色素失調症(読み)しきそしっちょうしょう(英語表記)Incontinentia pigmenti

精選版 日本国語大辞典 「色素失調症」の意味・読み・例文・類語

しきそしっちょう‐しょうシキソシッテウシャウ【色素失調症】

  1. 〘 名詞 〙 神経皮膚症候群一つ生後ただちに、あるいは二、三歳までに、網目状あるいは星形をした青灰色の斑紋下半身にでき、赤くなったり、腫(は)れたり、水ぶくれができたりするが、だんだん色はあせる病気遺伝性疾患女児だけに発現する。

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六訂版 家庭医学大全科 「色素失調症」の解説

色素失調症
しきそしっちょうしょう
Incontinentia pigmenti
(皮膚の病気)

どんな病気か

 X染色体優性遺伝で女児に発症しやすいまれな母斑症(ぼはんしょう)です。男児では致死的なので流産例が多いのですが、時に発症例がみられます。

 皮膚の変化は成長とともに4期に分けられます。

 第1期(炎症期)は出産直後に水疱(すいほう)膿疱(のうほう)が多くみられ、かさぶたになっていきます。第2期(いぼ状、苔癬期(たいせんき))は生後数週から数カ月に水疱膿疱に続いて硬い丘疹(きゅうしん)(直径数㎜の盛り上がった皮疹(ひしん))が多発してきます。第3期(色素沈着期)は生後3~4カ月ころに褐色渦巻きや線状の模様を描いたような色素沈着がみられます。この状態はかなり長期間続きます。第4期(色素沈着消退期)は4~5歳ころから色素沈着が消えていくようになり、時に逆に白く抜ける(脱色素斑(だつしきそはん))こともあります。

 これらの皮膚症状に加え、毛の異常(脱毛、縮れ毛)、爪の異常(爪甲(そうこう)欠損、発育不全)、眼の症状(白内障(はくないしょう)緑内障(りょくないしょう)盲目、網膜変化)、歯牙(しが)の欠損、歯牙の発育不全、骨症状(頭蓋変形(とうがいへんけい)小人症(しょうじんしょう)合趾症(ごうししょう)多指症(たししょう))、知能発育不全、てんかんなど、さまざまな異常がみられる場合があります。

検査と診断

 皮膚の特有の変化と経過で診断はつきます。母親に同じ症状があればさらに診断は容易ですが、大きな異常がない場合、皮膚の変化が成長とともに消えていくので気づかないケースもあります。

治療の方法

 遺伝病のため根本的治療法はなく、それぞれの皮膚症状に応じて、外用療法を行って皮膚の保護に努め、さまざまな臓器の変化に対しては対症的に対応します。

病気に気づいたらどうする

 生後まもなく気づくことが多い疾患です。皮膚の保護を図りつつ、あとで出てくる各種の症状に対応していきます。

安田 浩

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家庭医学館 「色素失調症」の解説

しきそしっちょうしょう【色素失調症 Incontinentia Pigmenti】

[どんな病気か]
 新生児のころ、からだに小さな水疱(すいほう)が線状または渦巻(うずまき)状に並んでできる病気です。遺伝性疾患と考えられています。
 女児に多く、生後すぐ、あるいは2週間以内に水疱が現われ、数か月間続きます(第1期または水疱期(すいほうき)という)。その後、自然にかさぶたになったり丘疹(きゅうしん)になり(第2期)、さらにその後、帯状(おびじょう)、渦巻状、大理石模様状など特徴のある形の色素沈着を示すようになります(第3期)。その色は褐色または灰褐色のことが多く、色素失調症という病名も、この時期の特徴に与えられたものです。1歳以後、4~5歳にいたるまでに自然に消退します(第4期)。
 合併症として、頭部毛髪の異常(出現率33%)、ついで先天性白内障(せんてんせいはくないしょう)や斜視(しゃし)などの目の異常(同31%)がよく現われます。骨や歯の異常、中枢神経系(ちゅうすうしんけいけい)の異常なども、ときに報告されていますので、全身的な検査を受けることをお勧めします。
 通常は4~5年で自然に消えますから、治療は対症療法だけですみます。

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「色素失調症」の意味・わかりやすい解説

色素失調症
しきそしっちょうしょう
incontinentia pigmenti

ブロッホ=サルツバーガー症候群ともいう。伴性優性遺伝する疾患で,ほとんど女児だけに発生する。皮膚病変は経過により以下の4期に分けられる。骨,脳,眼,歯,心臓などにも病変が生じるが,日本では皮膚以外の病変を欠くものが比較的多い。 (1) 第1期 (水疱期)  生後まもなく躯幹および四肢の中枢側に,米粒大ぐらいまでの炎症性小水疱が,線状,集簇性,播種状に多発する。対側性のことが多い。 (2) 第2期 (いぼ状・苔癬期)  小水疱の消失後,その部に一致していぼ状あるいは苔癬状の皮疹が生じる。 (3) 第3期 (色素沈着期)  角化性皮疹消失後に褐色の色素斑を生じ,これがあたかもはけでぬぐったように特有な列序性の配列をする。 (4) 第4期 (色素消失期)  上記の特有な色素沈着は4~5歳頃から自然に消失しはじめ,やがて完全消失にいたる。このほかの皮膚病変としては毛髪発育不全,皮膚萎縮,母斑発生などがみられる。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「色素失調症」の意味・わかりやすい解説

色素失調症
しきそしっちょうしょう

遺伝性の原因不明の疾患で、皮膚、神経系に主として病変がみられる。神経皮膚症候群の一つ。患者はほとんどすべてが女児である。

[川村太郎]

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