肥満児(読み)ひまんじ(英語表記)obese child

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説

肥満児
ひまんじ
obese child

正常域をこえて肥満状態を示す児童のこと。一般には同年齢,同性,同身長の児童の標準体重を 20%以上上回るものを肥満児と定義している。肥満の原因としては家族的習慣,文化社会的習慣,心因性,遺伝体質性,視床下部病変内分泌疾患などがあげられるが,過食と運動不足が重要である。日本の大都市の児童では2~3%程度の出現率である。実際上承認された身長別体重表はまだないので,乳幼児の身長・体重における厚生労働省値,カウプの指数,皮厚値,視診所見などを総合して肥満と判定することが多い。

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百科事典マイペディアの解説

肥満児【ひまんじ】

一般に,体重が身長年齢(身長からみた年齢)における体重の平均値より20%以上多い小児。内分泌性その他のものもあるが,単純性肥満症が最も多い。全身均等に肥満する。治療は食事療法,運動療法,時にカウンセリングなどの精神療法による。[肥満指数] 人の肥満度を示す肥満指数(BMI)として,体重(kg)を身長(m)の2乗で割った数値が用いられ,これが22のときの体重が〈標準体重〉とされる。近年はBMIが25以上で,糖尿病,高血圧症などの合併症があるとき,〈肥満症〉とされる。→かくれ肥満脂肪過多症

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世界大百科事典 第2版の解説

ひまんじ【肥満児】

小児で,体重が標準体重より20%以上も重いものをいう。小児の肥満は単純性肥満症と症候性肥満症に大別される。前者は過剰なカロリー摂取,すなわち過食や運動不足が原因となるものをいい,心因的な原因によるものもある。後者は基礎にクッシング症候群や甲状腺機能障害などの内分泌障害や,ターナー症候群などのような先天性疾患があって,これらによって起こるものをいう。しかし後者によるものは少なく,小児の肥満のほとんどは前者の単純性肥満症である。

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日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

肥満児
ひまんじ

小児単純性肥満症の社会的慣用語で、遺伝的・環境的因子と生活習慣や情緒的因子とが相互に複雑に絡み合って生ずる肥満をさし、明らかな基礎疾患から肥満するものと区別される。両親または片親が肥満の場合はその体質が受け継がれることが多いが、とくに母親との相関が強い。しかし、戦中戦後の食糧難時代には肥満者が激減し、糖尿病も影を潜めたことから、たとえ肥満の素質があっても適切な食事をとることによって肥満の発症を防ぐことが可能であるといえる。また、小児の肥満は小児期に健康障害をきたすものではないと思われていたが、最近では脂質異常症、脂肪肝、高血圧、糖尿病などの生活習慣病が出現している。一方、脂肪細胞の動態から乳幼児期の肥満と成人肥満との関連や治療に対する抵抗性などが問題視されている。
 近年、胎内での低栄養環境が、生後の肥満感受性や、メタボリック症候群感受性に影響を与える可能性が注目されている。20歳代、30歳代の女性には極端なダイエット志向が強く、著しいやせ傾向にあり、そのような母親の子宮内で低栄養にさらされた胎児が、出生後に胎内環境とミスマッチ(不適合)した高栄養の食生活によって急速に成長を取り戻す(catch up growth)と、後に生活習慣病を発症しやすくなるという。このことは母体の健全な栄養管理が重要であることを示唆している。肥満児の7割が成人肥満に移行すると同時に、成人となってから肥満を解消しても成人期の死亡リスクを上昇させるという研究報告もあり、小児肥満は治療する必要がある。
 乳幼児期の肥満の判定には、母子健康手帳にみられる成長曲線のパーセンタイル(百分位数)値(体重が90パーセンタイル以上)やカウプ指数、すなわち 体重(g)/身長(cm)2×10(20以上)が用いられ、また学童以上の年長児では、性別・身長別平均体重と現在の実測体重から肥満度、すなわち(実測体重と平均体重の差/身長に見合う平均体重)×100(20%以上)を算出する方法がよく用いられる。
 乳幼児期の栄養摂取は、養育者によって一方的に行われているが、食行動や食品選択性は生後から3歳ころの間に刻印される(刷り込み)といわれており、この時期によい食習慣を身につけさせる必要がある。
 乳幼児の肥満の予防は、(1)家族歴に肥満があれば乳児早期から多すぎたり少なすぎたりしない適正な栄養を心がける、(2)できるだけ母乳を飲ませるよう努力する、(3)人工栄養では強制による過飲を避ける、(4)幼児期の体型は乳児期の肥満型から正常域に移行するものであること、(5)食事はできるだけ家族そろって楽しくゆっくりよくかんで食べる習慣をつけること(早食いは満腹感がおこらないので大食の誘因となる)などに留意することである。
 学童肥満の治療は、(1)医師や栄養士による食事や献立の指導を受ける。1回の食事が同じエネルギーであっても、そのなかに含まれる脂肪量が2倍だと食後の体脂肪の蓄積が10倍近く増える。(2)減量に対する本人の意志を確立させて、頻繁に節食を強制しないこと。(3)朝食を欠食すると間食や夜食の頻度が多くなり、食事時間がずれて、エネルギー消費系が低下している夜間に食事をとることが肥満を助長するので、朝食の欠食・夜食の摂取・不規則なおやつの摂取を避ける。(4)夜型生活で睡眠時間が短くなると肥満になりやすい傾向がある。体をよく動かす子供ほど睡眠時間が長い。自室の掃除やベッドの整頓(せいとん)など自分で行うようにする。(5)本人だけで食べる「孤食」は、肥満につながる食事内容や、早食いなどに結びつく可能性がある。なるべく家族といっしょに食べるようにする。(6)学校で給食のおかわりをしないこと。また、清涼飲料はできるだけ控える。(7)イギリスで行われた小児8000人の追跡調査によると、3歳でのテレビ視聴時間が1日8時間以上に及んだり、睡眠時間が1日8時間以内であると、7歳での肥満形成に結びついており、テレビの視聴やテレビゲームなどは長時間に及ばぬように留意する。(8)発育曲線を用いて経過を観察することで効果的な治療が期待できる。
 一般に小児の肥満は中等度までのものであれば、体重を増加させなければ身長が伸びて、2、3年後には普通体に戻る。[井上義朗]
『A. Must,P.F.Jacques,G.E.Dallal,C.J.Bajema, W.H.Dietz:Long-term morbidity and mortality of overweight adolescents.A follow-up of the Harvard Growth Study of 1922 to 1935(“The NEW ENGLAND JOURNAL of MEDICINE”, 1992,Massachusetts Medical Society) ▽J.J.Reilly, J.Armstrong, A.R.Dorosty, P.M.Emmett, A.Ness, I.Rogers, C.Steer, A.Sherriff:Early life risk factors for obesity in childhood:cohort study(“BMJ 2005;330:1357”,2005,BMJ Publishing Group Ltd.) ▽ R.M.van Dam,W.C.Willett,J.E.Manson,F.B.Hu:The Relationship between Overweight in Adolescence and Premature Death in Women(“Annals of Internal Medicine”,2006,the American College of Physicians)』

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