家庭医学館 「色覚異常(色盲/色弱)」の解説
しきかくいじょうしきもうしきじゃく【色覚異常(色盲/色弱) Color Blindness】
色覚異常とは、色に対する感覚が正常とは異なるものです。その程度によって色の識別がまったくできない色盲(しきもう)から、まぎらわしい色の識別だけができない色弱(しきじゃく)まであります。
色覚異常は先天性と後天性に大きく分けられます。
■先天色覚異常
健常人では、すべての色は赤(長波長光)、緑(中波長光)、青(短波長光)の3種類によってつくられていますが、先天色覚異常はこれらに問題があり、すべての色の知覚をつくり出すために必要とする色の数によって分類されています。つまり3種類のうち1種類が正常でない異常三色型色覚(いじょうさんしょくがたしきかく)、2種類だけで色が成立する二色型色覚(にしょくがたしきかく)、1種類だけの一色型色覚(いっしょくがたしきかく)に分けられます。
また、色覚検査での色のまちがいの性質により、先天赤緑異常(せんてんせきりょくいじょう)、先天青黄異常(せんてんせいおういじょう)、先天全色盲(せんてんぜんしきもう)などに分類されます。
これらのうちでいちばん多く、問題になるのは先天赤緑異常です。こうした異常には、本人は気づかないままで、色覚検査などで初めて発見されることが多いものです。
■後天色覚異常
生まれたときは正常の色覚であった人が、なんらかの病気にかかり、その症状として色覚の異常をきたしたものをいいます。
[原因]
先天性の色覚異常は、伴性劣性遺伝(ばんせいれっせいいでん)をすることがわかっています。発生頻度は男性に多く、全人口の約5%であるのに対して、女性は約0.2%にしかみられません。
後天性の色覚異常の原因には、眼底、視神経、脳などの視覚に関係する部位の障害によるものや、心因性のものなどがあります。この場合、色覚の異常だけでなく、視力の低下や、違和感のあるものの見え方などの症状を同時に自覚することがあります。
[治療]
先天色覚異常には、治療法はありませんが、生涯のある時期に正確な検査をして色覚異常の病型と程度を診断してもらい、的確な指導を受けることはたいせつです。
たいていの人は、代償能力と訓練によって問題なく日常生活を送り、ほとんどの職業につくことができますが、色覚の異常の程度によっては職業適正があって、色彩を直接取り扱う職業などでは制限が加わることもあります。色覚異常を理由に就職などを不必要に制限するような風潮がなくなってきたのは、たいへん好ましいことです。
色覚異常といっても、色に対する感覚が、色覚の正常な人とやや異なっているだけで、特別な配慮はいらないことが多いのですが、程度もさまざまなので、医師に相談して早めに状態を把握し、その後の対処を決めていくことが必要です。
後天色覚異常では、原因になっているものを治すことがたいせつで、治療法は原因によって異なります。
目の病気が原因である場合には、視力、視野、眼底などの眼科的検査が必要です。また、心因性のものでも眼科的検査を行ない、器質的な変化がないことを調べなくてはいけません。
したがって、ものの色が以前とはちがって見える、なんとなく見にくいなどの症状を自覚した場合には、眼科を受診して詳しい検査をしてもらうことがたいせつです。