船舶の構造や設備を検査し,その性能を保証する業務を行う団体を船級協会という。船舶の売買,チャーター,積荷を長期にわたって保証する場合などのために第三者機関である船級協会がその船の性能を保証した船級証書を発行し,またその登録名簿を刊行する。船級の有無は船舶や積荷の保険料にも関係する。したがって船級協会の主要業務は船舶の検査であって,検査員を造船所などに常駐または随時派遣して船舶の検査を行う。検査には,船舶を建造開始する以前から図面承認を行い,完成するまで検査を行う新造検査,一定期間ごとに行われる定期検査および売買や損傷発生の場合に行われる臨時検査などがあり,検査のための基準や規則集も制定されている。また現在においては,このような船舶検査の基本業務以外に,海難に関する統計業務,損傷事故に対する調査や研究業務,国際的な安全基準作成への参加なども行われている。
世界でもっとも古い船級協会はイギリスのロイド(船級協会)Lloyd's Register of Shippingであり,16世紀ころ,ロンドンのロイドEdward Lloydのコーヒー店で海運関係者が集まり,取引や情報交換を行ううちに会員組織が生まれ,やがて保険業務のための船級協会という組織になったといわれる。19世紀に至って各国でそれぞれ船級協会が設立され,イギリスではもう一つの協会ブリティッシュ・コーポレーションBritish Corporation Registerが1890年に設立されたが,やがて第2次世界大戦後はロイドに併合された。現在のおもな船級協会は表のとおりであるが,このように海運産業をもつ国がそれぞれ一つずつの船級協会をもつようになったのは,各船級協会がその国の海運政策や船舶の安全取締業務と直接間接に関連が生じてきたためであって,本来の保険業務から変わってきたためと考えられる。
日本では船級協会として99年創立の日本海事協会があり,鋼船規則などの種々の規則を定め,船用材料などの承認を行い,また運輸省の行う船舶の検査の一部を代行している。
→船級
執筆者:翁長 一彦
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
非営利の法人で、〔1〕船の構造や設備に関する規則を制定する、〔2〕それに従って船を検査し、船級を与え、船級原簿に登録し、船級証書を発行する、〔3〕登録した船の船名録を発行する、などの業務を行う。
船やその積み荷については古くから保険制度が発達し、かつては現在の家屋の保険と同様に、保険業者が対象となる船の品質を調査して判定していた。船の構造や設備が専門化し隻数も増加するにつれて、調査や判定を独立の機関で行うようになったのが船級協会の始まりである。イギリスのロイド船級協会は世界でもっとも古く、1760年に設立されている。そのころは海運関係の情報を提供し、船名録を発行する程度であったが、やがて独自の造船規則をつくり、船を検査し、資格や等級を与え、船名録に記載するという制度を創設した。その後、世界の主要海運国はこれに倣って船級協会を設けるようになった。日本では1899年(明治32)帝国海事協会が創設され、1946年(昭和21)日本海事協会と改称、造船、海運の発展に伴って業績を拡大してきた。船級協会は、船主、造船業者、保険業者、監督官庁などの代表者によって公平に運用されている。
世界のおもな船級協会は、次のように略称されている。LR(イギリス・ロイド船級協会Lloyd's Register of Shipping)、ABS(アメリカ船級協会American Bureau of Shipping)、BV(フランス船級協会Bureau Veritas)、NK(日本海事協会Nippon Kaiji Kyokai)。また、船の性能を表示する船級付記符号も各国別にあり、互いに認め合っている。たとえば「100A1(ハンドレッドAワン)」は、LR船級で船体検査に合格したことを示す。また「LMC」は同じく機関が合格したものであることを示している。前記二例と同じ意味のものを、NKでは「NS」および「NMS」の符号で示している。
[茂在寅男]
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
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