自身番(読み)ジシンバン

デジタル大辞泉 「自身番」の意味・読み・例文・類語

じしん‐ばん【自身番】

江戸時代、江戸・大坂などの大都会で、市中の警備のために各町内に置かれた番所。初め地主自らがその番にあたったが、のち、町民の持ち回りとなった。

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精選版 日本国語大辞典 「自身番」の意味・読み・例文・類語

じしん‐ばん【自身番】

  1. 〘 名詞 〙 江戸時代、町の四辻など所々に置かれた町内持ちの番所で警備すること。また、そこに詰めている人。町内の地主が自身で詰めたので、この呼称が生まれたが、のちには大家(地主の差配人)や町でやとった書役自身番親方ともいう)が詰めた。江戸を主としたが、京都、大坂などにも設けられたことがあった。
    1. [初出の実例]「鑓梅や花ぬす人の自身番〈氏重〉」(出典:俳諧・犬子集(1633)一)
    2. 「一惣年寄并一町之年寄、如有来自身番可致用捨事」(出典:御捌書写記‐慶安元年(1648)一二月一六日)

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「自身番」の意味・わかりやすい解説

自身番
じしんばん

江戸時代、武家地辻番(つじばん)に対し、大都会の町地に設けられた自警組織の一つ。初め地主らが町内を守ったので、この名称が生まれたという。またそのための常設小屋をもさし、これは自身番屋、番屋とよばれた。江戸では、当初の地主自身の勤番が、のちには地主、店借(たながり)の別なく町民の回り持ちになり、大通りの角地に、決まりでは9尺2間の番屋(実際には2間に3間ぐらいはあったという)に詰めた。原則として1町1番屋で、1850年(嘉永3)には江戸に994軒を数えた。普通は、家主2人、番人1人、店番2人の5人で、昼間は半減して、2~3人。小さな町では家主、番人、店番各1人の3人であった。事務は町触(まちぶれ)の伝達や火の番が主で、交代で町内を巡回して警備に努め、不審な人物がいれば、捕らえておいて廻(まわ)り方同心に引き渡した。番屋は、町同心が容疑者に対し予審を行う場所にも用いられた。

 1721年(享保6)に書役(かきやく)という町内の計算事務を行う職ができると、この書役や雇番人に町の仕事を代勤させるようになった。彼らには町からの給料ほかに店番銭(たなばんせん)が払われたため、町内負担のはずの番屋の修繕費用も番人の出費となる場合もあり、また番屋株と称する権利売買が行われたり、番屋に酒食を持ち込んで町内の寄合会合に使用する風潮に対し、たびたび綱紀の乱れが戒められた。とはいえ、町方の警備維持にこの自身番制度の果たした役割は大きく、1869年(明治2)まで続いた。

[稲垣史生]

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改訂新版 世界大百科事典 「自身番」の意味・わかりやすい解説

自身番 (じしんばん)

江戸の町々に設置された番所およびその勤務。はじめ家持町人が自身で警備にあたったが,のちには家守(やもり)が詰めるようになった。〈自身番屋〉は町の事務所でもあり,集会所でもあった。1698年(元禄11)に,ここで酒を飲んだり戸障子を立てることが禁止されている。また番屋は一時的な留置所でもあった。1718年(享保3)には家守の連日勤務は廃止され,非常時のみの勤務に変更された。
番所
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山川 日本史小辞典 改訂新版 「自身番」の解説

自身番
じしんばん

近世,村方や町方が設けて維持した共同体の集会・治安維持制度,あるいはその施設。公用・雑務の処理,火の用心,橋の上・河岸端の警備などにあたった。とくに都市域に広範にみられる。木戸番とは異なり,本来は百姓や町人自身が勤めた。江戸の中心部では町に居住している家持が少なかったため,家持町人の代わりに,町屋敷の管理者である家守(やもり)が勤めた。江戸全体で自身番屋(自身番が詰める番屋)は1850年(嘉永3)には994カ所存在した。その役割は,火の用心,橋の上・河岸端の治安維持などであった。

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百科事典マイペディア 「自身番」の意味・わかりやすい解説

自身番【じしんばん】

近世において家の主人がその成員とともに自身の家を防衛するために警戒にあたること,またその任務にあたる者。江戸などの大都市では家持が町内に居住せず町民が交替で番屋に詰め,町内の警察保安に当たった。1850年ころ自身番屋は江戸全体で990あったといわれる。

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「自身番」の意味・わかりやすい解説

自身番
じしんばん

番屋ともいう。江戸時代,市中を警戒するために設けられた番所。町内の雑務を処理したり,火の番にあたったりした。初めは家主または地主らが番組を決めて交代でつとめたので,この名で呼ばれたが,のちには番人を雇うようになった。

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世界大百科事典(旧版)内の自身番の言及

【辻番】より

…辻番所を設け,辻番人を置いたが,辻番という言葉は,その辻番所,辻番人の略称でもあるとともに,辻番をすることの意味ももっていた。江戸では武家方が設けたものを辻番,町方で設けたものを自身番と区別して呼んだ。江戸以外では必ずしもこのような区別をしていない。…

【火の見櫓】より

…定火消の櫓には昼夜の別なく2人の見張番が立ち,火災を発見するとつるした太鼓を打ち鳴らしたが,大名火消は板木(はんぎ),町方は半鐘であった。享保年間(1716‐36)には10町に一つずつ火の見櫓が設けられ,櫓のない町には自身番屋の上に火の見梯子が設けられた。防火策として火の見櫓は画期的なものではあったが,たとえ町方が先に火災を発見しても,定火消の太鼓が鳴らぬかぎり,半鐘を鳴らすことは許されなかったという。…

【夜警】より

…なお京都では,非人身分の番人が木戸番にあたっていた。このような恒常的なものに加えて自身番が行われる時がある。自身番とは本来,家持が自分で勤めることを原則としていた。…

※「自身番」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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