中国の伝統劇に使用される隈取(くまどり)化粧の型。臉は顔のことである。唐代の仮面劇に由来するともいわれるが、元代の雑劇、明(みん)代の伝奇、清(しん)代の崑曲(こんきょく)から京劇へと受け継がれる過程で、化粧法の進化がみられる。主として豪傑、敵(かたき)役、神仙などを演じる浄(じょう)の役柄が用いるもので、さまざまな色彩と紋様の組合せによって人物の正邪善悪を表現する。色では、紅は忠勇、藍(あい)は獰猛(どうもう)、黄は腹黒、白は奸悪(かんあく)、黒は剛直、紫は謹厳、青は妖邪(ようじゃ)、緑は凶悪、金銀は神仙を表す。紋様は一色だけの整臉(せいれん)、複雑多岐な砕臉(さいれん)、額と右頬(ほお)と左頬の三面に分ける三塊瓦臉(さんかいがれん)、邪悪にゆがむ歪臉(わいれん)、均衡を狂わせた破臉(はれん)などに大別される。また道化を演じる丑(ちゅう)の役柄は、顔面の中央、鼻と目のあたりだけ白く塗って滑稽(こっけい)さや狡猾(こうかつ)さを表現するが、その型には豆腐臉(とうふれん)、棗核臉(そうかくれん)などがある。歴史上有名な人物、劇中なじみの人物の色と紋様は決まっていて、それだけでも数百種に上る。
[内山 鶉]
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
…演技が終わったあと,隈取を紙または羽二重などに押しあてて写しとったものは〈押隈〉といい,好劇家に愛蔵されている。【小池 章太郎】
[臉譜]
中国では隈取を〈臉譜(れんぷ)〉という。もと古代の仮面に源を発し,それから発達してきたといわれ,宋・元の演劇にはすでに用いられていたが,長い年月を経て複雑化し,今日みられるような多彩な様式に変化してきた。…
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出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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