六訂版 家庭医学大全科 「肩腱板損傷」の解説
肩腱板損傷
けんけんばんそんしょう
Rotator cuff injury
(運動器系の病気(外傷を含む))
どんな損傷か
肩の深部にある肩腱板という腱性組織の損傷です(図62)。腱板は
原因は何か
損傷の原因としては、明らかな外傷によるものは半数で、残りははっきりとした原因はなく、日常生活動作のなかで断裂が起きます。肩腱板は骨と骨(
症状の現れ方
肩の運動障害・運動痛・夜間痛があります。とくに夜間痛で、「睡眠がうまくとれない」という訴えが多く聞かれます。運動痛はありますが、多くの患者さんは腕(
検査と診断
X線撮影、関節造影検査、MRI、超音波検査などで肩関節周囲炎(五十肩)などと区別(鑑別診断)します。X線所見では、肩峰と骨頭の間が狭くなります。MRI、超音波検査などでは骨頭の上方の腱板部に断裂の所見がみられ、断裂の大きさや腱板の厚さが評価できます。
治療の方法
転倒などの急性外傷で損傷した場合には、三角巾で1~2週間安静にします。
完全断裂部が自然治癒することはありませんが、痛みなどの症状は注射療法と運動療法などの保存療法で多くの場合軽快します。夜間痛が強い例では水溶性副腎皮質ホルモンと局所麻酔薬を
保存療法で肩関節痛と運動障害が治らないときは、手術が行われます。手術では損傷した肩腱板の縫合が、直視下あるいは関節鏡視下に行われます。
病気に気づいたらどうする
肩関節周囲炎(五十肩)では自然に治ることもありますが、夜間痛が続くようであれば、腱板損傷の可能性もあるので、整形外科への受診をすすめます。
池上 博泰
出典 法研「六訂版 家庭医学大全科」六訂版 家庭医学大全科について 情報