葛尾(読み)かつらお

日本大百科全書(ニッポニカ) 「葛尾」の意味・わかりやすい解説

葛尾(村)
かつらお

福島県東部、双葉郡(ふたばぐん)にある村。阿武隈高地(あぶくまこうち)に位置する山村で、村域の大部分は山林原野が占め、林業への依存度が高かったが、木材消費の減少により林業は衰退傾向にある。近年、乳牛肉牛飼育や高原野菜栽培などにも力を入れているが、過疎化は進むばかりである。中心地区は落合で国道399号が通じる。五十人山、日山は阿武隈高原中部県立自然公園に含まれる。民俗行事に三匹獅子舞(ししまい)がある。面積84.37平方キロメートル、人口420(2020)。

原田 榮]

〔東日本大震災〕2011年(平成23)の東日本大震災では死者39人・行方不明1人、住家半壊31棟を数えた(消防庁災害対策本部「平成23年東北地方太平洋沖地震(東日本大震災)について(第159報)」平成31年3月8日)。あわせて東京電力福島第一原子力発電所の原発事故による放射能汚染によって避難指示区域(のちに避難指示解除準備区域・居住制限区域・帰還困難区域再編)となった。2015年から村役場で一部業務、2016年4月には全業務が再開され、2016年までに帰還困難区域に指定された北東部の野行(のゆき)行政区を除いて避難指示は解除された。しかし、2019年(令和1)7月1日時点で、県内避難者927人・県外避難者61人を数え、帰村者は326人(ほかに避難指示解除以降の転入者95人)にすぎない(葛尾村「避難・帰村の状況」)。

[編集部 2019年10月18日]


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改訂新版 世界大百科事典 「葛尾」の意味・わかりやすい解説

葛尾[村] (かつらお)

福島県東部,双葉郡の村。人口1531(2010)。阿武隈高地の山中にあり,高瀬川上流域を占める。周囲を標高600~1000mの山々に囲まれ,村域の約半分が山林原野からなる。中心の落合は高瀬川と支流の葛尾川,野川の合流点にある。第2次大戦前までは馬産,養蚕が中心であったが,戦後は開拓入植者が多く,村の北東部に柏原,野行,小出谷などの開拓集落が形成された。馬産,養蚕は戦後振るわず,近年,米や葉タバコ栽培も生産調整により減少し,肉牛,乳牛の飼育が中心となっている。五十人山は阿武隈高原中部県立自然公園の一部で,スズランツツジの大群落がある。近世末期,製鉄で財をなし葛尾大尽と呼ばれた郷士松本三九郎の屋敷跡がある。2011年3月の福島原発事故に際し,村役場機能を福島県会津坂下町,さらに同県三春町に移転した。
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