阿武隈高地(読み)あぶくまこうち

精選版 日本国語大辞典 「阿武隈高地」の意味・読み・例文・類語

あぶくま‐こうち ‥カウチ【阿武隈高地】

茨城県北部から福島県東部を貫き、宮城県の南部に広がる高原状の山地。明治初期に阿武隈川の名をとって高地名とした。最高峰大滝根山(一一九二メートル)。阿武隈山地

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デジタル大辞泉 「阿武隈高地」の意味・読み・例文・類語

あぶくま‐こうち〔‐カウチ〕【阿武隈高地】

東北地方南部から関東地方北部にかけて広がる高原状山地。最高峰は大滝根山で標高1192メートル。阿武隈山地。

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百科事典マイペディア 「阿武隈高地」の意味・わかりやすい解説

阿武隈高地【あぶくまこうち】

福島県東部から茨城県北部にまたがる地塊山地。西を阿武隈川久慈川で,東を太平洋に面する断層崖で区切られた南北約160km,東西約45kmの紡錘(ぼうすい)形を呈し,おもに花コウ岩,変成岩からなる。平均標高500mの隆起準平原面が広がり,最高峰大滝根山等の残丘状の山がそびえる。耕地化は比較的進み,葉タバコ栽培が盛んで,牛の放牧も行われる。
→関連項目浅川[町]阿武隈変成帯石川[町]茨城[県]いわき[市]大越[町]小野[町]川俣[町]北茨城[市]郡山[市]高萩[市]滝根[町]東和[町]常葉[町]中通り磐越東線福島[県]船引[町]古殿[町]三春[町]宮城[県]山元[町]

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改訂新版 世界大百科事典 「阿武隈高地」の意味・わかりやすい解説

阿武隈高地 (あぶくまこうち)

阿武隈山地ともいう。宮城県南部より福島県東部を経て,茨城県北部に至る南北約170km,東西最大幅50kmの高原状山地で,平面形は北上山地と同じような紡錘形をなす。高地の東側の海岸地方は浜通りと呼ばれ,いわき久之浜(ひさのはま)より北部はほぼ南北に走る断層線崖によって高地と明瞭に区別され,浜通り南部のいわき市の低地およびそれに続く段丘地域は,出入りのある山麓線によって境される。高地の西側の低地は中通りと呼ばれ,その北部は北流する阿武隈川沿岸の須賀川,郡山,本宮,福島の各盆地にゆるやかに移行し,その南部は南流する久慈川の谷で八溝山地と雁行する。地質は大部分が花コウ岩と古期および新期の花コウセン緑岩からなるが,一部に斑レイ岩も分布する。北東部や南部には緑色片岩類や黒色片岩類の変成岩類が分布し,東部の一部には古生代の地層もみられ,東縁には中生代の地層が細長く分布する。さらに北部には新第三紀の霊山(りようぜん)層がみられる。地形は隆起準平原の特徴を示し,なだらかな斜面と丸みを帯びた定高性山稜,広く浅い谷などからなる。最高峰は高地のほぼ中央部にある大滝根山(1192m)で,その南の矢大臣山(965m),北東の檜山(992m)などとともにこの高地では最も起伏の大きい分水嶺を形成し,それより北へ日山(天王山,1057m),花塚山(918m),霊山と分水嶺が続く。その東には畑川破砕帯をはさんで,天明山,国見山,八丈石山,東大森などおもに新期花コウセン緑岩からなる500~600m級の山地が並び,主分水嶺との間に草野,古道,川内などの山間小盆地をはさんでいる。夏井川の谷以南では800m内外の高度に平たん面をのせた鶴石山,二ッ石山,三株山が並び,南方ほど高原状の地形が明らかである。高地の東斜面は急傾斜で,宇多川,真野川,新田川,請戸川,木戸川,夏井川,鮫川などが,いずれも峡谷を刻んで東流し浜通り低地帯に出る。西斜面はこう配がゆるく,二本松市の旧岩代町付近を中心とした北西丘陵地域では小起伏の地形面が発達し山麓階を形成する。移ヶ岳,片曾根山,黒石山などは山頂付近が硬い斑レイ岩類でできているため,残丘として山麓階の上にそびえている。

 高地内の水系は発達が著しく,西部丘陵地域では密な樹枝状谷が複雑にからみ合っており,また田村市の旧滝根町の菅谷北方や川俣町西方,および石川町東方のように分水界がほとんど平たんで通谷をなしている所も多く見られる。したがって東部の北半部を除けば,山地地域の割には交通網は比較的密であり,夏井川に沿うJRの磐越東線,磐越自動車道をはじめ,北から国道113号(新潟~相馬),115号(相馬~猪苗代),114号(福島~浪江),288号(郡山~双葉),49号(新潟~いわき市平),289号(勿来(なこそ)~弥彦)の各線が高地内を横断し,349号線(水戸~柴田)が高地のやや西部を南北に縦断する。県道を含めたこれらの道路網の交点には,川俣町,田村市の旧船引町,三春町,小野新町(おのにいまち)(小野町),石川町などの小市街地が形成され,それぞれの地方の中心的機能を果たしている。小盆地や樹枝状谷の谷底には水田が地形に応じて分布し,周辺の緩傾斜地には畑も多く,この高地の北西部では養蚕,中央部では葉タバコ,南部ではコンニャクの特産がある。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「阿武隈高地」の意味・わかりやすい解説

阿武隈高地
あぶくまこうち

宮城県南部から福島県東部を経て茨城県北部まで続く高原状山地。阿武隈山地ともいう。南北約170キロメートル、東西最大50キロメートルの紡錘形輪郭をもつ。北東縁には比高約300メートルの双葉断層崖(がい)がほぼ南北に直線状に連なり、南東縁は複雑な地質構造を反映する屈曲の多い山麓(さんろく)線をもつ。西縁は阿武隈川に、南西縁は久慈川(くじがわ)にそれぞれ限られる。地質は主として古期花崗(かこう)岩、花崗閃緑(せんりょく)岩からなるが、北東部、南部に古生界の粘板岩、砂岩、石灰岩など、さらに常磐炭田(じょうばんたんでん)を中心に古第三系、北部の霊山(りょうぜん)付近には玄武岩質集塊岩などがそれぞれ分布する。最高峰大滝根山(おおたきねさん)(1192メートル)はほぼ中央にあって主分水界の一部をなし、日山(ひやま)(天王山、1058メートル)以下、花塚(はなづか)山(918メートル)、檜(ひ)山(993メートル)、鎌倉(かまくら)岳(967メートル)、移(うつし)ヶ岳(995メートル)、蓬田(よもぎだ)岳(952メートル)などがピラミッド状の残丘として、平均高度500メートルほどの高原上のあちこちに突出している。地形的には定高性山稜(さんりょう)や小起伏面の発達する隆起準平原として知られる。山地内には玉野、草野、飯樋(いいとい)、比曽(ひそ)、古道(ふるみち)、川内などの小盆地がある。なだらかな峠道を利用する国道49号、114号、115号などが山地を横断し、福島県の中通(なかどお)り地方と浜通り地方とを結んでいる。

[中村嘉男]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「阿武隈高地」の意味・わかりやすい解説

阿武隈高地
あぶくまこうち

宮城県南部から福島県東部を通り,茨城県北東部へ続く紡錘形の高原状山地。南北約 170km,東西幅最大 50kmに及ぶ。面積は福島県のほぼ3分の1を占める。東は岩沼-久之浜の断層崖で,浜通りの低地に接し,西は阿武隈川谷を境として奥羽山脈に対する。棚倉から南は久慈川によって八溝山地に接する。大部分は花崗岩類で西縁に変成岩,東部には古生層以後の水成層が付属し,隆起準平原的地形を示す。高い山頂の多くは残丘で,最高峰は大滝根山 (1192m) であるが,1000mをこえる山はほかに天王山 (1058m) のみ。山地の多くは山頂に平坦面,緩斜面をもち,昔は放牧場であった。老年期地形が広く展開し,浅い谷が上流まで続いて分水界はなだらかな峠をなす。夏井川に沿う JR磐越東線をはじめ,磐越自動車道,国道 49号線,114号線,115号線が高地を横断している。高地内には霊山 (りょうぜん) 県立自然公園阿武隈高原中部県立自然公園夏井川渓谷県立自然公園の3県立自然公園がある。

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世界大百科事典(旧版)内の阿武隈高地の言及

【高原】より

…高度が相対的に大きく起伏の小さい土地の広がりに対して用いられる地形的地域の名称。チベット高原,コロラド高原のように世界地理的な観点で用いられる場合と,志賀高原,那須高原など日本地理的に呼ばれる場合とでは,規模の点でも内容的にもかなり異なったものがある。 日本の中でも高原の名称の付されている地域には少なくとも2種類がある。一つは阿武隈高原,北上高原,美濃三河高原,飛驒高原,吉備高原,石見高原など,その名称が明治以来教科書に取り入れられ,第2次大戦後は国定の自然地域名称として地勢図上などで採用されているものである。…

【福島[県]】より

…【狐塚 裕子】
[3列の山地と低地]
 福島県は,ほぼ南北に並列する三つの山地と三つの低地から形成されており,全体としては山地・丘陵地が広い。山地は東から阿武隈高地,奥羽山脈と飯豊(いいで)山地・越後山脈であり,太平洋とそれらの山地の間に,東から浜通り低地帯(浜通り),中通り低地帯(中通り)および会津地方の会津盆地・田島盆地が南北に並列している。阿武隈高地は大部分が標高1000m以下の高原状地形であり,高地内には樹枝状谷が発達する。…

【プレートテクトニクス】より

… (2)の例としては,北アメリカ西部のコルディレラ山脈中に多数の外来地塊が存在することがわかり,古地磁気,古生物学的証拠からそれらがはるか遠方から到来した地塊であると指摘されている。東北日本東側の北上高地,阿武隈高地なども白亜紀以前に南方から移動してきた外来地塊であると考えられる。それらの起源としてパシフィカPacificaのような超大陸を考える人もある。…

※「阿武隈高地」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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