょう)、大動脈弁狭窄症(だいどうみゃくべんきょうさくしょう)などで、左心室(さしんしつ)に負荷がかかります。右心室(うしんしつ)に高い負荷がかかる原発性肺高血圧症(げんぱつせいはいこうけつあつしょう)では右心室の肥大がおこります。
 そのほか、逆流などによって心臓に過剰量の血液が負荷となる弁膜症や先天性心疾患の一部でも、心筋の肥大を生じます。また、肺高血圧症をおこす疾患では右心室の肥大をおこします。
[症状]
 心筋の肥大が長期にわたって続くと、心臓の収縮力が低下し、からだを動かしたときの息切れ、全身倦怠感(けんたいかん)、疲れやすさ、顔や脚(あし)のむくみなどの症状(「心不全とは」)が現われます。
 肥大型心筋症や大動脈弁狭窄症では、動いたときに狭心症と似た胸の痛みを感じます。これは心臓の筋肉に酸素を送る動脈である冠状動脈(かんじょうどうみゃく)が、心臓の筋肉の中を通って心臓に栄養を送っているためで、心筋が肥大すると、心臓が縮むときにこの栄養動脈が強い力を受け、流れが悪くなってしまいます。すると心臓の筋肉が酸素不足となり胸の痛みとして感じます。心肥大の原因となる病気とは独立して、心肥大があるだけで突然死の可能性があがります。
[検査と診断]
 心臓専門医による診察によって心筋の肥大があるかどうかわかる場合があります。原因疾患である肥大型心筋症や大動脈弁狭窄症の診断を下すこともできます。また、胸部X線写真、心電図を参考にして診断されます。
 さらに心エコー検査(心臓超音波検査(「心臓超音波検査(心エコー)」))まで行なえば心筋肥大の程度、心筋肥大の原因までわかります。最近ではMRI(磁気共鳴画像診断(「MRI(磁気共鳴画像診断)(磁気共鳴診断装置)」))によって詳細な心筋の肥大のようすがわかるようになってきています。治療方針の決定や診断の最終決定のために、入院して心臓カテーテル検査を行なう場合もあります。
◎原因疾患の治療が中心
[治療]
 心肥大をおこす原因疾患の治療が中心となり、肥大そのものに対する直接の治療はありません。
 また、一度肥大した筋肉を元に戻すこともなかなかむずかしいと考えられており、それ以上肥大しないように治療することが原則です。ただし、大動脈弁狭窄症(だいどうみゃくべんきょうさくしょう)などでは弁の手術をした後、肥大が少しずつとれてきます。
 心肥大の原因としてもっとも多い高血圧症(こうけつあつしょう)では、当然ながら血圧を下げることが中心となります。肥大型心筋症(ひだいがたしんきんしょう)に対しては有効な内服剤が数種開発されており症状の軽減が得られますが、不整脈による突然死に対しては治療がむずかしいのが現状です。
 大動脈弁狭窄症では早期に診断を受けて、その後は運動を避け、進行してきたら手術を受けることが必要です。その他の心肥大をおこす疾患でも、その病気の治療を行ないます。心不全をおこした場合には心不全の治療を行ないます(心不全の治療(心不全とはの「一般的な治療と原因別の治療」))。
●日常生活の注意
 心肥大がみられる人の突然死は、急にからだを動かしたときなどに不整脈を生じておこることが多いとされています。したがって、急激に動くことは避け、運動も一般的には避けるべきです。
 高血圧症では肥大が軽い間は運動療法は有効ですが、肥大が進行してくると突然死の可能性があるので、運動を制限することが必要です。
●予防
 高血圧症以外は、病気の原因や進行の要因も解明されていないので、予防がむずかしいのが現状です。

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「心肥大」の意味・わかりやすい解説

心肥大
しんひだい
hypertrophy of the heart

心筋線維の太さが増大して心室壁が肥厚し,重量も増す心臓の変化をいう。僧帽弁狭窄,脚気,肺性心などでは右室肥大,大動脈弁の障害では左室肥大,そのほか心室中隔欠損,梅毒などの場合は,左右両室の同時肥大を起すこともある。X線像や心電図によって肥大を判別できる。起因を識別し,それに基づく対策が必要である。

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世界大百科事典(旧版)内の心肥大の言及

【心臓肥大】より

…心肥大ともいう。心臓の壁,とくに心室の壁の心筋が肥大して厚くなることをいう。…

※「心肥大」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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