肩こり
かたこり
肩がだるい、重苦しいといった不快感があって、同時にこわばった筋肉をもんだりすると気持ちのよいものの俗称で、不定愁訴(しゅうそ)の一つとしてもよくみられる。臨床医学的には筋硬症に相当するもので、これは寒冷や筋肉の使いすぎのほか、リウマチ、感冒、代謝障害などにみられる筋肉の有痛性硬結をいう。いわゆる「こり」というもので、その代表的なものが肩こりである。
肩こりは一般に僧帽筋痛をさす場合が多く、僧帽筋が緊張して肩に全般的な圧痛があり、圧痛点を認めることもある。上腕を体幹から離した位置で作業を続けるなど、不自然な姿勢をとり続けることによって単純に僧帽筋が疲労して発生することもあるが、普通は頸部(けいぶ)に原因があって発生し、いわゆる頸腕症候群の部分的症状として認められることが多い。そのほか、慢性胃炎や肝炎などの消化器疾患、肺結核や気管支喘息(ぜんそく)などの呼吸器疾患、糖尿病などの代謝疾患、狭心症などの循環器疾患や血圧の異常、更年期障害などの内分泌疾患、神経症や心身症など、内科領域のいろいろな慢性疾患の症状としてもみられる。
一般的な原因としては、精神的な緊張や不自然な姿勢のために、僧帽筋などの筋肉が緊張して血流が悪くなり、乳酸などの疲労物質がたまったりビタミンの欠乏などをおこし、筋肉の硬結を招いて肩こりと感じられるのである。したがって、肩こりそのものに対する治療としては、僧帽筋の血液循環をよくするために温熱療法、マッサージ、体操などが行われ、入浴も効果がある。鍼(はり)や灸(きゅう)が古くから行われているが、これらも、局所の刺激によって循環をよくするために効果があるものと考えられる。パップ剤の湿布も同様の意味で効果がある。内服薬としては筋弛緩(しかん)剤、鎮痛剤、末梢(まっしょう)循環促進剤、トランキライザーなどが用いられる。なお、慢性疾患によるものは原因疾患の治癒が必要で、肩こりが治りにくいのもこの理由による。
[永井 隆]
出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例
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かたこり【肩こり】
《どんな病気か?》
〈疲労物質が筋肉にたまって起こる〉
肩の筋肉がこわばり、だるく、重苦しい感じがするのが肩こりです。肩こりは、不自然な姿勢を長く続けたり、精神的ストレスがあると起こりやすくなります。
これらの条件が加わると、肩の筋肉が緊張して血液の流れが悪くなり、疲労物質がたまったり、ビタミンの補給がうまくいかなくなったりします。
その結果、筋肉がこわばって肩がこるのです。
《関連する食品》
〈クエン酸、ビタミンB群などで疲労を防ぐ〉
○栄養成分としての働きから
肩こりには、疲労を防止するクエン酸が有効です。クエン酸はミカン、レモン、グレープフルーツなどの柑橘類(かんきつるい)やモモ、洋ナシ、ウメなどのくだものや、酢に多く含まれています。
ただ多量に摂取すればよいというものではなく、必須栄養素をバランスよくとったうえでクエン酸を補給すると効果的です。
とくに、食べものを燃焼させてエネルギーにかえ、老廃物を代謝(たいしゃ)させる働きのあるビタミンB群はたいせつです。
ビタミンB群を横断的に含む食品には、胚芽米(はいがまい)や全粒紛(ぜんりゅうこ)パン、レバー、牛乳などがあります。
水溶性で体の中にためておくことができないビタミンなので、毎日とるようにしましょう。
また、末梢血管(まっしょうけっかん)を拡張するカリウムや、血液の流れをよくするビタミンEも、ぜひとりたい栄養素の1つです。カリウムは柿、トマト、アボカド、サツマイモなどに、ビタミンEはアーモンドなどのナッツ類やウナギ、カボチャ、アボカドなどに多く含まれています。
○漢方的な働きから
熱いお湯1リットルに塩小さじ2、酢大さじ2を加えてタオルをひたし、熱いうちに肩にあてると、血行がよくなり、肩こりのつらさが楽になおるといわれています。また、クズ湯を飲むのも肩こりにいいでしょう。
出典 小学館食の医学館について 情報
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肩こり【かたこり】
僧帽筋などの肩の付近の筋肉にこわばるような不快感を感ずる症状。これらの筋肉の緊張を増すような姿勢で作業することによって生ずるものは,入浴・マッサージなどで軽快する。しかし肩関節周囲炎によるものや,血液循環の不良その他内臓疾患や,眼科,耳鼻科疾患の一つの症状として起こるものは,原因疾患の治療が必要で,マッサージなども一時的効果しかもたない。→五十肩
出典 株式会社平凡社百科事典マイペディアについて 情報
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世界大百科事典(旧版)内の肩こりの言及
【凝り】より
…こりの最も一般的な原因は筋肉の疲労である。たとえば肩こりを考えると,人間が日常,5~6kgの上肢全体を軀幹からつり下げているためには,僧帽筋,肩甲挙筋,前鋸筋が常時,抗重力作用を営んでいなければならない。その人間が筋力以上の活動を強いられると,筋肉に疲労の現象が現れてくる。…
【病気】より
…身体の痛み,不快感,機能の低下や不調和などで日常生活が妨げられる,個人の肉体的異変や行動の異変をいい,そのような状態の不在を健康という。
【病気と健康】
個人の肉体の機能や行動は自然的および社会的環境と密接に結びついているため,肉体や行動の異変についての解釈や,それへの対応は文化によって異なる。しかし,一般論としていえば,その解釈には自然的解釈と超自然的解釈の二つの様式があり,一方,異変への対応には,庇護と忌避の二つの理念と形態とがあって,それぞれ複雑な組合せをもっている。…
※「肩こり」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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