ターナー症候群(読み)たーなーしょうこうぐん

日本大百科全書(ニッポニカ) 「ターナー症候群」の意味・わかりやすい解説

ターナー症候群
たーなーしょうこうぐん

女性の性腺(せいせん)発育障害主徴とする、性染色体異常による疾患である。1938年、アメリカの内分泌学者ターナーHenry Hubert Turner(1892―1970)が成人女性の性的発育不全、翼状頸(よくじょうけい)、外反肘(ちゅう)を合併する低身長症を報告し、以後ターナー症候群とよばれるに至ったが、1959年に病因が性染色体異常であることが判明した。発生頻度は、女子新生児の0.03%といわれている。

 臨床像としては、低身長症があり、出生時から身長が低く、思春期の身長の伸びがみられず、成人で135センチメートル前後といわれている。低身長を主訴に受診して診断されることが多い。また、新生児期に手背や足背に浮腫(ふしゅ)(むくみ)を認めることから発見されることもある。

 性的発育不全としては、第二次性徴が発現せず、初経初潮)がなく無月経となる。すなわち、思春期に乳房、乳頭、乳輪の発達がなく、陰毛や腋毛(えきもう)も認められない。

 翼状頸(頸部が短く、肩から頸部にかけて直角三角形の翼状に皮膚のたるみがある)、鎧(よろい)状胸(楯(たて)状胸郭ともいい、胸郭が広くて厚い)、外反肘(肘関節から前腕が外方に反る)が特徴的で、心・血管系や尿路系の形態異常も合併する。また、知能は低下することもある。

 染色体所見は、X染色体のモノソミーmono-somy(一染色体性)で、通常女性の性染色体はXXと対(つい)をなすが、ターナー症候群では対をなさずX染色体1個である。また、Xクロマチン(核染色質)は陰性である。

 診断は、臨床症状が典型的であれば容易であるが、小児期に見落とされることもあり、染色体検査で診断が確定する。

 治療は、思春期以後に女性ホルモン療法を行い、第二次性徴を発現させる。

[山口規容子]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ターナー症候群」の意味・わかりやすい解説

ターナー症候群
ターナーしょうこうぐん
Turner's syndrome

性染色体の欠損が原因で,卵巣の発育障害およびそれによる機能障害を起す症候群をいう。内外性器は女性型で,卵巣は線維化して第2次性徴は発現しない。低身長で,翼状頸,外反射,楯状胸などの身体的奇形を伴う。また内臓や大動脈などの奇形,高血圧を伴うこともある。アメリカの内分泌学者 H.ターナー (1892~1970) にちなむ名称。

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