船舶が安全に航海できるだけの構造や設備,または性能を有しているかどうかを調べ,それらが一定の基準に達していることを承認するための検査。外国航路に従事できる船舶は国際的に流通する商品であり,また国際間で貨物を輸送するため,船舶検査の基本的事項や基準は国際的にほぼ統一されている。船舶検査には国が行う検査と船級協会の行う検査とがあるが,船級協会は国の検査の一部も代行する場合があり,また小型船に対しては自治体や検査団体が検査を行う場合が多い。
国際的な船舶の基準は,海上人命安全条約,海洋汚染防止条約などの各種の国際条約で定められるため,これに加盟している主要海運国ではそれに従った国内法を定めて船舶検査を行っている。また船級協会は船級船としての基準を満たしていることを検査するが,その内容には国の基準と類似するものがあるため,国によって船級協会の検査に合格した船級船の検査を省略する場合がある。
日本の場合には,船舶安全法と海洋汚染及び海上災害の防止に関する法律(いわゆる海洋汚染防止法)とが船舶検査の主要な点を定めており,船体,機関をはじめ十数項目の設備や用具について検査が行われる。検査証書の有効期間は4年間であり,検査には4年ごとに実施される定期検査,その中間で実施される中間検査,改造などが行われたときの臨時検査および必要なときにとくに実施する特別検査がある。ふつうの船ではその建造時にまず検査を受ける必要があり,この製造検査が最初の定期検査となる。また量産型の製品や備品には型式承認という制度があり,承認された型式のものは,その後は検定と呼ばれる簡単な抜取試験を受けるだけで検査が省略される。長さが12m未満の船の検査のためには小型船舶検査機構という特殊法人組織があり,その検査の内容は大型船に比べて簡略化されている。日本の船級協会である日本海事協会は,国が行う船舶検査業務の一部を代行できることとなっているが,旅客船とその他船舶の救命設備,消防設備,居住設備,衛生設備,航海用具など,人命の安全に直接関係する重要な設備は必ず国が検査を行わなければならない。
執筆者:翁長 一彦
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
船舶の安全のために行われる船体、機関、設備および満載喫水線に関する検査。船舶安全法に基づいて国(各地の運輸局)が行うが、旅客船以外で日本海事協会の船級をもつ船は、特定の検査を除き合格したものとみなされる。長さ30メートル以上の船を建造するときは製造者である造船所が製造検査を受ける。製造工程でなければ不可能な船体各部の溶接や組立ての検査、水密区画の水圧試験、主機関はじめ各種機械・設備の試験などがある。この製造検査は各新造船ごとに行われる点が自動車や航空機の型式承認制度と大きく異なる。船が完成すると船舶所有者が第1回定期検査を受け、合格すると船舶検査証書が交付されて航行が許可される。その後は4年目ごとに、定例的な検査のなかでもっとも厳重な構造・設備全般の定期検査が行われる。また、定期検査の間には船の種類により1年または2年ごとの中間検査がある。以上の定例的な検査のほかに、臨時検査、臨時航行検査と特別検査がある。臨時検査は、重要な改造や修理、満載喫水線の変更などを定例的な検査の時期を外れて行う場合に受ける。臨時航行検査は、新造船のように船舶検査証書をもたない船や、たとえば受検中で証書の効力が停止されている船に必要である。特別検査は、たとえば類似した条件の船が保守管理が不十分なため事故が多発するようなときに、船舶の種類や大きさなどの範囲を限定公示して行う。
[森田知治]
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
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