舶用機関(読み)ハクヨウキカン

デジタル大辞泉 「舶用機関」の意味・読み・例文・類語

はくよう‐きかん〔‐キクワン〕【舶用機関】

船舶を進行させる原動機として用いられる機関

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精選版 日本国語大辞典 「舶用機関」の意味・読み・例文・類語

はくよう‐きかん‥キクヮン【舶用機関】

  1. 〘 名詞 〙 船舶の原動機として用いられる機関の総称蒸気機関蒸気タービンディーゼル機関などがある。〔最新百科社会語辞典(1932)〕

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改訂新版 世界大百科事典 「舶用機関」の意味・わかりやすい解説

舶用機関 (はくようきかん)

船の推進の機能を発揮させる目的に使われる機械の総称。推進器を駆動する役割をもつ主機関(舶用主機)と,ボイラー(主ボイラー,補助ボイラー),推進装置(推進器,軸系),発電装置,機関部補機(各種ポンプなど)などの主機関の運転に必要な補助機械(舶用補機)ならびに付属する諸装置で構成される。このうち主機関(主ボイラーを含む)は,主機関がディーゼルエンジンのものをディーゼル船,蒸気タービンのものを蒸気タービン船と呼ぶように,船の分類にも使われ,船を特徴づける主要な機械である。現在一般に使われているものとしては,ディーゼルエンジン(低速,中速および高速ディーゼルエンジン),蒸気タービン,ガスタービン,原子力機関,電気推進機関がある。蒸気タービンは1基で7万馬力くらいを出すことができるので,従来は軍艦のほか大型客船,大型コンテナー船などの高速船,あるいは大型タンカーなどの大出力を必要とする船に使われてきたが,ディーゼルエンジンの大出力化(低速ディーゼルエンジンで1基最高5万馬力程度)に伴い,商船ではしだいにディーゼルエンジンにおきかえられつつある(タンカーの場合,タンクの洗浄に蒸気を使用することも蒸気タービンを主機関に用いる理由の一つであったが,これも蒸気を使わない原油洗浄が採用されるようになっている)。また原子力機関,ガスタービンはもっぱら軍艦に使用されている。なお,電気推進機関というのは,原動機で発電機を駆動して発電し,この電気によって推進用電動機を動かす方式(電気推進)のことをいい,電気推進を用いた船を電気推進船と呼んでいる。一般には,砕氷船のような特殊目的以外にはほとんど使われない。

主機関の性能は船の運航経済性に大きな影響を及ぼす。このため主機関には,(1)燃料消費量が少なく,低質の燃料が使用できること,(2)信頼性が高く故障の少ないこと,(3)コストが安いこと,(4)取扱いや保守が容易で,維持費が安いこと,(5)運転に人手をあまり要しないこと,(6)重量が軽くかつ機関室の容積が小さくてすむこと,(7)振動や騒音が少ないことなどが要求される。とくに商船では(1)の燃料消費量はもっとも重要視される。機関の燃料消費量は,通常,1馬力・1時間あたりの消費燃料,すなわち燃料消費率(単位g/PS・h)で表される。ディーゼルエンジンの燃料消費率の改善は著しく,1950~70年代に160g/PS・h程度であったものが,現在では125g/PS・hに下がっており,これは舶用機関に限らずすべての熱機関中で最小の値になっている。蒸気タービンではこれに比べ50%以上高くなる。

 舶用機関に対する信頼性の向上もますます重要になってきているが,これは機関室の無人化の進展による乗組員数の減少に伴って,海上での修繕がほとんど不可能になってきているためである。また小人数で運転が可能であることも重要な要件である。
船舶自動化

舶用機関の蒸気機関から蒸気タービンへの転換は,1897年,C.A.パーソンズのタービニア号が34.5ノットの高速を出して蒸気タービンの優秀性を実証してから始まるが,わずか10年後には出力約2万馬力の蒸気タービン2基を備え,速力25ノット,総トン数約3万2000トンの豪華客船モレタニア号およびルシタニア号が登場している。現在の蒸気タービンは最高1基で7万馬力程度(タービン自体はさらに大馬力になるが歯車減速に限界を生ずる)の出力が出せる。通常は高圧タービン(5000~7000回転/min),低圧タービン(3000~5000回転/min)のほかに後進用タービンを組み合わせ,これを減速歯車によってスクリュープロペラに適する回転数(60~150回転/min)に合うように2段減速している。蒸気発生のための主ボイラーには,現在では重油だきの水管ボイラーが使われ,またかつては1基のタービンに多数のボイラーが使われたが,現在ではボイラーの性能が向上し,1タービン-1ボイラーがふつうである。タービンを出た蒸気は復水器に入れられ,海水で冷却されて復水する。蒸気タービンの利点は,大出力に適すること,粗悪な燃料でも使用できること,信頼性が高いことなどであるが,反面,付属装置が多くプラントの構成が複雑になり,また高度な精密加工技術を要する減速歯車装置が必要となる。

 ディーゼル船時代は,1912年に建造されたデンマークの貨物船セランティア号(1250馬力ディーゼルエンジン2基)に始まる。以後,主として貨物船用の主機関として多用され,現在では大型のタンカーを除けば商船のほとんどがディーゼル船となっている。これはディーゼルエンジンの燃料消費量が少ないことが主要な理由であるが,これに加えて過給方式(過給機)の確立によって大型船にも適用できる大出力(5万馬力程度)の機関がつくられるようになったことも見逃せない。舶用ディーゼルエンジンは,サイクル方式,排ガスの掃気方式,過給方式,シリンダーの配列など,いろいろの方式に分けられる。サイクル方式には,2回転で1回燃焼を行う4サイクル機関と,1回転で1回燃焼を行う2サイクル機関とがあり,前者は中・高速機関,後者は低速機関に用いられている。大型船には2サイクル低速機関が多く,これはプロペラに直結して使われる。4サイクル機関ではふつうの歯車で減速してプロペラを回す。過給方式は,排気ガスの余剰エネルギーで一種の小型ガスタービンを回し,それでブロワーを駆動して吸入空気を圧縮してシリンダーに送る方式である。これによって1.5~2倍くらいも馬力を増やすことが可能になる。また排気ガスの残りのエネルギーも排ガスボイラー(エコノマイザー)で有効に雑用蒸気として回収される。

 舶用ガスタービンは,航空用のガスタービンを転用したものが多い。特徴は何よりも軽量で大馬力が出せることである。原理は航空用と同様であるが,海水のしぶきを吸い込む関係上燃焼の温度をあまり高くできず,熱効率が劣るために燃料消費量が多くなること,また低質の燃料が使えないことなどが欠点である。

 このほか自動車用と類似のガソリンエンジンがモーターボートなどに使われるが,大馬力の必要な大型船に使われることはほとんどない。また過去に小型船で焼玉機関が盛んに使われたことがある。燃焼室内の赤熱されたいわゆる焼玉に石油をふきつけて点火する方式で,日本でも,小型ディーゼルエンジンが普及するまでの一時期に10~20馬力程度の小型船や漁船に使われた。燃料に重油が使用でき,構造も簡単であるが,燃料消費量が多く,取扱いに熟練を要し,重量も大きい。

推進器には現在ほとんどスクリュープロペラが使われる。羽根が固定のものと,船の速力に応じて角度を変えることができる可変ピッチプロペラとがある。現在のスクリュープロペラは1基で7万馬力程度の馬力を吸収することができ,また効率も比較的高く,今後これに代わるような推進方式はまず現れないと考えられる。ジェット推進(ジェット推進船)も通常の船舶のような低速域では効率は悪い。

 軸系は,主機関の動力を推進器に伝えるための軸で,ふつう,中実の鋼製のものが使われる。
プロペラ

舶用機関の範囲には主機関のほかに機関部補機として海水,清水,燃料用のポンプや各種配管装置などがある。海水ポンプには,船の喫水や傾斜を調整するバラストポンプ,冷却水ポンプなどがあり,また清水や飲料水用のポンプなどもあるが,これらには渦巻ポンプが多用される。燃料を移送する目的などには燃料ポンプとしてピストンポンプなども使われる。発電装置にはディーゼルエンジンを用いたディーゼル発電機,蒸気タービンによるタービン発電機などがある。また船内で蒸気を発生するために,ディーゼル船では補助ボイラーや前述の排ガスボイラーなどを備えている。
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百科事典マイペディア 「舶用機関」の意味・わかりやすい解説

舶用機関【はくようきかん】

船を航走させるのに必要な原動機設備。狭義には推進器軸を駆動する主機だけをさし,この場合,補助原動機や主機運転に必要な付属機器,その他の機器類を一括して補機と呼ぶ。主機には,今日では蒸気機関は使われず,蒸気タービンディーゼルエンジンがほとんどである。いずれも狭い船内に設けるため,体積・重量が小さく,動揺・振動に耐え,信頼性の高いことなどが必要。

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「舶用機関」の意味・わかりやすい解説

舶用機関
はくようきかん
marine engines

船舶用原動機の総称で,主機関,ボイラ,補助機関などで構成されている。主機関には主として蒸気機関か内燃機関が使われる。蒸気機関は蒸気タービン,内燃機関はディーゼル機関が代表的なもの。ディーゼル機関は熱効率の点では蒸気タービンよりすぐれており,大出力化も進んでいる。このほか原子力を舶用機関として用いることも試みられている。

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