家主(読み)イエヌシ

デジタル大辞泉 「家主」の意味・読み・例文・類語

いえ‐ぬし〔いへ‐〕【家主】

その家の主人
「早速神田御宅を尋ねて見ると、早や―の二三人も代って居るので」〈鉄腸雪中梅
貸家貸間の持ち主。おおや。やぬし。
[類語]家主やぬし大家オーナー

や‐ぬし【家主】

貸し家所有者。いえぬし。おおや。
一家の主人。あるじ。
[類語]家主いえぬし大家オーナー

いえ‐あるじ〔いへ‐〕【家主】

一家の主人。いえぬし。
「かの―二十八日に下るべし」〈浮舟

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精選版 日本国語大辞典 「家主」の意味・読み・例文・類語

いえ‐ぬしいへ‥【家主】

  1. 〘 名詞 〙
  2. その家の主人。いえあるじ。いえぎみ。
    1. [初出の実例]「家ぬしなれば、よく知りてあけてけり」(出典:能因本枕(10C終)六)
    2. 「あやしの宿りにたち寄りては、其いゑぬしがありさまを問ひきく」(出典:増鏡(1368‐76頃)九)
  3. 女主人。主婦
    1. [初出の実例]「もはやそのままこれの家主(イヘヌシ)になれ」(出典咄本醒睡笑(1628)六)
  4. 貸家の持ち主。
    1. [初出の実例]「さて、人の家かりて〈略〉いと安き事とて家主(イヱヌシ)なん其の程の事は用意しける」(出典:発心集(1216頃か)三)
  5. 近世地主や貸家の持ち主の代わりに、貸家の世話や取り締まりをする者。やぬし。大家。差配(さはい)。⇔店子(たなこ)
    1. [初出の実例]「店子(たなこ)の居候ふに家主が馬鹿にされちゃア、組合に済まないぞ」(出典:歌舞伎・四天王楓江戸粧(1804)二番目)

いわらじいはらじ【家主】

  1. 〘 名詞 〙 中流家庭の主婦。後には、特に農家の主婦をさす場合が多い。
    1. [初出の実例]「引すゑて三の口をもすはるべし やすくよろこぶこれの家主(イハラジ)」(出典:俳諧・正章千句(1648)三)

家主の補助注記

「いへあるじ(家主)」が変化したもの。なお、「いへぬし(家主)」が「いはうじ」「いはらじ」と変化した、また、「いへとじ(家刀自)」を「家童子」と表記したものの誤読による、などの諸説がある。


か‐しゅ【家主】

  1. 〘 名詞 〙 家の主人。一家の長。
    1. [初出の実例]「漢主若知家主意、山声定愧水声遙」(出典:本朝麗藻(1010か)下・夏日陪於員外端尹文亭同賦泉伝万歳声詩一首〈藤原為時〉)
    2. 「家主(カシュ)に此女を乞請」(出典:評判記色道大鏡(1678)一二)
    3. [その他の文献]〔墨子‐兼愛・中〕

や‐ぬし【家主・屋主】

  1. 〘 名詞 〙
  2. その家の主人。いえぬし。
  3. 貸家、貸間の持主。また、貸家の管理をする者。大家。いえぬし。⇔店子(たなこ)
    1. [初出の実例]「つまなしと家主やくれし女郎花〈荷兮〉」(出典:俳諧・曠野(1689)七)

いえ‐あるじいへ‥【家主】

  1. 〘 名詞 〙 一家のあるじ。いえぬし。家の君。
    1. [初出の実例]「よべより三日の家あるじ」(出典:宇津保物語(970‐999頃)蔵開下)

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「家主」の意味・わかりやすい解説

家主
やぬし

「いえぬし」とも読む。江戸時代の町人階層の一つ。土地家屋の所有者(地主(じぬし)、家持(いえもち))をさすが、管理人である家守(やもり)(大家(おおや))を含んでいう場合もある。

[編集部]

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世界大百科事典(旧版)内の家主の言及

【家守】より

…日本近世において,主人不在の家屋敷を預かり,その管理・維持に携わる管理人のこと。家主(やぬし∥いえぬし),屋代(やしろ),留守居(るすい),大家(おおや)などとも呼ばれた。日本の近世社会は,家屋敷の所持者である家持を本来の正規の構成員として成立していたが,なんらかの事由で家屋敷の主人が長期にわたって不在となる場合,不在中の主人に委嘱され,家屋敷の管理・維持にあたるのが,家守の基本的性格である。…

【家持】より

…家屋敷は,イエの基礎となる家屋と,その敷地とからなるが,家持はこの両方を同時に所持している。これに対して,自分は他所に住み,家屋敷を有する者を家主,敷地のみを有する者を地主という。また,家屋敷の全部または一部を借りて居住する者を借家・店借(たながり),敷地を借りて家屋は自分で有する者を地借とよぶ。…

【裏店】より

…したがってこのような裏店が密集した地区の人口密度はかなり高かった。江戸の場合,地主が屋敷地内に住む(家持または居付地主と呼ばれた)ことは少なく,多くは家守(やもり)(大家,家主ともいう)が屋敷地内に住居を構え,地代・店賃徴収を代行し,また裏店住人の人別改め(戸籍調べ)や町触(法令)通達などを行い,棒手振(ぼてふり)などの小商人,大工・左官などの職人,そして日雇いなどと呼ばれた下層単純労働者など,裏店住人の事実上の支配者となっていた。長屋【玉井 哲雄】。…

【家守】より

…日本近世において,主人不在の家屋敷を預かり,その管理・維持に携わる管理人のこと。家主(やぬし∥いえぬし),屋代(やしろ),留守居(るすい),大家(おおや)などとも呼ばれた。日本の近世社会は,家屋敷の所持者である家持を本来の正規の構成員として成立していたが,なんらかの事由で家屋敷の主人が長期にわたって不在となる場合,不在中の主人に委嘱され,家屋敷の管理・維持にあたるのが,家守の基本的性格である。…

※「家主」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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