精選版 日本国語大辞典 「艷」の意味・読み・例文・類語
えん【艷】
- 〘 名詞 〙 ( 形動 ) 自然や人事についての感覚的、官能的な美を表わす。
- ① はなやかな趣向美。華麗美。
- ② ( ①の美にみやびな風情が加わって ) 自然、事物、人事の優美、優雅なさま。やさしく上品な美しさ。
- [初出の実例]「えんにをかしうて侍りし、まめやかに聞えさせ侍らん」(出典:落窪物語(10C後)一)
- ③ ( ②の美にさらに深みが加わって )
- ④ 歌や詩で用いる語。
艷の語誌
類義語「うるはし」の、きちんと整っている、あるいは礼儀正しいという意味を帯びた華麗性に対し、きらびやかさに、親しみやすい王朝風風情、風流な趣向美を加えたのが「えん」で、和文脈中にも用いられた。俊成・定家は、それに注目し、中世以降の、歌論・連歌論・俳論では美的理念の一つとされた。
つや【艷】
- 〘 名詞 〙
- ① あざやかにうつくしく光ること。光沢。なめらかな表面にあらわれる光。
- [初出の実例]「濃き衣のいとあざやかなる、つやなど月にはえて、をかしう見ゆる、かたはらに」(出典:枕草子(10C終)三〇二)
- 「名月やことしは米に光沢のある〈夕山〉」(出典:俳諧・乙二七部集‐附録(1830‐44)下)
- ② 若々しい張りや弾力を感じさせる美しさ。うるおいのある強さ。
- [初出の実例]「つやと、にほひと、ゆふと、是、にたる物にて、名もかハリたり」(出典:わらんべ草(1660)四)
- ③ 好ましく、また、いとおしい情感をおこさせるような態度やことば。愛敬。しな。
- [初出の実例]「床にいりては、ふるもよしふらぬもよし。此日ふるふらぬは、其男のかかりとつやによるべきなり」(出典:評判記・色道大鏡(1678)四)
- ④ 相手をうれしがらせるようなことば。お世辞。追従。
- [初出の実例]「じつは心に、思ひはせいで、あだな、ほれたほれたの口先は、いかひつやでは有はいな」(出典:浄瑠璃・仮名手本忠臣蔵(1748)七)
- ⑤ 添えてとりつくろうもの。飾り。粉飾。おまけ。