知恵蔵 「菊池雄星」の解説
菊池雄星
花巻東高校3年次で迎えた2009年のプロ野球ドラフト会議では、西武、阪神、ヤクルト、楽天、中日、日本ハムの6球団から1位指名を受け、抽選に臨んだ西武の渡辺久信監督が当たりくじを引き当てて交渉権を獲得した。ドラフト直後から西武入団に前向きな姿勢を示し、11月21日、岩手県雫石町内のホテルで行われた入団交渉では、契約金1億円、出来高払い5千万円、年俸1千500万円と、いずれも現行制度下では上限最高額の内容で仮契約が結ばれた。西武の高卒新人としては1998年入団の松坂大輔(現レッドソックス)に並ぶ最高額でもある。背番号は17に決定。近く入団契約成立の見込み。
公式戦の全国デビューは、2007年に高校1年で出場した全国高等学校野球選手権大会の1回戦、対新潟明訓高校戦。試合は敗れたが、1年生とは思えない素晴らしい投球を見せた。
09年は選抜高等学校野球大会でチームを春夏通じて県勢初の準優勝に導く。同年夏の全国高等学校野球選手権大会ではベスト4に輝き、同大会3回戦では自己最速記録を更新した。球場表示は時速154km(甲子園大会球場表示左腕最速記録)であったが、ロッテスカウトのスピードガンでは時速155kmを記録したという。
高校1年の頃から米国プロ野球大リーグ(MLB)のスカウトが視察のため来日するなど米国からの注目も高く、ドラフト前には日本の12球団、MLB8球団と異例の面談を実施した。その後、進路を国内に絞ってドラフトを迎えた。国内プロ球団入りの希望を表明した記者会見では、「メジャーはひとまず封印し、日本一の投手になってから挑戦したい」と語り涙を見せた。その後のインタビューでは、「たくさんの方に迷惑をかけてしまった。(米国に未練はないが)1年生のときから見てくれていた(米国の)スカウトの方に申し訳なく、がっかりする姿を思い浮かべた」ときにポロッときたと説明した。
ドラフト後、同じ左腕で尊敬する工藤公康投手が16年ぶりに西武に復帰することが決定し、「工藤さんの本は読んだ。食事やトレーニング法など、いろいろ聞いてみたい」と話した。読書を趣味とし、ドラフト翌日には西武の渡辺監督の本も1冊読んだという。
(葛西奈津子 フリーランスライター / 2009年)
出典 (株)朝日新聞出版発行「知恵蔵」知恵蔵について 情報