気化性の悪い石油(灯油、軽油、重油)を燃料として用いる機関。焼き玉エンジンともいう。燃料をシリンダー内に噴射して燃焼させる。1890年ごろイギリスのハーバート・アクロイド・スチュアートHerbert Akroyd Stuart(1864―1927)が実用化した機関で、シリンダーヘッドに蒸発器(焼き玉)をもち、燃焼の熱で赤熱に保たれる。焼き玉機関は、始動時に外から焼き玉を加熱し、赤熱状態になったときに焼き玉に燃料を噴射、気化、燃焼させるもので、運転開始後は外からの加熱なしに燃焼熱で赤熱状態を保つ。スチュアートの機関は4行程機関であったが、焼き玉の加熱には、毎回爆発のおこる2行程機関のほうが有利であり、1900年ごろよりクランク室圧縮の2行程機関になった。圧縮はディーゼルエンジンの半分程度の約20気圧で、ガソリンエンジンより少し高い程度である。燃料もディーゼルエンジンのように噴霧にする必要はなく、ただ燃料を焼き玉の赤熱した壁に当てればよい。したがって製造、運転ともに容易で運転経費も安いため小型船舶などに多く使用された。しかし熱効率は低く、ガソリンエンジン以下のため、1950年ごろから高い熱効率の小型ディーゼルエンジンの発達とともに使用されなくなった。
[吉田正武]
『John Robert DayEngines ; The Search for Power(1980, The Hamlyn Publishing Group Ltd.)』
焼玉エンジンともいう。2サイクル式クランク室掃気方式の内燃機関で,シリンダーヘッドに着火および燃焼のための焼玉ignition ballをもつ点が構造上のおもな特徴である。バーナーなどであらかじめ焼玉部を加熱しておき,燃料を噴射すると,燃料と空気の混合気は表面着火により燃焼して機関が始動し,その後も焼玉によって各サイクルの燃焼が行われて運転が継続される。ガソリンエンジンやディーゼルエンジンに比べ,構造が簡単で,取扱い容易で,しかも重油などの低質燃料が使用できることから,かつて船舶用,とくに漁船用の原動機として賞用されたが,本質的に経済性に勝るディーゼルエンジンの進歩,普及により急速にすたれた。
執筆者:酒井 宏
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… このほか自動車用と類似のガソリンエンジンがモーターボートなどに使われるが,大馬力の必要な大型船に使われることはほとんどない。また過去に小型船で焼玉機関が盛んに使われたことがある。燃焼室内の赤熱されたいわゆる焼玉に石油をふきつけて点火する方式で,日本でも,小型ディーゼルエンジンが普及するまでの一時期に10~20馬力程度の小型船や漁船に使われた。…
※「焼玉機関」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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