船の構造や設備あるいは性能が一定の基準にあることを証明するため,船級協会が一定の期間船に与える資格あるいは等級を船級という。船舶は不動産と同様に売買,貸借が行われ,また保険の対象となる。さらに荷主に対しては安心して荷をまかせてもらえることを示す必要がある。これらの場合に,関係する当事者に対して船舶が一定の基準に適合していることを証明するものが船級であって,船級を与えられた船を船級船(クラスボート)と呼ぶ。海運業者,保険業者,荷主らは船級の有無やその内容によって船の状態や性能を知ることができるため,船を実際に調べなくても売買やチャーターを行い,保険をつけ,または長期にわたって荷を保証したりすることができる。多くの船は自国の船級協会の船級を取得する場合が多いが,荷主の要求や船主の考えにより他国の船級を取得する場合もあり,また二つ以上の船級をとることもある。船級協会により船級の内容は少しずつ異なるが,どの船級でも別に順位があるわけではなく,船級符号に航路の制限とか用途が付記されるだけである。しかし製造検査と称して建造開始前から図面承認を受け,完成するまで検査が行われたものはもっとも信頼できる船であり,これが最高船級といわれる。各船級協会ではこのような船級を独特な符号で表している。
日本の船級協会である日本海事協会の船級は,基準に達している船体に対してNSの船級符号が与えられ,機関に対してはMNSの船級符号が与えられる。製造検査の符号は*であり,したがって最高船級はNS*MNS*となる。さらにかっこ付きの付記として航路制限,用途などをつけ,例えば(Coasting Service)は航路を沿海区域に制限したものであり,(Tanker,Oils-Flashing Pointbelow 65℃)は用途を引火点65℃未満の油類を運ぶタンカーに制限したものを意味する。近年の大型優秀船ではM0という付記をつけるものが多いが,これをエムゼロと呼び機関の無人化運転ができることを意味する。一般の外航大型船は24時間3交替で当直が行われており,機関室に常時少なくとも2名の当直がいなければならないが,M0の船級船は夜間まったく無人でエンジンを動かすことができ,エムゼロ船という言葉も使われている。
船級協会の中でもっとも古い歴史を有するイギリスのロイドでは,船体に対して100AまたはAの船級符号を与え,機関に対してLMCを,艤装(ぎそう)に対して1を,製造検査に対してはの各符号を与えている。船体については二つのランクがあるが,外航大型船でAだけの船はあまりないようである。最高船級は100A1LMCということになる。また日本海事協会のM0に相当するものにUMSという付記がある。
以上の例のように船級はクラスとはいっても等級という意味よりは資格という意味が強く,格差は製造検査による船級か就航後に移籍入級したものかによる。古くなった船や損傷して補修した船に対しては,その程度に応じて,期限をはじめ種々の制限が付記されるため,自然に格差が生ずることとなる。
→船級協会
執筆者:翁長 一彦
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船級協会が協会の規格に合格した船に与える等級。船級を取得するかしないか、またどの船級協会を選ぶかは船主の自由である。日本の商船は大部分が日本海事協会の船級をもっているが、同時に他の船級をもつ船もある。検査は船体、機関、艤装(ぎそう)品によって行い、船級が船級符号によって示される。各国船級協会によって別の符号を用いるが、国際的に認め合っている。船級をもつ船は船級船(クラスボート)とよばれ、保険や売買の際に有利な扱いを受ける。また法規上も、日本では船舶安全法第8条によって、消防、居住、衛生、航海用具の各設備のほかは、管海官庁の検査に合格したものとみなされる。
[茂在寅男]
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