第三者の委託によって,個人または法人の経歴,人物,性向,行状,財産状態,事業の種類・性質,組織・経営・業務の現状などを調査し,その結果を報告することを業務とする機関。結婚や就職に際して,個人の身上を調査することもあるが,本来の主要業務は,商取引上の相手方の信用状態を調査することにあり,そのため商業興信所(mercantile)credit agencyともいう。18世紀後半にイギリスで発生したとされるが,ひろく普及するようになったのは,イギリス人のペリーが開業した1830年ごろからで,それ以降は,おりしも経済恐慌が兆していたアメリカにもひろがり,さらに資本主義経済が発展するにしたがって,その必要性が高まった。現在,欧米における興信所の社会的地位はきわめて高い。日本では,1892年に外山修造が主唱して大阪西区土佐堀に設立した商業興信所が最初で,その後は96年に東京興信所が,1900年に帝国興信所(1981年帝国データバンクと改称)が,それぞれ設立されるに至っている。現在,世界的には,アメリカのダン・アンド・ブラッドストリート社Dun & Bradstreet Corp.,ドイツのシンメルフェング社Schimmelpheng Gmb.H.などが権威ある興信所であるとされている。
執筆者:加藤 秀俊
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
企業や個人の信用調査をする機関。1830年イギリス人ペリーによって始められたといわれる。日本では外山脩造(とやましゅうぞう)が1892年(明治25)大阪で開業した商業興信所が最初である。続いて96年には東京興信所、1900年(明治33)には帝国興信所が設立された。商工業などの取引業務では、自社のみで行う相手方の調査には遺漏と限界があるので、信用と組織のある興信所への依頼度は高い。情報形態の多様化で、マーケティング・リサーチ、データ・バンク、経営コンサルタントを業とするものも多くなったが、広義にはこれらも興信所といえる。一方、個人信用調査も多岐化して、相手人物の財産状態、経歴調査から、取引を離れた素行調査、家出人の捜索、尾行報告などにも及び、この方面の業務に重点を置くものには「探偵社」と名のるものも多い。
[梶 龍雄]
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
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