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江戸時代,町方に対し発せられた触(ふれ)。江戸幕府および諸藩の制定法は,触の形式で一般人民に公示され,町方へは町触として,その地の奉行が伝達した。江戸の場合,町奉行がこれを公布し,広い意味ではすべて町触と称したが,厳密には町奉行が専決的に発するもののみをいい,老中の命により,または老中にうかがいのうえ町奉行から出された触は惣触(そうぶれ)と呼んで区別した。狭義の町触(手限(てぎり)町触)には,惣触を施行するための細則や,具体的な行政措置に関するものが多い。いずれも町年寄,組町の年番名主を通じて,各町の名主あるいは月行事(がちぎようじ)に示された。名主・月行事は町内の地主・家主に伝え,地主・家主より地借・店借などへと達せられる。重要な触のときは,請書連判(うけしよれんぱん)をとって周知徹底せしめた。大坂その他の都市においても,ほぼ同様の方法で公布,伝達された。江戸の町触集として《正宝事録》などがあり,大坂,京都の町触は,《大阪市史》《京都町触集成》に集録されている。
執筆者:加藤 英明
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
江戸時代に、幕府や各大名から領内の町の住民に発せられた法令。幕府領では直轄都市に置かれた町奉行(まちぶぎょう)から、支配する町々の町人に出された。ただし、厳密には町奉行が自身の権限で発するものを「町触(手限(てぎり)町触)」とよび、老中の命によるものや老中に伺いのうえで発したものは「惣触(そうぶれ)」とよんで区別した。町触の数が多くなるにつれて、毎年同じ時期や内容の触は「定式(じょうしき)町触」ともよばれている。町触の内容は時代とともに複雑になり、江戸の例をみても喧嘩(けんか)口論の禁止、火の用心など種々の規制が行われていたことがわかる。触の伝達は、町奉行所に各町の代表者(町名主や月行事(がちぎょうじ))を集めて申し聞かせるのが原則であったが、江戸では18世紀ころから重要な触以外は町年寄役所から通知された。触の通知があると、各町ではこれを写し取り、重要なものは自身番屋に張り出したり、家守(やもり)(家主)が地借(じがり)や店借(たながり)の町人に読み聞かせたりして徹底することもあった。また町支配の名主や家主(町役人)から確認の連判を出すこともあり、町中連判や店連判によって下層の町人への確認も行われている。しかし、町人がこれを守らないことも多く、おりにふれて同一の触が出されることも少なくなかった。
[吉原健一郎]
『吉原健一郎著『江戸の町役人』(1980・吉川弘文館)』
江戸時代に幕府・諸藩が町方に対して布達した法令。江戸では,老中から町奉行を通じて出される惣触(そうぶれ)と,町奉行の権限で発せられる狭義の町触の2種類があった。町への伝達方法は,町の代表者を町奉行所によびだす場合,町の月行事が町年寄役所で筆写する場合,また口頭で伝達したのち写をとる場合などがあった。この後,町役人によって町の構成員に伝えられ,町中連判の請書を提出する必要があった。毎年同内容の町触が町年寄の責任で発せられた(定式(じょうしき)町触)。京都では,個々の町や職人・商人の仲間組織の願をうけて発令される願触もあった。
出典 山川出版社「山川 日本史小辞典 改訂新版」山川 日本史小辞典 改訂新版について 情報
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