低身長および性ホルモン低下を主な徴候とする、女性の病気です。いろいろな体表奇形を伴うことがあります。空間識別能力や注意力など、高次脳機能の問題を合併することもあります。症状の程度や、症状が表面化する時期はさまざまです。
染色体の数の異常による先天的な病気です。正常の女性は22対(44本)の常染色体に加え、性染色体であるX染色体を2本もっています(46,XX)。これに対しターナー症候群の患者さんではX染色体が1本不足しています(45,X)。女児1000人の出生に1~2人みられる、頻度の高い疾患です。
重症の患者さんでは、新生児期からリンパ浮腫(ふしゅ)(手足がむくむ)、
思春期以降では、血液検査で「女性ホルモンが低く、性腺刺激ホルモンが高い状態」が手がかりになります。これが判明したら染色体検査を行い、「45,X」であることが証明されれば確定です(他に変化型もあります)。思春期以前では、疑わしい症状があれば直接染色体検査を行います。
ターナー症候群の低身長に対して、成長ホルモン補充療法が1999年に国内承認されています。週6~7回の自己皮下注射を行います。女性ホルモンの不足に対しては、内服薬による補充が行われます。骨粗鬆症の内服治療も行われます。
年齢により、小児科、婦人科あるいは内分泌内科での検査がすすめられます。
二川原 健, 須田 俊宏
女性は通常X染色体を2本もっています。このX染色体の1本がない、あるいは
卵子や精子がつくられる過程で、X染色体やその一部が脱落してしまうことで起こります。また、受精後初期の細胞分裂の際に、一部の細胞でX染色体が1本失われて起こることもあります。この場合はX染色体を2本もつ細胞と1本しかもたない細胞が混在するモザイク型になります。
生まれた時の身長は正常下限くらいですが、年齢とともに低身長が目立ってきます。治療をしなかった場合の最終身長の平均は139㎝です。思春期には二次性徴の発現不全(無月経、乳房発育不全)もみられます。身体的には、
ターナー症候群はX染色体異常に多くのパターンがあり、それによって症状の個人差が大きくみられます。知能は一般に正常です。
前記のような特徴的な症候により疑い、染色体検査で確定診断します。
低身長に対しては成長ホルモンの投与を行います。この治療を受けたの人の平均身長は145㎝です。また、二次性徴の発来、
本症候群においても本人や家族の支援を目的に家族の会が活動しています。
小林 武弘
女性で、X染色体のモノソミーによる疾患です。新生児の女児2~4000人に1人の割合でみられます。
新生児期には四肢の
思春期になっても性成熟が起こりません。その理由は、胎児期には発達していた卵巣が生後には機能を失うことによります。この結果、通常は無月経で不妊となります。思春期になってからも無月経のために、この症候群と診断される場合があります。
染色体の構成は、X染色体全体のモノソミーだけでなくX染色体に伴う構造異常があることもありますが、いずれもX染色体の短腕のモノソミーが共通しており、これがターナー症候群の原因と考えられています。
X染色体がモノソミーである細胞以外に、正常の染色体をもつ細胞などが混在している場合(モザイクと呼ぶ)もあります。正常細胞が卵巣に存在すれば卵巣の発達も起こるので、子どもをもつことができる人もいます。
性成熟とホルモン不足による
古山 順一, 玉置 知子
出典 法研「六訂版 家庭医学大全科」六訂版 家庭医学大全科について 情報
女性の性腺(せいせん)発育障害を主徴とする、性染色体異常による疾患である。1938年、アメリカの内分泌学者ターナーHenry Hubert Turner(1892―1970)が成人女性の性的発育不全、翼状頸(よくじょうけい)、外反肘(ちゅう)を合併する低身長症を報告し、以後ターナー症候群とよばれるに至ったが、1959年に病因が性染色体異常であることが判明した。発生頻度は、女子新生児の0.03%といわれている。
臨床像としては、低身長症があり、出生時から身長が低く、思春期の身長の伸びがみられず、成人で135センチメートル前後といわれている。低身長を主訴に受診して診断されることが多い。また、新生児期に手背や足背に浮腫(ふしゅ)(むくみ)を認めることから発見されることもある。
性的発育不全としては、第二次性徴が発現せず、初経(初潮)がなく無月経となる。すなわち、思春期に乳房、乳頭、乳輪の発達がなく、陰毛や腋毛(えきもう)も認められない。
翼状頸(頸部が短く、肩から頸部にかけて直角三角形の翼状に皮膚のたるみがある)、鎧(よろい)状胸(楯(たて)状胸郭ともいい、胸郭が広くて厚い)、外反肘(肘関節から前腕が外方に反る)が特徴的で、心・血管系や尿路系の形態異常も合併する。また、知能は低下することもある。
染色体所見は、X染色体のモノソミーmono-somy(一染色体性)で、通常女性の性染色体はXXと対(つい)をなすが、ターナー症候群では対をなさずX染色体1個である。また、Xクロマチン(核染色質)は陰性である。
診断は、臨床症状が典型的であれば容易であるが、小児期に見落とされることもあり、染色体検査で診断が確定する。
治療は、思春期以後に女性ホルモン療法を行い、第二次性徴を発現させる。
[山口規容子]
1938年,H.H.ターナーによって記載された性染色体異常に起因する症候群の一つ。本来,男子ではXY,女子ではXXとなるべき性染色体がX1本のみとなる性染色体欠損による病気で,女子出生2500人に1人の割合でみられる。典型的なものでは,減数分裂の際の性染色体の不分離によって生じ,X染色体が1本のみとなるが,X染色体2本,あるいは3本の細胞とモザイクになる異型も知られている。外陰部は女性形となり,子宮も存在するが,卵巣は機能せず,原発性無月経となり,二次性徴は欠如する。両眼が広がった特異な顔貌となり,種々の小奇形を伴う。このほか,大動脈狭窄や先天性リンパ浮腫,小人症やバセドー病を合併することも少なくない。
→染色体異常
執筆者:小室 裕明
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出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
…21番目の常染色体が1個余分にある),クラインフェルター症候群(性染色体がXXYの構成となる)などがある。染色体数が45になるものとしてはターナー症候群(性染色体がX1個だけ)がある。染色体異常の症状としては,奇形,精神遅滞,性徴の異常などがあるが,染色体異常の種類により症状は異なる。…
※「ターナー症候群」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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