食の医学館 「小児肥満」の解説
しょうにひまん【小児肥満】
《どんな病気か?》
〈食べすぎと運動不足に注意。遺伝的な素因も関係〉
肥満(ひまん)は、体の脂肪組織が必要以上にふえた状態をいいます。消費するよりも摂取するエネルギーが多いと、余分な栄養素の大半は中性脂肪にかわり、脂肪組織に蓄えられて肥満となってしまいます。
遺伝的な素因も関係しており、両親が肥満していると、約80%の確率で子どもも肥満になると報告されています。
近年、子どもの肥満は増加傾向にあります。これは、脂質の多い欧米型の食事が中心になったことや、家にこもってテレビゲームなどで遊ぶことが多くなり、運動不足の子どもたちがふえていることに起因しています。
また昔とちがって、いまの子どもたちはストレスも増加しており、食べることによってストレスの解消をはかるケースも見受けられます。
子どものときに肥満していると、40~80%の確率で成人したときの肥満につながるといわれ、将来、糖尿病や高血圧、脂質異常症、動脈硬化、脂肪肝(しぼうかん)などの生活習慣病にかかる危険性が増します。
肥満を予防・治療しなければならない理由はそこにあるわけです。
子どもが肥満しているかどうかを判定するものに、
[カウプ指数]=[体重(g)÷身長(cm)の2乗]×10
があります。
これで求めた答えが、乳幼児の場合、14~18であれば正常な体型といえますが、20を超えると肥満と判定されます。年長児の場合は、25~30が肥満、30以上では高度肥満となるので注意が必要です。
《関連する食品》
〈1日3回規則正しくゆっくり食事をする〉
○栄養成分としての働きから
肥満の原因の大半は、食べすぎと運動不足にあるので、食生活を含めた生活習慣を見直してみましょう。
肥満のある子どもは、糖質・脂質のとりすぎ、まとめ食いや早食いをする、間食が多い、などの傾向がみられます。
小児肥満につながる食習慣としては、食事を抜く(1日の食事回数を減らす)、まとめ食い(ドカ食い)をする、よくかまない、早食い、間食が多くて糖質を大量にとる、テレビを見ながら食べる(ながら食い)、就寝前に飲食する、偏食により同じ食べものを摂取する、などがあげられます。
また、朝食を抜く子どもがふえていますが、食事の回数を減らすと、体内の脂肪を蓄える能力を高めてしまうことになります。しかも空腹感が強まるので、昼食時にまとめ食いをしてしまい、ふとる大きな原因になってしまいます。
食事療法のポイントとしては、エネルギーの高い食品はひかえ、満腹感を感じやすい食事をくふうします。味付けは薄味にし、ゆっくりとよくかんで食べるようにうながしてください。
干しヒジキや切り干しダイコン、キノコ類、こんにゃく、ワカメなどの食物繊維を多く含んだ食品は、低カロリーであり、胃や腸内で水分を吸収してふくらむため、満腹感を得やすいという特徴があります。
おまけに歯ごたえがあり、咀嚼(そしゃく)する回数がふえるので、早食いを防止する効果も期待できます。
とくにキノコ類は、糖質や脂質を燃焼させるビタミンB群も豊富に含んでいるので、おおいに活用したいものです。
〈肥満体質を改善するダイズサポニンに注目〉
肥満の子どもにとって、脂質のとりすぎにはとくに注意したいものですが、体内に入った脂質をエネルギーにかえて燃焼させるのが、ビタミンB群のなかでもB2とB6です。
B2は納豆、たまご、サバ、カレイ、牛乳などに、B6はマグロ、サンマ、レバー、ダイズに含まれます。
ちなみにダイズには、脂肪が細胞に蓄えられるのを抑えるサポニンという成分が含まれており、納豆や味噌、高野どうふなどのダイズ製品を長期間常食すると、腸管表面の組織が変化して肥満体質が改善されるという報告があります。
またダイズサポニンは、血栓(けっせん)のもとになる過酸化脂質の増加を防ぎ、血中コレステロール値を下げる働きがあります。さらにダイズイソフラボンという成分には、骨づくりを助ける働きがあるので、育ちざかりの子どもにもダイズ製品を毎日の食卓にのぼらせたいものです。女子の場合、成長期のダイエットは将来の骨量の低下にもつながりやすく要注意です。
将来的な生活習慣病の予防にも効果を期待できるので、献立になにか1品、ダイズ製品を加えるように心がけるといいでしょう。
〈体の脂肪を分解・燃焼させる醸造酢のアミノ酸〉
天然醸造酢(じょうぞうす)も、肥満の予防に効果があります。醸造酢に含まれている7種類のアミノ酸には、糖質が脂肪にかわって体内の細胞に蓄積するのを防ぐ働きがあるのです。また、酢を使った料理は減塩にもつながります。濃い味付けは早食いや食欲増進にもつながるので、酸味を生かした調理法を献立に取り入れましょう。
ほかにトウガラシの辛み成分であるカプサイシンには、体内に蓄えられた脂肪を分解して燃焼させる働きがあり、肥満防止に有効です。刺激が強いので、学童児や胃腸の弱い子どもにはおすすめできませんが、中高生以上であれば、トウガラシを適度に利用するのもよいでしょう。
肥満を治すための食事療法は、子どもだけにがまんを強いても長続きしません。家族全員が生活習慣を改めることです。そして、子どもの発育を阻害しないよう、無理のない内容にして、あせらずじっくりと減量に取り組んでください。