日本大百科全書(ニッポニカ) 「ガルシア・マルケス」の意味・わかりやすい解説
ガルシア・マルケス
がるしあまるけす
Gabriel García Márquez
(1928―2014)
コロンビアの小説家。電信技師の子として3月8日サンタ・マルタ州アラカタカに生まれる。幼・少年時代を母方の祖父母に育てられ、強い文学的影響を受けた。ボゴタ大学法学部中退後はジャーナリストとして、国内およびベネズエラの新聞、雑誌、さらにはキューバの通信社プレンサ・ラティナに勤め、ローマ、パリ、カラカス、ハバナ、ニューヨークと移りながら小説と取り組む。その間、独自の文学空間として創造した架空の土地マコンドを舞台に、『落葉』(1955)、『大佐に手紙は来ない』(1961)、『ママ・グランデの葬儀』(1962)、『悪い時』(1962)などの短編・中編を発表。その後しばらく小説を離れ、メキシコで映画の脚本を書いて糊口(ここう)をしのぎながら、マコンドの創世から消滅に至る物語を構想、これが『百年の孤独』となって1967年に刊行されるや、スペイン語圏はもとより、世界中の注目を集め、この作品によってラテンアメリカ現代小説の代表的存在となった。以後、短編集『純心なエレンディラと無情な祖母の信じがたい悲惨な物語』(1972)で新しい方向を目ざし、1975年には『百年の孤独』と並び称される、独裁者を主人公とした『族長の秋』を発表、1981年に出した中編『予告された殺人の記録』も超ベストセラーとなり、大きな反響をよんだ。彼はまたルポルタージュや政治評論も数多く手がけている。このほかの主要な作品に、『ある遭難者の物語』(1970)、『青い犬の眼』(1973)、『コレラの時代の愛』(1985)、『迷宮の将軍』(1989)、『誘拐』(1996)、ノンフィクションに『戒厳令下チリ潜入記――ある映画監督の冒険』(1986)などがある。
1982年にノーベル文学賞を受賞した。1990年(平成2)新ラテンアメリカ映画祭出席のため来日。
[内田吉彦]
『高見英一訳『落葉 短篇集』(1980・新潮社)』▽『山陰昭子・神代修他訳『ガルシーア=マルケス全短篇集』(1983・創土社)』▽『ガブリエル・ガルシア・マルケスほか著、鼓直訳『ジャーナリズム作品集』(1991・現代企画室)』▽『堀内研二訳『ある遭難者の物語』(1992・水声社)』▽『旦敬介訳『十二の遍歴の物語』(1994・新潮社)』▽『旦敬介訳『愛その他の悪霊について』(1996・新潮社)』▽『旦敬介訳『誘拐』(1997・角川春樹事務所)』▽『鼓直訳『百年の孤独』(1999・新潮社)』▽『郷正文著『作家と無意識』(2000・審美社)』▽『野谷文昭訳『予告された殺人の記録』(新潮文庫)』▽『桑名一博他訳『ママ・グランデの葬儀』(集英社文庫)』▽『後藤政子訳『戒厳令下チリ潜入記――ある映画監督の冒険』(岩波新書)』▽『木村栄一訳『エレンディラ』(ちくま文庫)』▽『鼓直訳『族長の秋』(集英社文庫)』▽『旦敬介訳『幸福な無名時代』(ちくま文庫)』